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研削加工高能率高品位実現のための砥石選定とプロセス制御

目次
はじめに:研削加工の現場課題と最新トレンド
日本の製造業において研削加工は、「最後の仕上げ」として品質や性能を決定づける重要な工程です。
しかし、いまだに“昭和時代”から抜け出せていないアナログな現場も多く、高能率と高品位の両立には悩みが尽きません。
そもそも研削加工は、他の機械加工や切削加工とは異なり「見た目ではわからないノウハウ」「現場ごとのクセ」が強く表れる分野でもあります。
そのため、砥石の選定やプロセス制御についての正しい知識と、現場実践に基づいた判断力・柔軟な対応力が強く求められます。
本記事では、現場目線の「本当に役立つ」研削加工の高能率・高品位実現のポイントを、最新技術や業界動向も交えて徹底解説していきます。
バイヤーを目指す方やサプライヤーの視点でバイヤーの悩みを知りたい方にも、必見の内容となっています。
研削加工における高能率・高品位とは何か
高能率の定義とその意義
研削加工の「高能率」とは、一定時間あたりに加工できるワーク(部品)数や、単位時間あたりに除去できる材料量を指します。
効率よく作業し、サイクルタイムを短縮することで、生産量の拡大とコストダウンに直結します。
高能率志向は、以下のような現場課題の解決にもつながります。
・製品納期短縮
・人手不足対策
・省エネ・省コスト化
・働き方改革への対応
高品位の定義と重要性
一方、研削加工の「高品位」とは仕上がりの面粗さ(Ra値)、寸法精度、形状精度、さらにはバリや熱損傷、クラック発生の抑制まで含みます。
研削は微細な誤差が大きな品質不良につながるため、製品の信頼性や安全性を担う重要工程です。
現代の製造業では、高能率と高品位の“同時達成”が求められています。
どちらか一方に偏ることなく、両者を両立する技術や考え方が必要です。
砥石選定の基本:種類・粒度・結合度・組織の最適化
砥石の基本構造と主要なパラメータ
砥石選定の第一歩は、その構造と用語を正しく理解することです。
代表的なパラメータは以下の4つです。
1.砥粒(素材:アルミナ、GC、CBN、ダイヤモンド等)
2.粒度(#数:粗い=小番号、細かい=大番号)
3.結合剤(ビトリファイド、レジノイド、メタルなど)
4.結合度(硬い=強く固めている、軟らかい=弱く固めている)
5.組織(砥粒・結合剤・気孔の割合)
これらの選択は、削るワークの材質・硬さ、加工目的(荒削りか仕上げか)、工作機械の性能などと密接に関わっています。
ワーク材質別の“鉄板”砥石選定法
鋼の研削にはA(アルミナ系)、鋳鉄にはGC(グリーンカーボランダム)、難削材や超硬にはCBN/ダイヤモンド砥石が適しています。
例えば、熱処理鋼(SKD・SKH等)の高硬度研削でCBN砥石が“定番”となっているのは、従来のビトリファイド砥石(WAやGC)では寿命・コスト・精度維持に難があったためです。
とはいえ、CBNやダイヤ砥石にも初期コスト・専用ドレッシングの手間など課題はあります。
現場では「従来型砥石+プロセス改善」で行ける領域も広いので、単純な最新トレンドへの“飛びつき”は避け、費用対効果を見極める必要があるのです。
粒度と品位・能率の密接な関係
粒度選定は想像以上に製品不良に直結します。
粗粒(#36~#80)は荒加工向き、高能率ですが、仕上がり面は粗くなります。
#120~#320になるほど表面は綺麗になりますが、加工速度は落ち砥石の目詰まり・焼け・割れリスクも上がります。
現場では、荒加工で#46~#80、仕上げで#120~#180、最終鏡面で#320以上(例:工具・金型など)という使い分けが一般的です。
結合度と組織が“目詰まり”防止の決め手
・硬い素材ほど、軟らかめの結合度(例:G~K)で切れを維持
・軟らかい素材には硬い結合度(例:N~P)で砥石寿命を重視
このルールは多くの現場で守られています。
しかし新素材・新工法(高送り、MQL等)では“従来の常識”が通じない場面もあります。
特に自動化ニーズやIoT連携が進む今、結合度や組織を見直すことで省メンテナンス化を推進する事例も増えています。
プロセス制御の勘所:再現性と安定性の両立
加工条件(切込み・送り・周速・砥石回転)の最適化
いくら最高の砥石を選んでも、プロセス制御がバラバラでは高品位・高能率を維持できません。
研削条件の代表は以下の4項目です。
1.切込み量(深さ/1パス)
2.送り速度(ワークの移動速度またはテーブル送り、インフィード等)
3.研削速度(砥石周速、単位:m/s)
4.冷却条件(ドライ・ウェット、クーラントの種類・噴射方式)
例えば「とにかくたくさん削りたいから送りを上げる」「手持ちの砥石だから条件はそのまま」という現場も少なくありません。
しかし、高能率化が進む現場では「送り≒能率=品位悪化→不良・再加工増加」という悪循環も頻発します。
プロセス条件は「ワーク材質・形状・砥石性能・機械剛性」にあわせた“現場独自のチューニング”が決め手です。
また、最新では加工中の振動・負荷をリアルタイムでモニタリングして条件を自動最適化する「スマートグラインディング」事例も台頭しつつあります。
ドレッシングと砥石メンテナンスの実践
高品位研削を維持する上で欠かせないのが「砥石のドレッシング」です。
目詰まりや摩耗があれば、たちまち“やけ”やバリ、表面波打ち不良が多発します。
昭和時代の現場では「感覚的な手ドレス」「とりあえず回して粒度を合わせる」ことが多かったですが、今や自動ドレッシングユニットやダイヤロールといった「安定・高再現性」を追求した技術が増えています。
バイヤーや購買担当としては、「砥石自体のコスト」だけでなく、
・定期ドレッシングの必要性
・自動化対応可否
・ドレス寿命・コスト
といった“トータルコスト・QCD”観点で判断することが肝要です。
アナログ現場が変わる!次世代研削のデジタル活用・自動化動向
なぜ“昭和”のまま脱却できないのか?
現場を歩くと「昔からこのやり方」「ベテラン職人の勘頼り」という声を多く聞きます。
しかし、グローバル競争が激化し、人手不足が深刻化する今こそ、「勘と経験×デジタル化」の両輪が必須となります。
その理由としては、
・研削加工は“ブラックボックス”部分が多く、データ化が遅れていた
・現場スタッフの高齢化によるノウハウ伝承の問題
・投資対効果への懐疑(「デジタルで本当に良くなるのか?」という不安)
などが挙げられます。
進化するプロセス監視とAI活用の最前線
最新の先進工場では、以下のような試みが始まっています。
・研削盤の主軸負荷、振動、温度、ワーク表面の計測データを収集しAI解析
・ドレスタイミングを自動判断、砥石消耗予知保全を実現
・チョコ停や品質異常を事前予測→ロス削減
これらは職人技のデジタル移植であり、今後“若手でも扱える”高度な研削現場が広がっていくでしょう。
自動化・デジタル時代でも必要な“現場目線”
とはいえ、いくら最先端のAIや自動化を導入しても、最後に“不良品を見抜く目”や“異変を気づける現場力”がなければ本当の高品位・高能率は維持できません。
ここで重要なのは「現場×デジタル×マネジメント」の三位一体となるアプローチです。
「現場の違和感」(音や臭いなどセンサーでは拾えない情報)、「紙の記録・報告」もまだまだ重要です。
いきなり“全自動化”ではなく、現場の声をDX設計に反映し、ジョブ型と属人性、両方の長所を活かすことが成功企業の共通点となっています。
サプライヤー・バイヤー間で押さえたいポイント
QCD(品質・コスト・納期)とVE提案のバランス
バイヤーや調達担当からすると、優れた砥石や先進的プロセス制御の提案はコストアップの種となるケースが多いです。
しかし、近年は「トータルコストでのVE(Value Engineering)提案」が主流です。
・砥石単価は上がるが、段取り数半減&サイクルタイム短縮で全体コスト減
・CBN化・自動ドレスで焼けや不良工数削減→歩留向上→スペースや人件費の最適化
など、目に見えにくい“現場改善効果”まで可視化し、サプライヤーとWIN-WINの関係を築くことが競争力強化のカギとなります。
“現場を知る”コミュニケーションがで業界を変える
昭和型の“単価交渉”や“丸投げ依存”から脱却し、工程シミュレーション・現場立会い・POCトライアルまで「一緒にやってみる」姿勢が重要です。
サプライヤーは現場技術者・工場長の悩みに寄り添い、単なる“もの”の供給でなく“課題解決型”の提案力を磨くことが武器になります。
またバイヤー側は、“実験→フィードバック→再提案”を繰り返す柔軟性が欠かせません。
まとめ:研削加工は「進化の余地大」現場が生み出す高付加価値
研削加工の高能率・高品位は、砥石の選定だけでなく、プロセス制御の最適化、現場視点での管理強化、そしてデジタル化・自動化の活用によって飛躍的に向上します。
製造業のアナログ現場こそ、従来の勘や経験を活かしながら、新たな技術や業界トレンドを“現場に最適化”して取り入れることで、持続的な競争力強化につなげることができます。
バイヤー・サプライヤーともに、「本当の現場課題」を共有するコミュニケーションを重ね、常に明日の改善・進化を目指しましょう。
現場から世界を変える一歩を、研削加工のアップデートから始めてみてはいかがでしょうか。
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