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消耗品のライフサイクルコストを考慮した購買判断の基準

目次
はじめに:消耗品の「価格」以外が重要な理由
製造業の調達現場にいると、「安く買うこと」がとても大きな正義に見えます。
特に、消耗品の調達では単価が明確で比較もしやすいため、つい「どこよりも安く仕入れた」という達成感に満たされがちです。
しかし本当に会社の利益や現場運用を考えるなら、単純な価格だけで判断していては大きな損失や機会ロスが発生します。
最新のデジタル工場であっても、または紙と電話、FAXがまだ活躍する昭和の面影がある工場であっても、現場を支える「消耗品」の購買判断基準を進化させる必要があります。
この記事では、「ライフサイクルコスト(LCC)」という考え方を中心に、熟練バイヤーやサプライヤーとして知っておきたい消耗品購買の新基準を、現場目線で徹底解説します。
ライフサイクルコスト(LCC)とは何か
ライフサイクルコストとは、「あるモノを導入してから廃棄するまでに掛かる総費用」のことです。
これは、購入単価や最初の導入コストだけでなく、運用中に加わるコストすべてを含みます。
ライフサイクルコストの構成要素
1. 購入コスト(イニシャルコスト)
2. 保管・管理コスト
3. 使用中コスト(消費速度、エネルギー消費、作業効率など)
4. 故障・不良品対応コスト
5. 廃棄・リサイクルコスト
例えば、安いペーパーウエスを大量購入したが、吸水率が悪くて1回の作業で何枚も使わざるを得なくなった、という経験があるでしょう。
これはイニシャルコスト(購入価格)が安くても、実際の運用コスト(使用効率)が悪くなる典型例です。
消耗品購買判断にライフサイクルコストを持ち込むメリット
1. 全体最適による利益確保
目の前の単価ではなく、トータルで一番利益が残る選択ができます。
特に原材料や工数の高騰が続く今、「安かろう悪かろう」消耗品によるトータルコスト上昇を防ぐことができます。
2. 現場の混乱リスク低減
安価な消耗品が原因で重大な品質トラブルや設備停止を起こすと、被害は単価の差の何倍・何十倍になります。
LCC視点なら「あるべき品質」を担保した判断が可能です。
3. 環境負荷低減にも貢献
耐久性や再利用性の高い製品を選べば、廃棄や環境影響も減り、SDGs対応が進みます。
消耗品のLCCを見極める判断基準
1. 使用実態を徹底的に可視化する
消耗品は「いつ、どこで、誰が、何のために、どのくらい使っているか」をあいまいにしがちです。
実際は大半の現場が「去年もこれくらい使った」など過去踏襲の惰性で買っています。
現場ごとの正味必要量や、ピーク時の大量消費の理由(工程上でのロスやムダ)などを洗い出しましょう。
2. 真の「省力化・省資源」につながるかどうか
例えば優れた潤滑油なら給油頻度や交換回数自体が減り、労力だけでなく廃液処理費・在庫スペースまで削減できる場合があります。
「高くても結果的に安い」商品こそバイヤーの見るべきポイントです。
3. 代替案や新技術の存在も検討
従来品より多少高価でも、安全性向上や作業性アップ、管理工数減、IoTタグ対応品など、将来的な省人化やスマートファクトリー化を見据えた武器になる商品が多数あります。
時代遅れの「従来品一択」から一歩踏み出せるか、ここに差が生まれます。
現場実例:LCC視点で選び直した成功・失敗
成功事例:耐久手袋への切り替え
ある自動車部品メーカーでは、従来の綿軍手よりも「耐摩耗性手袋」へ切り替えを実施。
単価は1.5倍に上昇したが、破れにくく交換頻度が下がり、年間で使用量が3割減少。
さらに作業員の手のケガも減り、安全面の付加価値も享受。
綿軍手時代の「コストだけ見ていた時には見えなかった要素」が、正しいLCC可視化で明らかになった好例です。
失敗事例:格安紙コップの導入
一方、別の食品工場で「コストダウン」の号令で導入された格安紙コップは、水や油に弱くすぐ破れてしまい、何度も取り換える羽目に。
従業員のストレス増加、飛び散った飲料の後処理手間、結局廃棄量も増え、初年度で元に戻す判断へ。
これは「購入単価だけで判断し、現場の実作業・運用まで目が届かなかった」典型例です。
アナログ業界の現場あるあると、LCC視点導入の壁
製造業、とくに中小企業や歴史ある大手工場の多くでは、調達購買の基本スタンスが「今まで通り」「帳簿のコスト」で固定されています。
現場のカイゼンは進んでも、「消耗品くらいは従来の感覚で」という温度差は、2020年代でも根強く残っています。
よくある抵抗・言い訳
1.「みんなこの商品を使っている」
2.「現場からクレームも出ていないので変えたくない」
3.「見積上、今のほうが安い」
4.「切替え検討のための時間がもったいない」
このような固定観念は、「部分最適」から「全体最適」、「短期成果」よりも「長期利益」へと切り換えていく起点となるのがLCC思考です。
バイヤー・サプライヤーは今こそ「対話」が重要
LCCを重視した購買-AI時代・スマート工場時代こそ必要になるのは、バイヤーとサプライヤー、そして現場作業者との三位一体の対話です。
バイヤーが持つべき視点
・ただ安いものではなく、現場の負担が減るか、トラブル低減につながるかを質問する
・サプライヤーに「なぜこの商品が高いのか」明確な根拠、実証データの提供を求める
・現場側へ「この消耗品に不満や無駄はないか」“見えない不満”を掘り起こす機会を設ける
サプライヤー側が意識すべきこと
・単純な安さだけで勝負するのではなく、「使い勝手」「廃棄物削減」「環境認証」など、LCC貢献ポイントを訴求する
・導入事例や具体的なコスト削減シミュレーションを見せて、「数字での説得力」を持つ
今後のトレンド:デジタル化とLCCの融合
ペーパーレス化、データベース化、IoTによる消耗品の使用量・在庫・発注タイミングの自動管理も、じわじわと進んでいます。
在庫過多の防止や、使いすぎ・取り置きの見える化、現場端末からの自動発注といった仕組みとLCC思考は強力なタッグとなります。
未来像
・自動分析された「本当に効率的な消耗品リスト」から、安全かつ最適コストで調達できる
・現場の声をデジタルに収集し、継続的な見直しループが回る
・サプライヤーと協力し、カスタマイズ品の開発や、リサイクル率向上なども積極化する
まとめ:消耗品のライフサイクルコストを制する者が、現場カイゼンを制する
価格だけで消耗品を選ぶ時代は終わりつつあります。
本当の「ムダ取り」、コスト低減、さらにはSDGs対応も含めた全体最適に向けて、ライフサイクルコストを主軸とした購買判断は今後ますます重要性を高めていくでしょう。
自社の競争力強化、現場の安全や快適性、ひいては持続的成長のため――
「消耗品のLCC」という視点を、明日の購買判断からぜひ取り入れてみてください。
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