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投稿日:2026年1月3日

セッティングが難しい曲げ加工機で使うスプリング部材の扱いづらさ

はじめに

製造業の現場では、素材の特性を最大限に生かすことで高品質な製品作りが行われています。
その中でも「曲げ加工機」を用いた製品づくりは、機械設備と作業者の高度なスキルが求められる工程のひとつです。
特に、スプリング用途の部材を曲げ加工機で取り扱う際は、そのばね特性や変形挙動の難しさがネックとなり、長年現場を悩ませ続けています。

今回は、セッティングが難しいと言われる曲げ加工機でのスプリング部材の扱いについて、現場視点の実例や製造工程での苦労、最新の業界動向、そして品質・コストを両立させるためのヒントまで、ラテラルシンキングで掘り下げてご紹介します。
バイヤー志望の方やサプライヤー側の現場担当者にも役立つ知見が詰まっています。

曲げ加工機とスプリング部材の基礎知識

曲げ加工機とは何か

曲げ加工機は、その名の通り金属やプラスチックの板材・線材などを所定の角度や形状に曲げる機械です。
プレスブレーキやワイヤーベンダー、ローラー式のベンディングマシンなど多様な機種が存在します。
近年はNC(数値制御)化が進んでいるものの、多品種少量生産が主流の日本では熟練作業者によるセッティング・微調整が依然重要な役割を果たしています。

スプリング部材の特徴

スプリング部材は、「元に戻ろうとする力=復元力(弾性)」を生かすパーツの総称です。
代表的なものにコイルスプリング(ばね鋼線)、リーフスプリング(板ばね)、トーションばねなどがあります。
どれも「強度」と「柔軟性」という相反する機能要求があり、寸法許容差や応力計算がシビアです。
さらに、材料自体が硬いため、曲げ加工中に「スプリングバック」という意図しない戻り現象が発生しやすくなっています。

セッティングの難しさが生まれる理由

スプリングバック現象の厄介さ

ばね材を曲げると、「意図した角度まで曲げても、手を離すと元に戻ろうとする現象=スプリングバック」が必ず起こります。
例えば90度に曲げても、力を抜くと85度程度まで戻ってしまうのです。
このため、あらかじめ「曲げすぎ」た状態(過曲げ)にセットアップする必要があります。

しかし、スプリングバック量は素材ロットごとに微妙に異なり、単純な経験則だけで正確に見積もるのは困難です。
また、ロット内での寸法・硬さ分布にバラツキがあれば、同じセッティングでも製品ごとに出来栄えが違ってしまいます。
この「制御しきれない不確実性」が、現場作業者を悩ませ続けています。

アナログ現場の限界

日本のものづくり現場は、昭和から続く職人技術に大きく支えられています。
例えば「勘と経験」でスプリングバック量を割り出す場面は珍しくありません。
ところが、近年では技能継承の難しさや人材不足、ベテラン退職などによって、「属人的なノウハウ頼み」だけでは効率的な工場運営ができなくなっています。

手順標準化や自動化に挑戦したいものの、スプリング素材の「生き物」のようなばらつきは、デジタル制御だけでは完全にカバーできず、現場レベルでの臨機応変な対応力が引き続き求められています。

不良率のリスク増加

セッティングが不十分だと、狙った寸法公差から外れる、角度ズレで組み付けできない、復元力不足で機能を果たせない、といった不良発生率が跳ね上がります。
特にサプライヤー側は「納期」「コスト」「品質」の三拍子を同時に求められており、バイヤーとの信頼関係を維持するうえでもこの問題は軽視できません。

現場で行われている主な対策とその限界

試作とフィードバックの繰り返し

多くの現場では、「本番を流す前に複数回の試作を行い、寸法・特性評価をしながら現物合わせでセッティング補正をする」という方法が定着しています。
試作品ごとに角度や荷重を測定し、NG品が多ければ微調整する。
このPDCAサイクルを何度も回したうえで、初めて量産設定値が見えてくるのです。

その反面、試作工程が短納期化・多品種化に伴って負担増となり、「納期ギリギリ」「作業者の工数圧迫」が大きな課題となっています。

数値シミュレーションの活用

CAE(コンピュータ支援工学)を用いて「曲げ加工時の変形挙動」を3Dモデルでシミュレートする手法が導入され始めています。
これにより、理論上のスプリングバック量や最適な加工条件を事前に絞り込むことが可能です。

しかしCAEで全てを予測することは困難であり、実際の生産現場では「経年劣化した設備」「ロットによる素材ムラ」「作業者のクセ」といった要素が絡むため、完全な自動化・DXにはまだ壁があります。

標準作業書とヒヤリハット共有

近年では作業標準化のため、工程ごとに標準作業書を作成し、注意点やトラブル事例も明文化する動きが一般的です。
ヒヤリハット情報や加工改善事例を共有することで、職人依存からの脱却を図っています。

しかし、「スプリングバックが大きすぎて規格外となる」「工具摩耗で設定変更が必要」など、生きた情報のアップデートが徹底されていない現場も多く、「教訓」がすぐに陳腐化してしまうというジレンマも存在します。

アナログ業界だからこそ生まれる“現場知恵”

道具の工夫と現場発アイデア

伝統的な町工場や大手メーカーの現場には、既製品の加工工具や治具だけでなく、「現場の用途に合わせて自作した治具」や「特殊な曲げゲージ」、さらには「温度管理を利用した応力緩和法」など、独自の工夫が数多く生まれています。

例えば、治具の一部に樹脂カバーをつけて当たりをやわらげる、微細なシムで角度を細かく調整するなど、現場目線ならではの現実的な発想が根付いています。
こうした創意工夫が積み重なり、最終的な品質と収益性の両立に寄与しています。

素材メーカーとの協業

良いスプリング部材を安定生産するには、素材メーカーとの密なコミュニケーションが不可欠です。
市販ばね材の中にも「板厚・硬度の安定度が高いロット」や「高品質な表面仕上げ材」が存在し、信頼できる仕入れ先を持つことがセッティングの手間を大幅削減するカギとなります。

時には「特注材の発注」や「歩留まり改善を目的とした素材仕様変更」など、現場発信でバイヤー・サプライヤーがタッグを組む事例も少なくありません。

最新トレンドと今後の展望

IoT・AIを活用した次世代セッティング支援

ここ数年で、現場の知見とデジタル技術が融合し始めています。
たとえば、加工機側にひずみセンサーや荷重センサー、角度検知デバイスを取り付け、曲げ加工時の負荷や素材応力をリアルタイム計測し、AIで最適条件をフィードバックしてくれるシステムが登場しています。

すでに大手自動車メーカーや家電メーカーでは、「モデルごとに蓄積したビッグデータ」をAIが解析し、各製品ごとの最適セッティング条件を自動提示することで熟練者の暗黙知に迫る精度を実現しつつあります。

新素材・新規工法の取り組み

一方で、「スプリングバックの起きにくい高強度銅合金」や「形状記憶合金」「レーザー加工を使った精密ベンディング」など、素材と工法の両面からセッティングの難しさを根本解決する動きも進行しています。

また、環境配慮型材料やサステナブル調達の観点からも、「加工しやすく歩留まりの良い新素材」へのシフトが進んでいるため、バイヤーや設計者も最新動向の吸収が欠かせません。

サプライヤー・バイヤー目線での“活かせる視点”

信頼関係づくりと“現場との対話”

購入先選定においては見積もり価格や納期だけでなく、「現場でどこまでセッティングノウハウを持っているか」「トラブルがあった際にどうリカバリーしてくれるか」という“対応力”も重要な評価軸です。

バイヤーは机上のデータだけではなく、ぜひ現場を訪問し、「実際の加工設備」「作業者の声」「実験的な取り組み」を見てください。
サプライヤーも自社の現場知見を積極的にアピールし、バイヤーと共にPDCAサイクルの回転速度と精度を高めていくべきです。

コスト・納期・品質のバランス追求

スプリング部材は単価が安い反面、納期待ちや不良発生によるロスが大きく、結果的に「トータルコスト高」になりがちな素材です。
発注段階から十分なリードタイムを確保し、「過度な短納期要求」「無理なコストダウン圧力」は現場の品質低下・不良率増大のリスクにつながることを、バイヤー側も理解しておくことが大切です。

まとめ:現場力とテクノロジーの“合わせ技”で未来を拓く

曲げ加工機でのスプリング部材のセッティングは、素材特性のばらつきやアナログ作業の難しさから、今なお「昭和的ものづくり」の色濃く残る分野です。
しかし、現場の知恵と工夫、そして最新のIoT・AI・新素材の活用によって、少しずつ「再現性ある高品質生産」が現実味を帯びてきました。

この地道な現場努力と新技術の融合こそが、日本製造業の競争力の源泉です。
バイヤー・サプライヤーが互いをリスペクトし、現場と共に汗をかく時代。
現場発の実践知を積極的に学び取り入れることで、これからの製造業はさらに高みを目指すことができるでしょう。

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