投稿日:2025年12月29日

コーターマシンで使うゴムロール部材の硬度変化問題

はじめに:製造現場で起きる「ゴムロール硬度変化」という現実

製造業の現場では、日々さまざまな問題が発生します。
その中でも、コーターマシンで使用されるゴムロールの「硬度変化」は、熟練オペレーターであっても頭を悩ませる現象の一つです。
この問題は、生産工程の安定運用だけでなく、製品の品質やライン全体の効率にも深く関わってきます。

コーターマシンに用いられるゴムロールは、長期使用や環境変化によってその物性が変化しやすいという特徴があります。
「ゴムロールの硬度が変わった気がする」、「いつの間にか塗布ムラが出る」—そんな声が管理職や現場担当者から聞こえてきたら、正確な原因追及と対策が急務です。

この記事では、20年以上にわたり現場でコーターマシンと向き合い、改善に携わってきた視点から、この「ゴムロール部材の硬度変化問題」を徹底的に掘り下げます。
時代遅れともされがちなアナログ現場で、なぜ硬度変化が軽視されがちなのか、その背景と共に、現場ですぐに使える実践的な対策まで丁寧に解説します。

ゴムロールとは? 用途と重要性を再確認

コーターマシンの心臓部――ゴムロールの役割

コーターマシンは、フィルムや紙、繊維など様々な基材に溶剤や接着剤、塗料などを均一に塗布するための設備です。
この“均一に送り出し、均一に塗る”という機能の根幹を支えるのが、まさにゴムロールです。

ゴムロールは、基材を搬送しながら塗布液を一定量、一定圧で転写する役割を担っています。
このロールの物性、特に「硬度」は、塗工精度や歩留まりに直結します。

なぜ硬度が重要なのか?

ゴムロールの硬度は、塗布量・転写性・耐摩耗性・耐久性などあらゆる性能に関わります。
硬度が高いほど圧力損失は小さくなりますが、基材との接触面が減り、塗布ムラやフィッシュアイ発生のリスクが高まります。
逆に硬度が低いと、圧着性は高まる反面、耐摩耗性や耐熱性が損なわれる場合もあります。

ゴムロールの硬度変化問題:よくある現象と影響

どんなときに硬度が変わるのか?

ゴムロールの硬度は、工場に搬入された時から劣化がスタートします。
外部要因として多いのは、次の3つです。

1. 経年変化・使用期間
ゴムは時間の経過とともに可塑剤が抜け、硬くなる傾向があります。

2. 温度・湿度・薬品
温度や湿度の変動、または有機溶剤や薬品がゴム組成と化学反応し、分子構造が変化することがあります。

3. 機械的な応力・圧縮永久歪み
連続運転や停止状態での長時間負荷、あるいは強い圧縮による変型で硬化・脆化が起きる場合もあります。

現場で起きるトラブル例

硬度上昇による主な不具合は、以下の通りです。

・塗工ムラが増加する
・転写性悪化で製品品質不良が増える
・摩耗粉(ゴムカス)が製品に混入する
・ロールマーキング(ロール痕)が出やすくなる
・最悪の場合、ロール表面が剥離・破損する

硬度が想定より変化しているのに気付かず、同じ条件で生産し続けると、思わぬ品質事故やクレームに繋がります。

なぜアナログな現場では「硬度変化」が放置されやすいのか?

昭和的マネジメントの残滓

長年工程を知っている現場リーダーほど、「現場のカン」と「肌感覚」に頼りがちです。
毎日手で触り、「まあ大丈夫だろう」、「慣れた目で分かる」と判断して硬度劣化を見過ごしてしまうことも多いです。

また、ロール自体は消耗品で、大きな異常がない限り「とりあえずそのまま使え」という空気が根強い現場もあります。
目立った割れや摩耗が出るまでは交換されません。

検査・記録体制が曖昧な場合も

ゴム硬度測定(ショア硬度計など)は、定期的な管理項目であるにも関わらず、「誰が・いつ・どのように測るのか」という作業手順や記録方法が曖昧な現場は少なくありません。
特に多品種少量生産や24時間稼働ラインでは、検査の優先順位が下がりがちです。

目先のコストと交換頻度のジレンマ

「まだ使えるから」という理由で硬度劣化したロールを延命し、結果的にトータルコストが増大する悪循環もよく見られます。
現場サイドと購買・経営層との認識が揃わず、最適タイミングでの交換判断がなされないことが、問題の根因です。

実践的な硬度変化対策:現場で「今」できる具体策

1. ゴムロールのライフサイクル管理を徹底する

現場レベルでまずできるのは、使い始めから廃棄までの「ロール管理台帳」を作成し、交換・点検・測定記録を時系列で残すことです。

特に以下の項目は必須です。

・製造ロット・納入日
・使用開始日/交換日
・累計稼働時間・ライン速度
・硬度測定日・測定値
・発生した不具合と対策

これにより、異常が起きた際の原因追及と、交換タイミングの見極めが格段にしやすくなります。

2. 硬度測定のルーチン化と可視化

硬度計(ショア型A・Dなど)は導入コストも安く、慣れれば誰でも測定が可能です。
週1回など定期的に測定し、「異常値に色付け」した集計シート、もしくはグラフ化することで、異変の早期発見に役立ちます。

測定値だけでなく、触感や外観観察とのセット運用が望ましいです。
異常値を管理職・設備担当と連携して即座に対応する体制を敷きましょう。

3. 保管環境の見直し

使わないロールは直射日光・高温多湿・粉塵(溶剤雰囲気)を避け、可能な限り20℃前後の冷暗所に保管してください。
たとえ未使用でも、劣悪な環境下で長期放置されると劣化スピードが一気に早まります。

ロールごとに「棚卸日」のリストアップと、「〇カ月で入れ替え/再加工」などのルール化を行うとよいでしょう。

4. サプライヤーとの連携強化で“使える情報”を得る

ゴムロールメーカーや商社の技術部門は、ゴム配合・成型技術、経年劣化のデータベースなど膨大な知見を持っています。
定期的にミーティングを行い、ロール仕様の最新トレンドや、より耐久性・耐薬品性に強い材質へのアップデート提案を積極的に取り入れましょう。

また、調達側は「本当に必要な性能(硬度、耐摩耗性、薬品耐性)」を具体的な数値で仕様書に記載し、品質保証部門を巻き込んだ情報共有が欠かせません。

バイヤー視点/サプライヤー視点それぞれから硬度変化問題を読む

バイヤーに求められること

・単純な価格比較だけでなく、ロールの物理的寿命、付加価値(サポート体制や技術情報)を含めたトータルコストで取引先評価を行う
・「安い・早い」だけを追求せず、現場の声=実際に使うオペレータや管理者の意見をフィードバックして購買基準へ反映する
・定期的に現場視察やサプライヤー訪問を行い、現物主義で問題・傾向を見極める

サプライヤーに求められること

・ユーザー先でどんな硬度変化トラブルが起きうるか、実運用を意識したサンプリング・情報提供
・定期的なユーザー向け勉強会やハンズオンによるロールメンテナンス指導を行う
・ロット差やスペックダウンを最小化し、「変動幅が小さい」製品の供給に努める
・アフターフォローの強化(急な硬度変化・瑕疵の相談体制構築)

こうした「バイヤー—サプライヤー—現場オペレーター」の三位一体の連携が、硬度変化対策の本質に迫ります。

これからの工場とゴムロール管理の未来像

IoT化・自動測定の可能性

現在、一部の先進現場ではロール表面を自動測定するIoTセンサーの導入が始まっています。
AI画像解析との組み合わせにより、24時間自動でゴム表面の硬度や傷、摩耗具合をモニタリングし、異常値が出たらリアルタイムでアラートを出すシステムが今後の主流となるでしょう。

人のカンとデータの融合へ

今後は、「昔ながらの経験則」と「新時代のデータ活用」の双方を掛け合わせて、硬度変化を先手先手で捉まえる“予防保全型”の現場運営が不可欠です。
メンテナンス履歴や硬度推移をデジタル化し、関係者全員が情報にアクセスできるプラットフォーム構築も重要になります。

まとめ:ゴムロール硬度変化問題は、工場の成熟度を示す“バロメーター”

ゴムロール硬度変化の問題は、一見地味で見落とされがちですが、実は工場全体の品質管理力や現場の“ものづくりマインド”を問う根本課題です。

アナログだからこそマンパワーに頼りきるのではなく、現場の知見、データ、サプライヤーの技術を組み合わせ、バイヤーも巻き込むことで初めて“解決への道筋”が見えてきます。

明日のものづくり現場を少しでもスマートに、そして強くすべく、今日からでもできる管理・連携の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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