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FPGAによる画像処理のハードウェア化とその活用事例

目次
FPGAによる画像処理のハードウェア化とは何か
近年、製造業の現場では多様な画像処理が求められています。従来、画像処理といえばソフトウェアによる対応が主流でした。しかし、高精度かつリアルタイム性を求められる工程が増えるに従い、ハードウェア化、すなわち「FPGA(Field Programmable Gate Array)」を活用した画像処理が注目されています。
FPGAとは、ユーザーが用途に合わせて自由自在に回路構成を書き換えることができるIC(集積回路)です。画像認識や検査工程にFPGAを組み込むことで、従来のソフトウェア処理では達成しえなかった高速かつ高精度な画像解析・判定が現実のものとなっています。
現場では「画像検査装置のレスポンスが遅れる」「AIによるディープラーニング処理の負荷が大きい」「機種変更による検査パラメータ変更が煩雑」といった悩みが根強く残っていました。こうした課題の解決策として、FPGAによるハードウェア化が今や大きな選択肢となってきているのです。
FPGA活用のメリットと製造現場でのニーズ
ハードウェア化による高速処理の実現
FPGAの最も大きな特徴は、並列処理が容易であり、プログラム実行型CPUとは異なり、複数画像データを同時処理できる点です。これにより、製造ライン上のカメラ複数台が捉える連続画像(ラインスキャンなど)をリアルタイムで処理し、不良品や異物混入を「検出→判定→信号出力」まで瞬時に完了できます。
ハイスループット(大量処理)とリアルタイム性が問われる食品・自動車部品・半導体分野などでは、その時間短縮と精度向上のメリットは明白です。また、FPGA自身が直接センサーやカメラからの信号を受け取って処理できるため、中間機器や無駄なネットワーク遅延も発生しません。
ソフトウェアに比べ柔軟で堅牢な回路設計
FPGAは設計段階で、画像解析に特化した構造を実装しやすいため、一般的なCPUやGPUでの処理と比べ、オーバーヘッドが少ない動作となります。また、フィールドでのパラメータ書き換えやアルゴリズム変更も容易で、現場作業者とのインターフェースも工夫次第ですぐに適応可能です。
さらに、FPGAは物理回路そのものを利用するため、万が一のソフトウェアクラッシュや誤動作が発生しにくく、信頼性の高さももたらします。この信頼性は、要求水準が高い医薬品や精密機器の生産現場で特に重宝されています。
コストパフォーマンスと資産の有効活用
一見するとFPGA導入はコストが高く見られがちですが、ソフトウェアによる組み込みシステムのカスタマイズやCPU/GPUによる電力消費、冷却装置にかかるランニングコストと比較すれば、長期的にはメリットが大きい場合が多くなっています。
また、ハードウェア化による省力化・自動化を進めることで、いまだアナログな判断や人手検査が主流だった現場でも、DX推進の第一歩として「脱昭和」の効果を実感できるはずです。
現場目線から見たFPGAによる画像処理の活用事例
1. 部品外観検査工程
自動車・家電業界では、表面のキズや穴、異物混入判定のため、カメラ画像利用の自動検査装置が幅広く導入されています。しかし、人の目による検査やソフトウェアによる画像認識では、「見逃し」「誤判定」が生産ライン全体の歩留まりを悪化させる大きな要因になります。
FPGAを組み込み、不良パターンを回路としてハード設計することで、カメラからの映像データがそのまま瞬時に良否判定されます。しかも、エンジニアが検査基準やパラメータを現場の実情に合わせて簡単に変更できるため、多品種小ロット対応や工程変更にも柔軟に対応できるのが特長です。
2. 半導体ウェハ傷検査の高速化
半導体製造の現場では、ミクロン単位での微細な傷検出が不可欠です。1ライン数百・数千枚レベルのウェハを「全数・リアルタイム検査」するには、通常のソフト処理では到底追いつきません。
そこで、センサーから取得した高解像度画像を直接FPGAで並列処理する手法が活用されています。従来よりも検査タクト時間を1/3以上短縮し、歩留まり向上と不良流出防止という2つの大きな目的を同時に実現しています。
3. 食品異物混入・形状判別工程
食品工場では、人命や健康に直結する「異物混入」対策が最重要課題です。ラインカメラから連続的に流れる画像をFPGA処理し、金属やプラスチック片、虫などを瞬時に判別して自動で除去するシステムが普及し始めています。
また、果実や野菜のサイズ・色調・傷有無の判定にもFPGAの高速処理が効果を発揮。ヒューマンエラーを排除し、一定品質を担保できるため、食品企業が求めるHACCP対応にも直結しています。
昭和のアナログ業界を変えるFPGAの役割
業界の現実:アナログ文化の残存と課題
製造現場には、いまだに「職人技に頼る」「暗黙知が主流」「紙帳票による記録」が多く残っています。また、「新しい技術はトラブルが怖い」「情報漏洩が不安」「老朽設備との接続が難しい」といった心理的ハードルが、新技術導入のボトルネックになっていました。
しかし、FPGAは現場のアナログ機器と直結しやすく、シーケンサや産業用カメラとの親和性も高いため、少しずつアナログ文脈の現場にも浸透しています。ハードウェア技術者や現場リーダーがFPGAの構成・設定を学ぶことで、熟練者の感覚値や検査パターンを「デジタル資産」として現場に残す環境も整いつつあります。
バイヤー・サプライヤー双方に必要なラテラルシンキング
FPGAによる画像処理システムを導入・提案する際には、バイヤー(発注者)とサプライヤー(供給者)が技術仕様だけでなく、現場の実情・運用面・コスト構造・保守性など、多面的な視点で対話する必要があります。
バイヤー側は「全自動化を目指すのが最適か」「部分導入で効果検証をすべきか」など、自社課題を深く洞察する思考が不可欠です。一方、サプライヤー側は「現場従業員の習熟度や抵抗感へのケア」「レガシー機器との橋渡し」など、現場の肌感覚に寄り添うソリューションが求められます。
このような「ラテラル(水平)思考」をもって、お互いが新技術と現場・人材・コストの折衷点を模索する時代となっています。
FPGAによる画像処理導入のポイント
製造現場にFPGAを活用した画像処理装置やシステムを導入する際、以下のポイントを押さえるとよいでしょう。
- 現場課題の明確化(現状の検査工程・問題点・期待効果)
- FPGA設計・開発ベンダーとの早期連携(要件定義・PoCでの検証)
- 既存ラインや設備とのインターフェース整合性(シーケンサ・PLCとの通信、旧設備との併用)
- ユーザー目線の運用サポート・保守体制の構築
- 現場での技術継承・人材教育への配慮
なお、初めての導入では小規模ラインや自動化しやすい工程から段階的に着手し、「デジタルとアナログのバランス」を見誤らないのが成功のコツです。
今後の展望とまとめ
今後、FPGAの画像処理はさらなる高速化・高集積化が進み、AIとのシナジーによる「進化型インテリジェント検査」も登場するでしょう。サプライチェーン全体の品質・トレーサビリティ強化や、遠隔モニタリングへの拡張にも期待が高まっています。
昭和スタイルの「人海戦術」とデジタル技術のハイブリッド運用を上手に取り入れることで、現場の競争力向上・人材不足対策・省人化推進が実現できます。FPGAによる画像処理ハードウェアの導入は、まさにその大きな一歩となるでしょう。
今、現場で感じている課題や疑問があれば、ぜひFPGA活用をひとつの選択肢として検討に加えてみてください。より良い未来の製造現場を、一緒に描き上げていきましょう。
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