- お役立ち記事
- 陶磁器時計盤の製版で金線印刷を安定化するための乳剤耐熱設計と焼成補正
陶磁器時計盤の製版で金線印刷を安定化するための乳剤耐熱設計と焼成補正

目次
はじめに:製造業における陶磁器時計盤の魅力と課題
製造業の現場では、高精度かつ美しい意匠を実現するための技術が常に求められています。
特に時計盤に用いられる陶磁器は、単なる部品という枠を超え、ブランド価値や製品の質を大きく左右する重要なパーツです。
なかでも、金線印刷は高級時計の大きな魅力であり、その安定化は多くの現場担当者やバイヤーが直面する重要課題です。
この記事では、昭和時代から現代まで続くアナログな知見と、最新の技術を融合させた乳剤設計・焼成補正ノウハウを、現場目線で具体的に解説します。
経験豊富なモノづくり従事者ならではの現実的な視点から、安定した金線品質実現への道のりをご紹介します。
陶磁器時計盤とは――美しさと機能性が求められる理由
陶磁器時計盤は、磁器素地に転写印刷や金線加飾を施した高付加価値部品です。
ブランドやデザインによって多様な意匠が求められ、「精密な線幅」「曲面や凹凸に対する均一な転写」「端部の美しい仕上げ」など、高度な製版・印刷技術が必須です。
一方で、金線は加飾工程の“華”ですが、焼成のたびに線幅が変動したり、切れやかすれ、滲みなどの不具合が発生しがちです。
この要因の一つが、伝統的な乳剤設計の限界にあります。
金線印刷が難しい理由――現場で直面してきたリアル
時計盤の形状と焼成収縮
陶磁器時計盤は非規則な曲面や微細な凹凸を持つことが多く、金線印刷時には無視できない応力や収縮が発生します。
焼成工程でわずかな素地の伸縮が起きると、線幅のムラやズレ、切れなどの不安定要素につながります。
耐熱性と乳剤物性のトレードオフ
金線転写で使われる乳剤(フォトエマルジョン)は、焼成条件(600~900℃)でもしっかり印刷パターンを保持できる耐熱性と、シャープなエッジを実現する解像性が求められます。
一方、高温下では乳剤が焼け焦げたり、熱膨張による剥離や硬化によるパターン変形が起きやすいのです。
昭和型アナログ現場の“カン・コツ”問題
長年の勘やノウハウに頼る部分も多く、「あの担当者がやらないとうまくできない」「マニュアルにしきれない」のが実状です。
合理化や標準化への壁となり、後進への知識継承が難しくなっています。
乳剤耐熱設計のポイント――経験と理論の融合
耐熱乳剤の設計思想
最も重要なのは、「高温環境でも転写パターンを正確に維持する物性バランス」です。
乳剤(光重合樹脂・感光剤・バインダーなど)は、単に硬ければ良いだけでなく、焼成による体積変化・流動・揮発をできる限り抑えることが要諦です。
実際の設計ノウハウ
・熱硬化型またはシリカ系微粒子の分散で耐熱性強化
・エポキシやアクリルなど複合樹脂で、柔軟性と剛性のバランス調整
・赤外熱源や非接触加熱環境を想定した分子設計
・感光性の最適化によるシャープエッジ実現(紫外線波長や露光エネルギーに対する設計)
メーカーと協業してサンプルテストを繰り返すことで、実機条件に合わせたカスタム乳剤開発が成功のカギとなります。
現場での評価・検証方法
・模擬焼成(乾燥炉やトンネル炉での高温追試)
・クロスカットやテープテストによる密着性チェック
・波形・線幅の光学評価
・数十~数百ロットの量産連続焼成での再現性確認
これらを繰り返し、現場ごとの課題に応じたパラメータを積み上げ、知見を体系化しておくことが重要です。
焼成補正のノウハウ――現場で実装される“地味な工夫”
収縮率・変形の事前予測
素地や釉薬の種類ごとに焼成時の収縮挙動をマッピングし、データベース化することが有効です。
設計段階で意図的に“線幅を太目”に描画し、焼成後、狙い通りの寸法になるよう補正します。
現場では「金線は10%細くなる」といった暗黙知を数値化・標準化することが求められます。
熱分布の均一化・治具活用
焼成炉内の熱ムラ(ゾーン温度差)を可視化し、治具(セッティングプレートや支持ピン)の材質・形状に工夫を凝らします。
– アルミナやセラミックの熱伝導率最適化
– 定期的な炉内温度マッピングの実施
昭和流の“置き場所の工夫”を理論的に棚卸しすることで、誰でも高品質を再現できる土壌が生まれます。
現場で陥りがちな失敗例と、その防止策
失敗例1:乳剤設計の“カタログスペック頼み”
現場では、カタログ値通りの乳剤を盲信すると、実際の焼成環境(炉の排気、熱風の回り方、実稼働温度など)で想定外のトラブルになることが多々あります。
現場では“小ロットテスト”“実環境検証”を必ず実施しましょう。
失敗例2:収縮補正や治具設計の属人化
「このラインでは皆同じやり方だから」と、補正値や治具位置決めが“勘と経験”に頼りきりだと、作業者異動や担当者交代時に品質トラブルが頻発します。
補正値や治具ノウハウは必ず数値化・写真や動画でマニュアル化し、標準手順へ落とし込みましょう。
失敗例3:設計・現場・サプライヤーの情報断絶
現場担当が金線不良の原因を設計部に伝えきれず、サプライヤーも現物検証せずに“書類対応”で終わらせてしまうケースも。
工場の部門や取引先を横断したリアルな情報共有(例:現場立ち合い、品質ミーティング)が不可欠です。
昭和からの脱却・デジタル活用で現場力UPを
今後は「勘とコツ&IT・IoTデータ」を融合した現場改革が突破口になります。
工場の炉温、治具位置、素地ロット収縮率などをIoTタグや画像AIでリアルタイム記録し、ベテランの知識を数値と動画で蓄積する。
深層学習データで乳剤設計と焼成補正値の最適マッチングを自動提案する――
こうした攻めの現場改革が、品質・歩留り向上の最大ポイントです。
サプライヤー、バイヤー、現場担当者それぞれの視点で
サプライヤー:バイヤーや現場担当者の“なぜ安定生産できないのか”という疑問に対し、現場テストやデータ提出で信頼を得ることが大切です。
設計開発だけでなく、実際の製造条件を理解し、パートナーシップを強く意識しましょう。
バイヤー:製版・金線印刷の導入検討時は、“スペック表”だけに頼らず現場担当者やサプライヤーと直接コミュニケーションし、現物テストや過去不良例の情報も積極的に集めましょう。
現場担当者:導入や条件変更時に“いつも通り”を繰り返すのではなく、新規材料や新工法の評価を進んで実践し、現場発の知見を社内外と共有する姿勢が信頼・地位向上につながります。
まとめ:地道な積み上げこそ、金線品質の安定をもたらす
陶磁器時計盤の金線印刷の安定化には、“乳剤耐熱設計”と“焼成補正”の両輪が不可欠です。
・耐熱・耐変形性を持つ乳剤の現場テストと継続改善
・炉内温度・治具・収縮補正のデータ化と標準化
・部門・取引先を超えた情報共有と属人化の打破
これらの取り組みは一朝一夕には成し得ません。
ですが、地道な知見の蓄積が、やがて競争力の源泉となり、全ての関係者に大きな成果をもたらします。
昭和の知恵と最新技術の「いいとこどり」、現場目線と論理性の融合こそ、これからの製造現場の新たな“地平線”だと言えるでしょう。
製造業で働くすべての方々の、現場改革・品質向上のヒントとなれば幸いです。
ノウハウ集ダウンロード
製造業の課題解決に役立つ、充実した資料集を今すぐダウンロード!
実用的なガイドや、製造業に特化した最新のノウハウを豊富にご用意しています。
あなたのビジネスを次のステージへ引き上げるための情報がここにあります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが重要だと分かっていても、
「何から手を付けるべきか分からない」「現場で止まってしまう」
そんな声を多く伺います。
貴社の調達・受発注・原価構造を整理し、
どこに改善余地があるのか、どこから着手すべきかを
一緒に整理するご相談を承っています。
まずは現状のお悩みをお聞かせください。