投稿日:2025年11月30日

OEMアウターの量産前検品で発見すべき隠れた不良とは

はじめに:OEMアウター量産前検品の重要性

製造業、とりわけアパレル業界でOEM(Original Equipment Manufacturer)によるアウター製品を開発・生産する皆さまにとって、量産前検品は非常に重要なプロセスです。

表面的な品質チェックに留まらず、後工程や最終顧客からの信頼獲得には「隠れた不良」の発見こそが真価を問われるポイントと言えるでしょう。

品質管理現場では、表面に現れない不良が納品後のクレームやリコールにつながるリスクもあります。

本記事では、OEMアウターの量産前検品で発見すべき「隠れた不良」とは何か、その具体例や現場での発見のヒント、業界のアナログな慣習に縛られない新たな視点まで、現場経験豊富な立場からわかりやすく解説します。

OEMアウターの”隠れた不良”とは?

目に見えない品質リスクを理解する

一般的な検品では、縫製ミス、生地の汚れや傷、パーツの欠損といった「一目で分かる不良」が中心です。

しかし製造業の現場では、これら以外にも出荷前には見逃しがちな「隠れた不良」が多く潜んでいます。

これらは一見しただけでは分からず、後日ユーザーの使用環境や洗濯、経年劣化、輸送の過程などで問題化することが多いのが特徴です。

たとえば、下記のような事例があります。

  • 特定部位の縫い合わせ強度不足で、着用数回後に裂けが発生
  • 生地のロット混在による微妙な風合いや色味違いが、納品後に光の下で発覚
  • 目立たない内ポケットの断線・縫製忘れ
  • 副素材(ファスナー、ボタン等)の規格違いや機能面の不具合
  • 他工場から流用された設計仕様のまま進行し、ブランド要求とズレが生じる
  • 洗濯試験未実施で色落ち・縮みが発生

このような隠れた不良は、製品としての寿命やブランド価値、お客様の満足度に大きなダメージを及ぼしかねません。

表からは見えない「未管理ゾーン」に潜む

OEM開発・量産工程に関しては、工程設計や納期、コストの視点ばかりに目が行きがちです。

しかし「他の誰も気付いていないけれど、現場ならではの違和感」「ルール化されていないが、実は重要な手順や確認ポイント」があります。

たとえば、次のようなケースが挙げられます。

  • パーツ手配に間に合わず、同等品で妥協した部材が最終品に混在
  • 作業指示書にない暗黙の現場ルールによる手抜き
  • 長年の職人勘で何となく”大丈夫”として進めていた工程で実は不良が混入
  • 昭和スタイルの「目視中心」「検品は最後の砦」的な発想が根強く残っている

これらの問題は、厳密なチェック体制やトレーサビリティ構築を怠った場合、容易に顕在化します。

隠れた不良を発見するための検品視点

1. 多面的アプローチの導入

隠れた不良の発見には、いわゆる「現場の三現主義」=現場・現物・現実の徹底が効果的です。

実物製品を実際に着用してみたり、工場ライン上で「通常仕様」と「今回のもの」の違和感を徹底的に洗い出すことが不可欠です。

さらに、次のようなアプローチも有効です。

  • 各工程責任者・作業者の「気付きメモ」を活用し、微細な不安要素も吸い上げる
  • 製造現場・設計・品質管理の各部門横断で異なる視点からチェックする
  • 顧客目線で「どんな使われ方をするか」「どんなクレームが過去にあったか」を棚卸する

2. 標準書・仕様書を見直すラテラルシンキング

長年使い回されてきた設計仕様書や標準化手順を、ただ「守る」のではなく、敢えてラテラルシンキング(水平思考)的な疑問を投げかけます。

  • 本当にこの仕様で顧客満足につながるか?
  • 表面のチェックだけで十分か?
  • 最近のクレーム傾向、納品後の使われ方に隠れた落とし穴はないか?

必要に応じて過去トラブルケースを再精査し、闇に埋もれた「小さな違和感」を検品チェックリストに積極的に反映させます。

3. サプライヤー・バイヤー双方の心理戦に備える

OEM生産では、サプライヤー(作り手)、バイヤー(買い手)、双方の立場の「事情」や「隠したいこと」にも目配りが必要です。

たとえば、ラッシュ納期下での内職パーツ調達、流用生地の混入、仕様外れ寸法の混在などが見逃されがちです。

こうした「盲点」には、あえて第三者検品やサードパーティ監査を導入すること、各仕入先との強い信頼関係構築、透明性の確保が有効となります。

現場で本当にあった隠れた不良:事例紹介

事例1:洗濯に耐えられない裏地の選定ミス

あるOEMアウターで、表地と裏地の相性チェックが不十分なまま量産に移行したところ、エンドユーザーの家庭洗濯1回目で裏地が毛羽立ち・裂けを生じた事例があります。

表面チェックでは全く問題がなかったため、量産前検品でもスルーされました。
しかし、ユーザー使用環境(家庭の洗濯機・乾燥処理等)を想定した「耐久テスト」を事前に実施していれば未然に防げました。

事例2:ボタンの取り付けピッチ間違いでの規格外品混入

多品種少量生産ラインにおいて、似た型番同士のパターンが入れ替わり、微妙にボタン間隔が違うものがそのまま組付け・出荷されてしまったことがありました。

目視検品だけでは気づかず、納品後「着心地が悪い」とエンドユーザーからクレームに発展。

このようなケースでは、「品番別」のチェック工程や現物サンプルのマスタと現品突合せが決定的に重要となります。

事例3:副素材の環境負荷規制違反によるリコール

近年、環境負荷低減やREACH規制など副素材への法規対応が厳しくなっています。
一部のOEM工場で「前年と同一品のつもり」で手配した副素材が、規制強化により基準外となり、製品全体のリコールに至った例があります。

標準書・手配リストの見直しや、バイヤーとサプライヤー間での最新法規情報共有、防火・耐洗濯性能の「ロット毎検証」など、一歩先を見据えた体制構築が求められます。

量産前検品で隠れた不良を防ぐポイント

1. 静的検品×動的検証を組み合わせる

通常の出来上がり外観チェックだけでなく、着用テスト、簡易洗濯試験、耐摩耗・耐光など動的な「模擬使用条件テスト」も並行して実施しましょう。

「問題ないように見える」の裏側に隠れた不良は、大抵この動的テストで表面化します。

2. 仕入れ先・社内双方での「気付く文化」醸成

サプライヤーラインでも「疑問や違和感があれば、必ずフィードバックできる空気づくり」が必要です。

昭和的な「現場の勘頼み」「上意下達」文化のままでは、微妙な不良や逸脱が声に出されません。

社内外でのコミュニケーション強化、そのための週報やヒヤリハット報告の義務化も有効です。

3. IoTやデジタル化による工程監視

アナログな現場でも、近年は「画像解析による縫製位置ズレ検出」「オンラインでのトレーサビリティ記録」など、デジタル技術の活用が進みつつあります。

先進的な現場では、こうしたツールを導入し、ヒューマンエラーを減らす努力が求められています。

OEMメーカー・バイヤーが目指すべきこれからの検品体制

大量生産・リピート生産が前提だった時代から、小ロット多品種、短納期、規制強化、顧客目線の品質が最優先される時代へと、業界環境は大きく変わっています。

今、求められる検品体制は「不良を出さない仕組み」と「気付きの共有文化」、そして「デジタル要素の組み合わせ」です。

昭和の現場力も活かしつつ、最新技術や仕組みを柔軟に取り込むこと。
自工場・サプライヤー・バイヤーが一体となり、「量産前検品」を単なる”儀式”から本質的なリスク発掘の最前線と捉え直すことが求められます。

まとめ:OEMアウター量産前検品で新たな品質地平線を拓く

OEMアウターの量産前検品は、「目に見える不良」だけでなく、「目に見えない隠れた不良」をいかに早期発見し、顧客満足度向上とブランド価値維持に繋げるか、が最大の課題となっています。

現場目線とユーザー目線、そしてラテラルな発想で自社だけでなくサプライチェーン全体のクオリティアップに取り組めば、きっと”次の時代の現場力”を確立することができるはずです。

バイヤーを目指す方、サプライヤーの立場の方も、本記事で得たヒントをぜひ現場改善の一歩としてご活用いただければ幸いです。

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