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高機能高密度フレキシブル基板の設計と応用

目次
はじめに:高機能高密度フレキシブル基板とは何か
近年、エレクトロニクス業界に欠かせない存在となっている「高機能高密度フレキシブル基板(FPC)」は、その名の通り、高度な機能性と微細な回路パターンを併せ持つフレキシブルな電子回路基板です。
スマートフォンやウェアラブル機器、医療用デバイス、自動車の電子部品まで、幅広い産業分野でFPCの重要性が急増しています。
本記事では、昭和から続くアナログな体質を持つ製造業界でも、現場主導で高機能FPCの設計や応用がどのように進んでいるのか、また現場で実際に生きる知識や考え方を基軸に解説していきます。
高密度実装がもたらすフレキシブル基板の進化
回路の微細化と多層化が開く新たな市場
FPCは従来、可とう性(曲がる、折り曲げられる)が最大の特徴でしたが、近年のスマートデバイスの小型化・高機能化要求を受け、回路パターンの微細化や多層構造化による「高密度実装」が急速に進行しています。
これにより、限られたスペース内に大量の回路やIC、センサを集積できるようになり、従来の硬質基板やリジッドフレックス基板では到達しえなかった設計自由度が得られるようになっています。
これらは単なる設計技術だけでなく、調達購買の目線からは「材料調達の難易度」「コスト管理」「サプライヤーの適切な選定」といった現場的課題も伴います。
現場が直面する課題とその具体策
高密度FPCの設計・生産には、精密な回路形成技術、高品質な絶縁材料、信頼性の高い積層・実装プロセスが不可欠です。
しかし、日本の多くの中小・中堅工場では、今なお昭和型の「職人頼み」「経験則主義」「文書ではなく暗黙知での伝承」が根強く残っています。
FPCで頻繁に問題となるのは、設計−製造−品質保証の部門間連携のミスや、アナログな管理体制による歩留まり問題です。
私が現場で特に感じるのは、工程間の「情報の壁」と「属人化」の克服こそが、高密度FPC時代の工場にとって最大の課題であることです。
そのためには、
– 設計DR(デザインレビュー)の標準化
– 製造現場とサプライヤー間でのスペック共有ツールの活用
– 品質トラブルの数値データベース化
といった業務オートメーションの積極的導入が不可欠です。
調達・購買部門が変えるFPC業界のダイナミズム
調達購買が果たすべき戦略的役割
高機能FPCの調達は、従来の「安く買う」だけの購買とはまったく次元が異なります。
FPC業界は多品種少量生産の傾向が強く、要求スペックや納期も流動的です。
調達購買部門が担うべき現場主導の役割は、
– 後工程品質の担保
– 量産化段階でのサプライヤーとの共創(設計段階からの巻き込み)
– 長期的な納入安定性の確保(サプライチェーン・リスクの管理)
などです。
ここで大切なのは「スペックシート頼み」からの脱却です。
設計、試作、量産立上げの各段階で、実際に部品・材料が“現場でどう使われるか”を深く理解し、サプライヤーと情報共有・協業する態度が求められます。
“バイヤーの心得”をサプライヤーは知るべき
FPCメーカー側、すなわちサプライヤーの立場から言えば、バイヤーが何を重視しているかを知ることが、量産獲得へのカギです。
– 量産での品質安定性(=クレーム頻発の恐れがないか)
– 設計変更や歩留まり悪化時の素早い対策提案能力
– 試作から量産までのリードタイム短縮
– コストパフォーマンス
– エンドユーザーの“使い勝手”意識
単に安価・高機能をうたうだけでは購買部門の信頼は勝ち取れません。
昭和型の「口約束」「人間関係による融通」に頼る体質から脱し、顧客視点での数値データ、過去実績、品質改善活動など「見える化」に取り組むことがポイントです。
高機能高密度フレキシブル基板の主な応用分野と進化トレンド
スマートデバイスでの応用:柔らかさ+高集積が開く新体験
スマートフォン、スマートウォッチ、ARグラスなど、今や私たちの生活に密着したモバイル機器は、驚くほどの小型化・薄型化を実現しています。
これを支えているのが、高密度FPCです。
例えば、ヒンジ部をまたぐフレキシブル配線、曲面ディスプレイ、タッチセンサやバッテリーモジュールとの一体化など、従来のリジッド基板では困難だった形状自由度と高機能集積が可能になっています。
医療・バイオデバイス分野:微細化・生体適合性の進化
高密度FPCは、ウェアラブル医療機器や体内埋込型センサーにも応用範囲が広がっています。
厚さ0.1mm以下の超薄型構造、肌に直接貼り付けられる柔軟性、さらには金属アレルギーへの配慮など生体適合性を意識した材料開発も活発です。
また、医療分野では「単発・小ロット・高付加価値」への対応速度が重要なバリューとなってきています。
自動車・産業機器:高耐熱・高信頼性への対応
次世代自動車や産業用ロボット、EVバッテリーマネジメントシステムなど、高熱・高振動環境での配線部品の信頼性要求が増しています。
こうしたニーズに応えるべく、耐熱性延伸ポリイミドフィルムや、EMIシールド用の導電性粘着剤などの高機能材料が開発されています。
生産現場では「PPAP(生産部品承認プロセス)」など自動車業界ならではの厳しい標準にどう適合させるかが肝となり、現場主導の品質保証体制づくりが差別化ポイントとなります。
製造現場・現場管理者に求められる新しい視点
現場力強化とSDGsへの対応
現場は今、単に「作る場」から「価値を創造する場」へと急速に変わりつつあります。
高機能FPCの分野でも、量産ラインの自動化・工程監視のIoT化・歩留まり向上AIなどのデジタルツール導入が必須となりつつあります。
また、FPC分野では環境規制やSDGs対応(有害物質フリーへの切り替え、省資源化、リサイクル対応のしやすさなど)がグローバル競争での生き残り条件です。
特に“経営層”だけでなく、現場リーダーや購買担当者が「なぜそれが必要なのか」「従来やり方と何が違うのか」を現場目線で理解し、本質的な改善活動を推進することが成否を分けます。
ラテラルシンキングで設計から組立までものづくりを再発明
アナログ体質の現場では「前例主義」「同調圧力」に埋もれがちです。
しかし、高機能FPCで勝つ現場はラテラルシンキング――すなわち常識を横断的に疑い、工程間・業界間の壁を越えて革新する発想が必要です。
例えば組立工程から逆算して初期設計を見直したり、品質トラブルの情報を実装現場とリアルタイム共有したり。
サプライヤー選定でも「こんな困りごとがある」と現場発の“生の声”を設計やパートナー企業に正直に共有することが、むしろ競争力となります。
まとめ:製造業の未来を担う高機能高密度FPCの“実務解”
高機能高密度フレキシブル基板の設計・応用の最前線は、単なる技術の進化だけでなく、現場の知恵・工夫・対話こそが真の競争力となる時代へと大きく舵を切っています。
マニュアルの暗記頼み、職人芸の押しつけといった昭和型から抜け出し、調達・設計・製造・品質保証・サプライヤーがONEチームとなって、現場の課題を見える化し、ラテラルに解決するアプローチこそが必須です。
現場の声を形に、現場に根ざした“新しいやり方”を育て、製造業の明日をともに切り拓いていきましょう。
FPCの進化は、製造現場の進化そのものです。
この記事が、バイヤーを目指す方、現場で日々悩む製造業従事者、そしてサプライヤーとして新たな価値創出を目指す方にとって、実践的なヒントとなれば幸いです。
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