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ラインの稼働率が一見高くても実はムダだらけの実態

目次
はじめに:稼働率だけでは測れないラインの「本当の実力」
製造業に携わる多くの方が「うちの工場は稼働率95%を維持しているから大丈夫だ」と自信を持っておられるかもしれません。
しかし、その稼働率、本当に価値を生み出している稼働なのでしょうか。
同じ稼働率でも、実はその裏にさまざまなムダや非効率が隠れているケースは少なくありません。
特に、昭和時代から引き継がれてきたアナログ文化が根強く残る中堅・中小の工場では、「高い稼働率=生産性が高い」という誤解が今なお温存されています。
本記事では、20年以上製造業の現場で多様な役割を担ってきた筆者が、自身の経験や現場取材をもとに、本当の意味で価値を生み出すための稼働率の考え方や、ムダ削減の視点を現場目線で徹底解説していきます。
バイヤーやサプライヤー、そして改善志向をもった現場の皆様にとって、日々の生産活動を見直すヒントになれば幸いです。
稼働率とは何か?表面だけをなぞる危うさ
多くの現場で使われている稼働率の定義
多くの工場において、ラインの稼働率とは「稼働時間 ÷ 設備のカレンダー時間(シフト時間)」で算出される指標です。
設備がストップしていなければ「稼働している」とみなされ、数字が高ければ高いほど「生産性が良い」と評価されがちです。
稼働率を上げることの本当の意味
もともと稼働率は、人員や設備の遊休時間を減らし、ラインの生産能力を最大化するための指標でした。
しかし、単に止まらずに動き続けていることが「価値ある生産」に直結していない場合も多々あります。
たとえば、ムダな空運転や不良品の大量生産、過剰在庫を発生させている場合など、「表面上の稼働率だけを追い求める」ことは危険につながりかねません。
「稼働率が高いのに生産現場が忙しい、本当にムダがないのか?」
なぜ「忙しいのに儲からない」現場が発生するのか
「設備はフル稼働、でも利益率は思ったほど上がらない」という悩みは多くの製造現場で聞かれます。
この背景にあるのは、「ムダな作業も稼働率にカウントされている」ことです。
たとえば段取り替えや小ロット生産のためのセットアップ時間、製造過程での手待ちや仕掛品の滞留、検査や移動など、本来は付加価値を生まない作業も一括して「稼働」とされやすい状況があります。
さらに顧客の需要変動に即応できず、実際には在庫ばかりが積み上がっている現場も少なくありません。
現場で見落としがちな4大ムダパターン
- 段取り替えの無駄な時間:小ロット生産や頻繁な品種切替に伴う長時間セットアップ。
- 仕掛品や中間在庫の滞留:ライン間のバランスが悪く、滞留や手待ちが発生。
- 運搬や手戻り作業:工程間のレイアウト悪化による不必要な移動や、工程間不整合から起こる手戻り。
- 空運転や無意味な稼働:納期調整や指示ミスで需要のない製品を生産し続ける。
このようなムダが「稼働率」というオブラートに包まれてしまうことに、現場の成長余地が隠れているのです。
昭和的「とにかく動かせ」の落とし穴:ムダを見抜く本質的視点
なぜアナログ現場では稼働率を重視しがちなのか
昭和・平成初期の大量生産モデルの成功体験がある現場や経営層ほど、「ラインは止めるな」「停止=悪」という意識が強く残っています。
紙ベースの日報や帳簿管理、目視点検に頼った属人的な運用も、現場のリアルな情報の見える化を阻む要因です。
たとえば、1日24時間設備を動かし続けることが「勝利の方程式」のように刷り込まれている現場では、設備の「質の高い稼働」より「止めることへの恐怖」や「上司へのアピール」が優先されがちです。
アナログ現場でもできる“ムダの炙り出し”とは
最新ITや自動化ツールを使わなくとも、現場でできる「真の稼働率可視化」のアプローチは存在します。
具体的には、
- 作業の区分け(付加価値作業/付加価値のない作業)を毎日現場でチェックする
- 帳票や日報で「稼働時間」と「本当の生産時間」を意識的に分けて記録する
- ストップウォッチや簡易な動画計測を使って、「段取り替え」「手待ち」「移動」にかかる時間を実測する
こうした原点回帰の定点観測により、「ラインのどこに無駄な稼働が潜んでいるか」を可視化し、昭和的な“数字のマジック”から事実ベースで現場を見直すことが可能になるのです。
現場が変わる!実践例とムダ削減のコツ
生産現場で実際に取り組んだ改善事例
長年、製造業の工場長や生産技術職として現場改善に取り組んできた筆者が、実際に成果を上げた具体的な事例をいくつかご紹介します。
・段取り時間の「白黒」化
「段取り替え=不可避のムダ」ではありません。
現場メンバー全員で段取り手順を見える化し、必要な道具や治具の置き場所を最適化。
細かな事前準備で段取り時間そのものを半減することで、付加価値時間を増やすことができました。
・仕掛品の見える化によるボトルネック解消
各工程ごとの仕掛品数量を毎朝数値で可視化。
滞留が多いポイントを発見し、同期生産やセル生産方式へ段階的に移行。
結果的に全体のリードタイムを20%短縮、在庫削減とともにキャッシュフローも改善しました。
・設備稼働と人員配置の適正化
「なんとなく3人必要だ」という思い込みに対し、実作業計測とIE(Industrial Engineering)の手法で作業量を見直し。
自動化すべき部分と人手が必要な部分の仕分けを徹底したことで、同じ稼働率でも生産高と利益率が大幅に向上しました。
“数字を疑う”文化の醸成
「稼働率が高いから問題なし」ではなく、「その稼働が本当にお客様や会社の利益につながっているのか?」を常に問い直すカルチャー作りも大切です。
現場のメンバー一人一人が、ムダや違和感に気づきやすい仕組み—たとえば、日々の簡単な朝礼やQC活動、チームでの現場パトロール—の継続が、現場改善の土壌になるのです。
バイヤーとサプライヤー、双方の「稼働率の見方」が変われば関係も変わる
バイヤーが知っておくべき本当の稼働率
調達担当者やバイヤーの皆さんは、サプライヤーの「稼働率が高いです!」という言葉を鵜呑みにするのではなく、「高い稼働率が付加価値生産につながっているのか?」という観点を持つことが重要です。
納期遵守や品質安定の裏には、上記のような現場のムダが隠れている可能性もあるため、数値の裏側にある現場オペレーションや改善活動をヒアリングする姿勢が、より良いパートナーシップにつながります。
サプライヤーが伝えるべき「見せる稼働率」とは
一方、サプライヤー側は単に「稼働率が高い」ことをアピールするだけでは差別化は難しい時代です。
むしろ「どれだけ本当の付加価値生産に集中し、ムダを減らし、お客様のニーズ適合度を高めているか」を、具体的な改善ストーリーや数値で伝えることが信頼構築のカギとなります。
現場主導での課題解決事例や数字の裏付けを積極的に開示し、バイヤーと同じ目線で価値向上に取り組む姿勢が、長期的な関係構築を可能にするのです。
まとめ:稼働率の裏にある“真のカイゼン”を目指して
「稼働率が高いから現場にムダはない」と思い込んでしまう危うさ。
これこそが、これからの製造業が一歩前進するために越えるべき壁です。
本当に価値ある生産活動を実現するためには、稼働率の数字に一喜一憂するのではなく、
- 現場ごとに隠れたムダ(段取り替え・仕掛品・手待ち・非効率配置)を炙り出す
- アナログな現場でも工夫次第で可視化できる方法を持つ
- バイヤー・サプライヤー間で「数字の裏にある現場の物語/努力」を意識的に共有する
といった実践的視点が欠かせません。
製造業の未来は、「カイゼン」に終わりがないと同時に、現場に潜む“見えざるムダ”を発見し続けることにあります。
今日から一歩、現場の稼働率の裏に隠れた「本当の価値」を見つめなおし、
新たな生産性向上の地平線をともに開拓していきましょう。
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