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マイコン処理により実現する超音波センサ高精度化複数超音波センサ同時測距

目次
はじめに:超音波センサは今も進化している
製造業の現場で、物体の検出や距離測定に欠かせない存在となっている超音波センサ。
自動化、省人化、品質向上といったキーワードが並ぶ現代工場において、その性能の高さが求められる場面は増加の一途をたどっています。
特に「複数の超音波センサを同時に使って高精度な測距を実現したい」というニーズは、物流・自動車・食品・医療など多様な業界で顕著になっています。
そんな期待に応える技術の核となるのが、マイコンによる制御・信号処理です。
この記事では、実際の現場経験を交えながら、なぜいま超音波センサの高精度化が求められるのか、マイコン処理がどのように貢献しているのか、複数センサ同時測距の仕組みと現状、そして今後の課題まで分かりやすく解説します。
超音波センサとは何か、そして高精度化の理由
超音波センサは、一般的に発信器から超音波を発射し、対象物に当たり跳ね返ってくるエコー(反射波)を受信することで「音の往復時間」を測定します。
この時間を基に、物体までの距離を算出しているのです。
長年にわたり、比較的安価で堅牢、非接触で動作するという理由からコンベア制御、ピッキング、障害物検知など幅広い場面で使われてきました。
しかし、近年の製造業はさらなる自動化や協働ロボットの導入で、センサに「より高精度」「同時多点」という新たな要求を突きつけています。
- 薄いワークや微小物体も誤差なく検出したい
- 高速ライン上でズレや誤検出なく測距したい
- 複数ワーク、複数ルートを同時に正確に監視したい
昭和時代の単純な「ON・OFF」制御から、令和の今では「連続的な距離測定」「複雑なワークの認識」「AIやクラウドとの連携」など、超音波センサへの要求は格段に高度化しています。
マイコン処理の導入がもたらした変化
従来の超音波センサは、アナログ的な回路構成でシンプルな信号処理しかできませんでした。
タイマーや比較器を組み合わせ、後はPLCやリレーなど上位制御に委ねる方式です。
しかし、これでは高精度な時間計測や複数センサの干渉防止、複雑なフィルタリングなど現代的な課題には対応が困難でした。
そこで登場したのが「組み込みマイコン」です。
近年は極小・高性能なマイクロコントローラが安価に入手できるため、1個1個の超音波センサにマイコンを内蔵し、高度なデジタル信号処理をリアルタイムで行うことが可能となりました。
どこが変わった?主な恩恵
- サンプリングレートの最適化とノイズ除去アルゴリズムによる「誤検出の低減」
- 複数センサ間のクロストーク自動判別、順番制御や共存制御の最適化
- AIエッジ処理による複雑な反射波形の識別(非定形ワークや斜面・曲面にも対応)
- IoTと連携したデータ送信や自己診断機能
実際の現場では「測距精度がミリ単位」「動的な閾値調整で変化に強い」「異常時の自己復旧やロギング」など、確実かつ賢いセンサシステムとして、現場の信頼を勝ち取っています。
複数超音波センサ同時測距とは?技術背景と実例
工場現場では、ベルトコンベアの両端から複数のワークを同時モニタリングしたい、ストッカーの多段測距を一斉に行いたいなど、「多点同時測定」が至上命題です。
ここで大きな障害となるのが「センサ間の干渉(クロストーク)」です。
クロストークの問題と従来の対応
同じタイミングで超音波を発射すると、他のセンサからの反射エコーと混信し、誤った距離を算出してしまうリスクがあります。
従来は「時分割」方式、つまり各センサが順番に送受信する手法を取り入れてきました。
ですがセンサ数が増えると周期も遅延も増え、高速ライン制御には対応できません。
マイコン処理での同時測距の仕組み
マイコン内蔵化により、以下のイノベーションが実現しました。
- 位相変調・周波数分割(チャープ信号など)といった「コーディング技術」で各センサの信号を分離
- 各センサが独自のID(波形特性や拍動パターン)を持って送受信・認識
- リアルタイムDSP処理により複雑な伝播パターンや反射波形を個別に解読
これらを組み合わせることで、たとえば10台単位のセンサが同時かつ独立して高精度な距離測定を行えるようになりました。
しかも、環境ノイズや温度変化、ワーク形状のばらつきにも強いです。
実際の現場での応用例
- 自動仕分け装置:複数レーンのワーク同時認識による選択搬送
- 協働ロボットの障害物検出:ヒューマン・マシン・ワークの距離可視化
- 棚・パレットの在庫自動管理:多段・多点での高精度位置情報取得
いずれも「段取り時間ゼロ」「誤搬送ゼロ」「高いトレーサビリティ」といった、20年前では夢物語だったレベルの現場力を実現しています。
昭和からのアナログ業界でなぜ定着が遅れたのか
一方、現場の実感として「なかなか先進技術が現場に根付かない」「アナログ感覚が抜けていない工場が多い」というのも事実です。
その要因は主に以下の2点です。
- 担当者が「従来のリレー・PLC依存」の発想から抜け出せない
- 高性能マイコンセンサは初期投資や既存設備との親和性で二の足を踏みがち
現場では、故障や不調のとき「ハードをゴツン、と叩けば治る」「見かけの配線トラブルを探せば解決できる」といった昭和的な保守流儀が生きています。
加えて、マイコン制御やデジタル信号処理はブラックボックス化しやすく、現場担当者が中身を把握しにくいという心理的ハードルもあります。
これからの製造業に必要なラテラルシンキングとは
この壁を超えるためには「思考の水平化(ラテラルシンキング)」が重要です。
現場と開発、調達とサプライヤーをつなぐ役割
工場の自動化やデジタル化は、単に最新の機器を揃えて終わりではありません。
以下のスキル・視点が重要です。
- 現場の「困りごと(暗黙知)」をいかに見える化し、エンジニアに正確に伝えるか
- マイコン付きの高機能センサ=魔法の道具ではなく、データやアルゴリズムの本質を理解
- ベンダーやSIへの一方的な丸投げでなく、調達側・ユーザー側からも「想定シナリオ」「イレギュラー発生時の運用」を掘り下げる
昭和的な現場力と、令和的な技術を「融合理解」し、最適な現場運用に仕立て上げる―。
これを推し進めるカギは、狭い意味での専門知識ではなく、現場・バイヤー・サプライヤーをまたぐ水平的なコミュニケーション力です。
まとめ:製造業における超音波センサ高精度化の本当の価値
マイコンの進化によって実現した超音波センサの高精度化、複数センサ同時測距は、単なる「高性能センサ」の導入以上の意義を持っています。
それは、人・モノ・現場・IT、そしてバイヤーとサプライヤーすべてをつなぎ、現場改善や自動化の“地平線”を切り拓く力です。
今後ますます、製造現場では
「思い込みの打破」
「部門間・業界間の壁越え」
「現場主導のイノベーション実装」
が重要になります。
昭和の現場力を土台に、最新テクノロジーを現場仕様へと“翻訳”していく。
私自身も、その一翼を担える「現場目線の伝道師」であり続けたいと考えています。
最後に、製造業のバイヤー・現場エンジニア、サプライヤーの皆さまへ。
複数超音波センサ同時測距をはじめ、現場を変える新技術は、ただカタログスペックを並べたり、知識を競うだけでは活かしきれません。
「ほんとうに便利で、明日から使えるか?」という視点を大切に、柔軟な発想と水平的な対話にチャレンジください。
本記事が、超音波センサ技術の未来設計と、皆さんの現場改善のヒントになれば幸いです。
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