投稿日:2025年3月1日

純チタン粉末射出成形(MIM)で医療器具用試作品を高精度に

純チタン粉末射出成形(MIM)による医療器具用試作品とは

純チタン粉末射出成形(MIM)は、金属射出成形技術の一種であり、その優れた成形性と材料特性から、近年注目を浴びている製造技術です。
特に、医療器具の分野では、軽量でありながら非常に強度が高く、生体適合性にも優れた純チタンが選ばれることが多く、MIM技術を応用することで、高精度で複雑な形状の試作品を製造することが可能となります。

医療器具におけるチタンの利点

医療器具においてチタンが選ばれる理由の一つに、その高い生体適合性があります。
チタンは人体に対してアレルギー反応を引き起こしにくい特性があり、インプラントや人工関節などの長期にわたって体内に留まる用途に適しています。

また、チタンは非常に軽量でありながら強度が高く、耐食性にも優れているため、長期間にわたって安全に使用することができます。
これらの特性により、チタンは医療器具の素材として非常に有用であることから、射出成形技術を使った試作品の製造においても、その利点を最大限に活用できるのです。

純チタン粉末射出成形技術の概要

純チタンMIM技術は、チタンの粉末をバインダーと混合し、それを射出成形機で形状成形した後、脱脂および焼結工程を経て最終製品を得るプロセスです。

射出成形のプロセス

MIM技術の最初のステップは、チタン粉末とバインダーを混合してペレット状にすることです。
これにより、射出成形機で取り扱いやすい状態になります。
次に、射出成形機により、設計された金型にこれらのペレットを射出します。
この工程では、非常に高精度で複雑な形状を成形することが可能です。

脱脂および焼結工程

射出された製品はまだバインダーを含んでいます。
このバインダーを除去するための工程が脱脂です。
脱脂を経た製品は脆く、”グリーンパーツ”と呼ばれます。
その後、高温で焼結することにより、チタン粉末を密に結合させ、製品としての強度を持たせます。

純チタンMIM技術のメリット

チタンMIM技術にはいくつかの重要なメリットがあります。

高精度での形状自由度

MIM技術は、非常に複雑な形状でも高い寸法精度で成形が可能です。
特に医療器具の場合、微細な構造や複雑なデザインが必要とされることがあり、MIM技術はそれを実現するための理想的な手段となります。

コスト効率の向上

射出成形技術は大量生産に向いているため、チタンでの試作品製造においても、他の製造方法に比べてコストを大幅に削減できます。
また、材料の歩留まりが良く、原料の無駄を最小限に抑えることができる点もコストメリットの一つです。

短納期での試作品製造

従来の機械加工による試作では、製品の複雑さに応じて納期が長くなることがしばしばあります。
しかし、MIM技術を活用することで、短期間で試作品を製造することが可能となります。
そのため、新製品の開発サイクルを短縮し、市場投入までの時間を劇的に減少させることができます。

医療器具用試作品製造の事例

実際の医療器具開発において、MIM技術がどのように役立っているかを具体的な事例を通じて紹介します。

精密なインプラント試作品

整形外科用インプラントの試作品例を考えてみましょう。
これらのインプラントは、人体に直接接触し、比較的長期間にわたって使用されるため、非常に高い精度と信頼性が求められます。
MIM技術はこれを実現し、デザインの自由度を提供します。

手術用器具のプロトタイピング

また、手術用の器具においても、小型で高精度な部品が求められることが多いです。
MIM技術はこういったニーズに応えるため、迅速かつ柔軟にプロトタイプを製造する手段として有効です。

純チタンMIM技術の今後の展望

チタンMIM技術は医療業界に留まらず、多くの産業分野で応用が期待されています。

航空宇宙産業への応用

軽量で高強度なチタンMIMは、航空宇宙産業でも重要な役割を果たす可能性があります。
特に、複雑な形状を有する部品の製造において、その技術的な可能性は大きいです。

自動車産業での展開

自動車産業においても、軽量化と高強度を両立するために、チタンMIMは魅力的な選択肢として注目されています。
特にEV(電気自動車)における軽量化が課題となる中で、そのニーズに応えることが期待されます。

まとめ

純チタン粉末射出成形(MIM)技術は、その高精度で複雑な形状を成形可能な点から、医療器具の試作品製造において非常に効果的な手段です。
高生体適合性や強度、耐食性などのチタンの特性を活かした製品の開発が可能であり、今後も医療分野だけでなく、さまざまな産業での応用が期待されています。
技術の進化とともに、ますますその価値が高まるであろうこの技術を活用することで、新たな製品開発に挑戦していくことが重要です。

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