投稿日:2025年7月14日

異種金属金属樹脂接合プロセス強度信頼性高い接合体アプローチ

はじめに:異種材料接合がもたらす製造現場の革新

異種材料、特に金属と金属、金属と樹脂の接合技術は、近年のものづくりの現場において大きな注目を集めています。

自動車の軽量化や省エネ化、小型化が求められる電機・電子部品分野、さらには医療機器の高機能化など、人々の生活を支えるあらゆる産業で「異種材料接合」はまさに現場を変えるキーテクノロジーとなっています。

しかし、こうした新しい技術導入の現場では強度や信頼性の確保、従来手法との比較、安全・環境配慮やコスト、組織や担当者の心理的な壁など、アナログな昭和的流儀が根強く残る製造現場ならではの課題も多く見受けられます。

本記事では、20年以上の製造現場経験をもとに、現場の実態やバイヤー・サプライヤーそれぞれの視点も交えつつ、「強度・信頼性の高い異種材料接合」への新しいアプローチとその現場での活用ノウハウを解説します。

なぜ今、異種金属・金属樹脂接合なのか?

部品構成の変化が進む製造業

製造業はかつて「鋼で作れば間違いない」「全部金属が安心」という時代が長く続きました。

しかし現在、燃費向上や環境負荷低減、多機能化・小型化といった新たな要求が高まり、アルミやマグネシウムの軽量金属、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、エンプラ(エンジニアリングプラスチック)など、金属や樹脂を自在に使い分ける製品設計が主流となっています。

これに伴い「異なる材料の最適な組み合わせ=異種材料接合」の重要性が劇的に高まってきたのです。

従来工法の限界とチャレンジ

異種材料を従来のまま結合するには、ボルトやリベット、はんだや溶接などの方法が基本でした。

しかし、これら従来技術は「電食・異方性の変形」、「熱膨張係数差による剥離」、「外観や軽量性」など、異種材料接合ならではの課題を多く抱えています。

そのため、製造現場では「これまで通りの工法」に固執した結果、せっかくの設計上の最適化が無駄になってしまうこともしばしば起こります。

コスト・納期・信頼性を両立する新たな接合技術の必要性

サプライヤーとしては従来工法の強度・信頼性を担保しつつ、現場工数やコストダウン、納期短縮を求められます。

バイヤー側も、「接合強度・品質への懸念」や「新規工法の立ち上げリスク」をクリアしつつ、最適購買を進める必要が出てきます。

この両者のバランスを踏まえ、競争力ある製品を生み出すには、強度・信頼性が高く合理的な異種材料接合法へのシフトが急務となっているのです。

主な異種材料接合技術と現場評価

機械的締結:汎用性と加工性の高さ

ボルト・ナットやリベットは定番の接合方法です。

機械加工や脱着が容易で、現場での手戻り対応も可能。
特に量産品や大型部品の調整には長年用いられています。

注意点は「応力集中」や「材料間のガルバニック腐食」、「締結部の緩みや隙間」など、性能・品質への影響を見逃しやすいことです。

軽量化や耐環境特性が求められる用途では、今後さらなる工夫や他工法との組み合わせが重要になっています。

融合法(溶接・ろう付け):強度は高いが汎用性に課題

比較的高い接合強度が得られる一方で、材料ごとの溶接適性や熱の影響で生じる変形・ひずみがネックとなる場合も多くあります。

特に異種金属・金属樹脂のように「溶融点」「熱膨張係数」「化学的適合性」が大きく異なるペアでは、加工条件の最適化および耐久試験の徹底が不可欠です。

鉄・アルミ、アルミ・銅といった組み合わせ用に、摩擦攪拌接合(FSW)、爆発接合、超音波接合などの新しい工法が台頭しています。

接着剤による異種材料接合:可能性と課題

現場で近年非常に評価が高まっているのが「接着剤」を用いた異種材料接合です。

面全体で接合できるため、応力分散性が高く、デザインフリーダムも向上します。

一方で、「接着強度の長期信頼性」「塗布条件によるバラツキ」「剥離リスク」など、新しい管理ノウハウや評価技術を内製化する必要があります。

現場では特に「生産ラインでの接着剤吐出機器のメンテナンス」「材質ごとの前処理適正」など、ユーザー側とサプライヤー側が知見を持ち寄ることが不可欠です。

強度・信頼性向上のための新しい接合アプローチ

設計段階からのジョイント最適化

異種材料接合は「接合技術」だけではなく、「設計~生産~品質保証」までの一貫フローの最適化がカギです。

例えば設計段階では、
・荷重が集中しにくい接合形状
・金属と樹脂の界面ギャップを減らすための段付きや溝付け
・素材ごとの寸法・許容差管理
といった工夫が重要となります。

サプライヤー提案により「設計段階から接合仕様を一体化」することで、従来では難しかった信頼性向上とコスト削減を同時に実現できます。

界面処理技術のアップデート

異種材料の密着力や信頼性は、「界面処理」技術で大きく左右されます。

たとえば金属表面の酸化膜除去やブラスト処理、樹脂表面のプラズマ処理・化学処理、プライマーの適正塗布管理などが代表例です。

現場では、JISなどの一般標準だけでなく、「自社で検証した界面処理条件」を積極的に導入し、SDCAサイクルによる継続的な工程最適化が進められています。

工程監視とトレーサビリティの徹底

接合部の強度・信頼性を最大化するためには「一品一様」をいかにコントロールするかが肝です。

たとえば接着剤充填量や硬化温度、ラインスピードのバラツキ監視、画像検査や非破壊検査の導入など、現場自動化と組み合わせた工程監視技術が進化しています。

またトレーサビリティ(個体管理)情報の蓄積により、不具合時の再発防止や抜本的な改善も容易となり、現場の安心感にも繋がっています。

昭和的アナログ業界における導入の壁と現実的突破法

技術への抵抗と「現場本位」の目線

多くの現場で「今まで通りで十分」「新技術はリスクが高い」という心理的抵抗が強く存在します。

特に品質保証サイドやライン作業者からは「壊れないこと」「再現性が高いこと」が何より重要視されるため、新しい工法や材料導入には慎重になりがちです。

ここで効果的なのが、
・サンプル試作による社内外比較テスト
・小規模ラインでのパイロット導入
・異常時のリカバリープロセス(リワーク、補修フロー)の明確化
です。

技術検証のプロセスを透明化することで、現場・設計・品質・購買のベクトル合わせを進めやすくなります。

アナログ業界におけるデジタル化推進のポイント

現代のスマートファクトリー化の大きな流れの中で、接合プロセスにおいても「工程データの見える化」「AIを活用した不具合兆候の予測」など、デジタル化の進展が注目されています。

実際の現場では古い加工機や人的作業が残りがちなため、いきなり全自動化は困難です。

・温度・湿度センサーによるデータ自動収集
・モバイル端末での現場情報登録
・不具合出荷時の画像情報管理
など、「一歩ずつ現実的なデジタル導入」から攻めることが、現場浸透の近道といえます。

バイヤー・サプライヤーが押さえるべきポイント

バイヤー側:リスク評価型の購買戦略

・初期費用と量産コストのバランス
・品質保証体制(不具合時の是正プロセス)
・サプライヤーの技術対応力や将来性

これらを「現場データ」「テスト結果」のエビデンスとともに冷静な評価軸で比較検討しましょう。

新技術採用時は進捗管理や複数サプライヤーによる並行評価が基本です。

サプライヤー側:提案型営業の重要性

・自社技術の用途適合性と独自強みの明確化
・導入事例や実績のストーリーテリング
・ユーザー課題に寄りそう共同実証・評価提案

工場視察や技術打合せの場で、バイヤーの本音(過去不具合の経験や現場での困りごと)を傾聴し、「具体的な数値」「検証プロセス」まで踏み込んだ提案が現場信頼を勝ち取ります。

まとめ:異種材料接合は未来ものづくりの柱

異種金属・金属樹脂の接合技術は、もはや技術オタクのものではありません。

設計・現場・品質・購買・サプライヤーが一体となり、リスクを見極めて工程や体制を最適化する。
その過程が、昭和の職人気質が息づく現場でも本質的な価値を発揮します。

業界全体で「伝統とイノベーション」を共存させ、強度・信頼性の高い接合プロセスを実装することが、これからの製造業の生命線となるでしょう。

新しい異種材料接合への一歩を、ぜひあなたの現場でも踏み出してみてください。

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