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クリーン化と異物静電気対策で構築する高信頼生産現場

目次
はじめに:現場目線で考えるクリーン化と異物・静電気対策の重要性
日本の製造業は、長らく高い品質と信頼性で世界にその名を轟かせてきました。
しかし、現場を見渡せば、未だ昭和から続くアナログな取り組みや、効率化の余地が残されたままの作業工程が多く存在します。
特に、クリーン化(Cleanliness)と異物や静電気対策は、多くの現場で「まだ大丈夫」と後回しにされがちなテーマです。
しかし、品質不良の主要因の一つである異物混入や静電気による損傷は、近年ますます厳しくコスト・ブランドリスクとして製造現場に突きつけられるようになっています。
この記事では、私自身が現場で20年以上培った経験をもとに、バイヤー・サプライヤー、現場担当すべての立場で「高信頼な生産現場を構築するための実践的な手法」について、現実解を示していきます。
グローバル競争で求められる高信頼・高品質の現実
顧客の目が厳しくなっている背景
近年の製造業では、医療・自動車・半導体・食品など多様な業界において、クリーン度(清浄度)や異物ゼロといった高品質要求が一層高まっています。
顧客企業では、部品に付着する”髪の毛1本”すら許されない世界も存在します。
国際標準で各種クリーンルーム規格や異物測定・管理基準が整備され、日本のメーカーにも全世界の競合と同等レベルの対応が求められる時代となっています。
現場が抱えるアナログ課題
一方、工場現場では、作業着へのコロコロ(粘着クリーナー)や、簡易なエアブロー洗浄だけで異物対策を終えてしまい、異物混入が発生するたび「またやってしまった」と属人的な責任追及を繰り返すケースも少なくありません。
今こそ、目視検査やアナログ作業中心の昭和的な対策から脱却し、現場ごとに最適化されたクリーン化・静電気対策の構築が不可欠といえるのです。
クリーン化の基礎知識と業界動向
クリーンルームとクリーンゾーンの違いを理解しよう
クリーン化というと「クリーンルームを入れれば安心」と考えがちです。
しかし、高コストで運用ハードルも高いクリーンルーム以外にも、工程の要所だけ清浄度を高めた「クリーンゾーン」方式も現実的な選択肢です。
・クリーンルーム(Cleanroom)は空間全体を規定の清浄度に維持
・クリーンゾーン(Clean Zone)は作業台やライン上の工程限定で清浄度管理
顧客要求・製品特性に応じたメリハリある導入が、コストと品質のバランス最適化に繋がります。
クリーン化関連の業界規格と最近の動向
主な規格として
・ISO14644シリーズ(国際クリーンルーム規格)
・JIS B9920系(日本工業規格でのクリーンルーム・クリーンゾーン管理)
などがあります。
また、マイクロプラスチックやナノサイズ異物のリスクが社会問題化し、「測定技術・可視化技術の進化」と「業界を越えた厳しい異物ゼロ要求」が加速しています。
サプライヤーも自社都合ではなく、顧客志向のクリーン化が急務です。
実践!現場でできるクリーン化の具体的アプローチ
1. 異物発生源の特定と現実的な優先順位設定
まず現場で重要なのは「どこから・どの程度・どんな異物が発生しているか」を徹底して洗い出すことです。
よくあるのは、ライン全体で一律に清浄対応を始め、現場に大きな負担ばかりがかかってしまう手法です。
そうではなく、生産現場を細かくゾーニングし、”リスクの高い部分”から優先的にクリーン化対応を進めるのが賢いやり方です。
・異物混入の過去トラブル履歴
・各工程での作業内容(摩耗か?衣服繊維・人毛か?外気か?)
・検査工程での検出傾向
これらの観点で「発生源マップ」を作成し、費用対効果が高い対策を重点的に進めましょう。
2. 現場で根付かせる標準化と目で見える管理
クリーン作業の標準化(作業手順書化・教育)は不可欠です。
特に
・作業員の衣服・装備の規定(帯電防止着、手袋、帽子など)
・入室前ルール(エアシャワー運用、足元の粘着マット)
・作業中の定期清掃や除電処理
こういった項目については、実際に現場に「標準作業書」として貼り出し、5Sと組み合わせた“目で見える管理”を運用しましょう。
チェックリスト運用で作業者主導の現場パトロールを習慣化すれば、属人的な意識のバラつきも徐々に解消されます。
3. 設備・工具・資材のクリーン度管理強化
異物は人だけでなく、治具・部品・パレット・梱包資材など多様な要素から押し寄せてきます。
(例:エアブロー機の内部が埃だらけ、工具箱の中に繊維屑、梱包段ボールが静電気帯電で埃を呼んでいる……など)
それぞれに
・定期クリーンメンテナンス
・クリーンルーム用資材・工具の導入
・消耗品規格見直し
こういった地道な取り組みが、現場の潜在リスクを小さくしていきます。
4. 異物検査の自動化・デジタル化で属人化脱却
従来は「目視検査者のスキル頼り」だった工程も、マシンビジョンカメラやデジタル測定装置での自動課検システムが安価に普及しています。
AIによる異物認識技術も着実に進化中です。
小型・後付けできる画像検査機器をピンポイントで導入し、「客観的な判定基準」と「履歴保管によるトレーサビリティ」を実現しましょう。
静電気対策の最前線:異物リスクと深く結びつく問題
静電気がもたらす2大リスク
静電気は「電子部品の破壊」「異物の吸着」という2つの重大リスクを伴います。
濃色樹脂成型品や高信頼部品の搬送などでは、微細な埃や繊維クズが静電気帯電とともに強力に“吸着”し、工程後半になってもとれずに外観不良や品質クレームの原因となります。
また電子部品メーカー等では、静電気破壊(ESD)防止が死活問題となります。
JIS C61000、IEC61000などESD規格に則った現場づくりが必須であり、静電気リスクの見える化がユーザーから求められます。
現場で本当に効果を出す静電気対策とは
・静電気防止着/ESDシューズでの「人」対策
・イオナイザー設置による「環境」対策(ブロー型、バー型、スポット型の最適選択)
・帯電しやすい資材や床材への帯電防止処理
・静電気測定器を用いた「数値による管理」と、静電気発生の早期発見
こうした多段階のアプローチが重要です。
ここでも“全部現場にやらせる”のではなく、「高リスクポイントを重点運用」し、“楽をしつつ、漏れなくやる”ことが成功のカギとなります。
バイヤー・購買担当の視点:クリーン化投資の真価とサプライヤー選定
バイヤーが重視するクリーン化・異物静電気対策のポイント
購買担当者目線で考えると、サプライヤー選定でもクリーン化体制・管理状況は評価基準となります。
単なるカタログスペックや見積価格だけでなく、
・現場見学時の5Sレベル
・クリーン対応作業着・ESD対策装備の常時運用状況
・異物トラブル時の原因調査力・再発防止策
こういった現場力が“信頼スコア”として加点されます。
加えて、最近では「クリーン化の可視化(IoTでのロギング・履歴情報提示)」や「AI画像判定の導入」などが高評価を得やすい傾向です。
サプライヤー側も、「どこまで、どのレベルのクリーン品質なら現実的に維持できるか?」を論理的に説明でき、それをエビデンス付きで開示できれば大きな武器となります。
失敗しないクリーン投資の勘所:ラテラルシンキングで最適解を探る
クリーン化・異物静電気対策は“お金をかければ正解”というものではありません。
むしろ、現場視点で「業界常識にとらわれないラテラルシンキング」が費用対効果を最大化します。
既存資産を生かすアイデア例
・既存ワークスペースに簡易クリーンブース/陽圧空調のみ追加
・工程を流す順番を変更し“クリーン工程後の再汚染”を根本削減
・異物吸着リスクの高い樹脂部品のみ帯電防止コーティング実施
・作業員移動動線の最短化で持ち込み異物の“物理的シャットダウン”
・IoTセンサーでクリーン度をロギングし、クレーム時の証跡として活用
このように“無理なく、現場を回しながら少しの投資で大きな効果”を狙う発想が、現場起点イノベーションの本質です。
まとめ:クリーン・異物対策現場は「文化」から変える
クリーン化や異物・静電気対策は、単なる設備投資やマニュアル化では絶対に上手くいきません。
最も重要なのは「現場作業者自身が、なぜこれが必要なのか?どうすれば今より良い流れができるのか?」を腹落ちして動き続ける“文化づくり”にあります。
経営層・バイヤー・管理職・現場、全員が目線を揃えて日々アップデートする、そのための“現実的な現場知見×新しい技術活用”のカイゼンこそが、製造業を進化させる鍵なのです。
今日からできる小さな一歩――工場の現場力を維持・進化させ、グローバル競争を勝ち抜く高信頼生産現場を必ず実現しましょう。
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