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生産性を上げるほど設備負荷が増え故障リスクが跳ね上がる矛盾

目次
はじめに:製造業現場の永遠のジレンマ
生産性向上は、すべての製造現場で追い求められる目標です。
コスト削減、納期短縮、品質向上、働き方改革――。
どれも現代のモノづくりに欠かせないキーワードですが、その中心には「もっと効率よく、無駄なく、速く」という強い要求があります。
しかし、現場で20年以上もの間、生産や調達、品質、工場運営に携わってきた私から言わせていただくと、実態はそう単純ではありません。
なぜなら、「生産性を上げるほど、設備への負荷が増え、故障リスクが跳ね上がる」という、いわば“現場の矛盾”が確実に存在しているからです。
今回は、この矛盾の成り立ちや背景を深掘りしながら、製造業の現場目線で「いかに生産性と設備維持のバランスを取るか」を分かりやすく掘り下げていきます。
昭和の時代から現代に続く“アナログ的現実”と、デジタル化・自動化がもたらす新たな課題についても、実践的な視点で考察します。
なぜ生産性向上で設備負荷が問題になるのか
生産性向上が設備に与えるインパクト
生産性アップの代表的な施策として、ラインスピードの高速化や段取り替え時間の短縮、稼働率向上、人員の最適配置、無駄工程の排除などが挙げられます。
たとえば「一日あたりの生産数を120%増やします」といった数値目標が設定されることもしばしばです。
この目標を達成するためには、現場の設備(機械、ロボット、コンベア、プレス、射出成形機、工作機械など)を今まで以上にフル稼働させなければならなくなります。
ここで見落とされがちなのが「設備には必ず寿命と限界がある」という事実です。
負荷を増やせば増やすほど、部品の摩耗や熱ストレス、潤滑油の劣化、冷却系統トラブルなどあらゆるリスクが積み上がり、トラブルや故障が頻発するようになります。
設備稼働率の上昇と故障率の相関
現場では“稼働率90%以上”を誇りとするケースもありますが、裏側ではメンテナンス負荷や緊急対応が増加していることも多々見られます。
MTBF(Mean Time Between Failures:平均故障間隔)が短くなった、という声はとてもリアルです。
「見せかけの稼働実績」と「現場の疲弊」、そのギャップがジリジリと拡大し、ついには不良品増加、クレーム発生、大規模ライン停止などのトラブルが顕在化することも珍しくありません。
この矛盾を放置すれば、せっかく短期的に向上した生産性は維持できません。
結局は現場の士気低下、リカバリコスト増大、バイヤーからの信用失墜につながってしまいます。
アナログな現場文化が生む落とし穴
昭和の“根性論”から抜け出せない背景
製造業にはまだまだ「一体感」「根性」「場の空気」で乗り切る古き良き(?)現場文化が根強く残っています。
たとえば「みんなで頑張れば、なんとかなるだろう」的な発想や「昼夜問わず現場が対応して当然」という暗黙の了解が色濃く残っている組織も多いです。
そのため、本来であれば“計画的なメンテナンス”や“予防保全重視”が不可欠なはずの設備に対し、ついつい「あと1ロットだけ頑張れ」「予備部品も在庫切れだけど何とかなる」と無理をさせてしまうのです。
こうした昭和由来のアナログ的思考が、設備故障を未然に防ぐ合理的な管理手法の導入を阻む一因となっています。
“現場の知恵”は貴重だが属人化リスクも大
もちろん、ベテラン作業者のカンや経験則による異常検知は極めて有用です。
ただしこういった知見は現場にしか伝わらず、形式知として組織に残らないままリタイアを迎え、結果的に“ノウハウの断絶”が生まれてしまう恐れもあります。
現場の知恵や経験値を活かしつつ、故障リスクを可視化し対策を講じることが今後ますます重要になってきます。
設備負荷・故障リスクを見える化する最新手法
IoTセンサー導入による予兆保全の推進
ここ数年で“IoT”や“スマートファクトリー”といった言葉が一般化しています。
センサーで設備の温度・振動・電流値などをリアルタイムで監視し、AIで異常兆候を自動検知する技術が進化しました。
たとえば、ある工作機械メーカーでは、主軸ベアリングの振動パターンから早期の摩耗サインをキャッチし、定期点検よりも早く予防メンテナンスを実施することで、突発的なライン停止を大幅に減らすことができた事例もあります。
これによって「予知保全」「状態基準保全(CBM)」と呼ばれる新たな潮流が生まれ、生産性と設備安定稼働の両立が現実味を帯びてきています。
データドリブンな現場管理の勧め
紙や口伝えによる点検記録から脱却し、タブレットやクラウド管理ツールによるデータ一元化も進んでいます。
メンテナンス履歴や異常発生時の対応記録を時系列で蓄積することで、「このラインは通常よりも起動トラブルが多い」「このサポートベアリングは半年で摩耗しやすい」など、精緻な分析ができるようになっています。
これにより「とにかく頑張って回せ!」ではなく、「どこでどう無理をしているから設備が悲鳴を上げているのか」を冷静に把握し、根本解決につなげられるのです。
バイヤー視点から見たこの矛盾
調達先選定のポイントとしての“設備健全性”
バイヤーや購買担当者の皆さんも、単に安価なサプライヤーを選ぶだけでなく、その製造現場が「どれだけ安定的に生産できるか」を強く気にしています。
突然のラインダウンや長期的な納期遅延が起きてしまえば、サプライチェーン全体の信頼関係が損なわれてしまうからです。
そのため「無理な増産をしていないか」「自動化やIoT化でリスクを軽減できているか」「メンテナンス計画や保全体制が十分か」といった定性的な基準も重要視されています。
“現場起因リスク”の把握がサプライヤー選定のカギ
実際、サプライヤー監査の際には「現場の日誌」や「点検記録」、「最近の停止・故障事例」へのヒアリングが増加しています。
また、再発防止策や改善活動の具体度をチェックすることで「生産能力=本当に持続できるものか」が図られています。
仕入先企業としては「短期的な生産性だけで勝負せず、いかにして“安定的運用力”“障害対応力”を示せるか」が受注のカギとなるでしょう。
現場が今すぐやるべき“両立思考”の3つのポイント
1.設備負荷の定量化と見える化の徹底
現場で推奨したいのは、「ラインごとの稼働時間」「サイクルタイム」「主要設備の月間運転時間」「故障発生頻度」などを定量的に把握することです。
グラフやヒートマップで“負荷が偏りやすい工程や日”を見える化し、オーバーワークを定期的に是正しましょう。
2.予防メンテナンスの自動化・標準化
IoTを使って“異常の予兆”を逃さず拾い、保全担当者に即時アラートを通知する体制を整えましょう。
さらに、メンテナンス手順そのものも動画や写真を交えて「誰でも実践できる標準作業書」に落とし込み、属人化を防ぐ工夫が重要です。
3.バイヤーへの“現場力”アピールの強化
営業資料や仕入先監査用の資料に、「当社は稼働率だけでなく、安定運用のための保全活動・IoT活用に力を入れています」と数値・事例込みで記載しましょう。
安さやスピードだけでなく、安心して長期調達先に選んでもらうためにも、こうした現場価値の可視化が非常に有効です。
まとめ:生産性と安定稼働を両立するために
“生産性を上げるほど設備負荷が増え故障リスクが跳ね上がる”――
この矛盾を現場レベルで放置すれば、短期的な成果は出ても、持続的な競争力は築けません。
アナログとデジタル、現場知見とデータ活用、根性論と合理性のバランスを取りながら、真に「強いモノづくり現場」を育てていくことが、これからの製造業に求められる姿です。
今後、バイヤーやサプライヤー、現場担当者一人ひとりがこの矛盾に目を背けず、“両立のためのしくみづくり”を足元から進めていく――。
それが、これからの時代に製造業が生き残り、さらに発展するための原動力になると私は確信しています。
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