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上司の偏った評価がモラハラに繋がる理由

目次
はじめに:製造業に蔓延する「偏った評価」とは何か
製造業の現場で長年働いていると、上司による「評価」が個人のキャリアや現場全体の雰囲気にどれほど強い影響を持っているか、日々肌で感じます。
特に、昔ながらの昭和的な職場文化が今なお色濃く残る現場では、評価基準が曖昧で、時に個人的な好みや先入観に左右されることが少なくありません。
この「偏った評価」が、モラルハラスメント(以下モラハラ)や職場の不和、生産性の低下といった深刻な問題に発展することもあります。
今回は、製造業の現場から見た「偏った評価」がなぜモラハラに繋がりやすいのか、その理由を深堀りし、実際に起こりがちな事例や、これからの業界に求められる対策まで、ラテラルシンキングを交えながら解説します。
なぜ偏った評価は起きるのか―昭和的管理と現代のギャップ
1. 昭和の「俺の背中を見て学べ」文化の残滓
製造業では、ベテランが新人に「技は盗んで覚えろ」「見て覚えろ」といった精神論を押し付ける場面が今でもよく見られます。
この文化の根底には、「言わなくてもわかるだろう」「空気を読め」といった曖昧な期待や評価基準が横たわっています。
結果、上司が「自分に合う」部下を優遇し、「自分に合わない」と感じた部下を低く評価するという偏りが生まれやすいのです。
特に調達購買や生産管理部門では、「報連相(報告・連絡・相談)」重視が表向きには強調されつつも、実際は気に入った部下には裏で細かい指導をし、そうでない人には突き放す…といったダブルスタンダードも横行しがちです。
2. 業績評価の「見えない部分」が大きすぎる
製造現場は表に出てこない貢献が多く、調達の取引先交渉、品質管理の地道な検証、生産管理のトラブル時の即応など、数字では表せない努力が山ほどあります。
しかし、上司が「数字」や「目に見える成果」だけに囚われると、見えない部分で支えている人材を不当に低評価してしまいがちです。
これが積み重なると、「なぜAさんだけ評価されて自分はされないのか」という疑念が高まり、不満や不信につながります。
また、数値目標至上主義が暴走すると、現場に合わない無理な要求や責任転嫁が起こりやすく、モラハラやパワハラの温床となります。
3. 「相対評価」の罠に陥る組織
社内の昇格・昇給や賞与査定などで使われがちな「相対評価」は、人と人を無理に順位付けする手法です。
これは一見公平に見えて、実は上司の主観や好き嫌いによって評価が歪むリスクを高めます。
「○○さんは私の言うことを素直に聞くから高評価」「△△さんは自己主張が強いから低評価」となり、本質的な業績や成長よりも「上司にとって都合がいいか」が評価基準になりがちです。
偏った評価がモラハラに直結するメカニズム
1. 不透明な評価は支配と服従の関係を生む
評価基準が明確でなく、上司の機嫌や感情に左右される環境では、部下は上司の意向を汲み取ることに必死になります。
現場では「波風を立てないように」「空気を読んで」「ミスを上司に隠す」など、防衛的な行動が横行し、率直なコミュニケーションが消滅します。
この状態が続くと、上司は「評価を盾に人をコントロールできる」と感じ、次第に部下を思い通りに動かす発言や態度がエスカレートします。
「自分の評価が気になるなら私の言う通りにしろ」といった露骨な指示や、無視・嘲笑・陰口・冷遇など、モラハラ的な言動へ移行しやすくなるのです。
2. 優遇と冷遇の公開処刑化
偏った評価は、しばしば「見せしめ」として使われます。
会議や朝礼、作業場で「Aさんは素晴らしい、Bさんはダメだ」という発表や、特定の人だけを褒めたり他は無視したりすることで、集団内に上下関係や恐怖心を植え付けるのです。
こうした状況に置かれると、冷遇された側は孤立し「自分は必要とされていない」「何をやっても無駄だ」という無力感にさいなまれます。
逆に優遇された側も、「上司の評価にすがるしか生き残れない」「自分も明日は逆の立場になる」と過剰にプレッシャーを感じ、精神的な安定を失いやすくなります。
3. 正当な意見や提案が封じられる
偏った評価環境では、「上司に反論したらマイナス評価される」といった恐怖が広がります。
調達購買の場面で「このサプライヤーのリスクは高い」「現行プロセスを変えるべき」といった建設的な意見も、「余計なことを言うな」「評価に影響するぞ」と脅され、形だけの報告・連絡しかできなくなります。
こうして現場は問題を隠す文化、忖度や事なかれ主義が蔓延。
リスクを先取りしたり業務改革したりする力が失われ、最終的には大きな事故やトラブルを招く土壌が出来上がってしまいます。
現場で実際に起こった偏った評価の事例
1. 生産現場リーダーと20代若手の対立
ある工場の生産ラインで、50代のベテランリーダーが20代の若手オペレータに対し「教えなくてもやれば覚えるはず」と指導内容を曖昧にしていました。
若手が質問しても「そんな基本も分からないのか」と突き放し、代わりにベテランの顔色をうかがう中堅社員だけを高く評価。
この現場では若手の退職が続出し、3年で5名の離職という深刻な人材流出を招いてしまいました。
2. 購買部での担当格差
購買部門でAサプライヤー担当者を「出来る奴」として優遇、Bサプライヤー担当者を「面倒事が多い」と低評価し、業務量や成果報告に差をつける上司がいました。
B担当者はトラブル処理で膨大な残業を強いられる一方、上司からの評価は「結果が残せていない」と厳しいものでした。
結局B担当者は心身の不調を訴え、メンタルヘルス問題に発展しました。
3. 品質トラブル隠ぺいと報復人事
品質管理部門で、検査データの不備を正直に報告した社員が「事を大きくしやがって」と激しい叱責を受け、その後閑職に異動させられた例があります。
周囲は「正直者がバカを見る」と学び、以後は問題を積極的に隠すようになり、組織の健全な内部統制が失われていきました。
偏った評価文化のもたらす長期的な弊害
偏った評価が蔓延した職場は、人間関係がギスギスするとともに以下のような悪影響が現れます。
– 適材適所が崩れ、本来の能力より「上司受けの良さ」で人事が決まる
– 挑戦意欲の低下、現状維持バイアスの強化
– トラブル未然防止や業務改革ができず、徐々に競争力が低下
– 卓越したバイヤーや現場改革者が育たず、組織が停滞
– 離職率の上昇、採用難、業界イメージの悪化
これでは、グローバルに戦うことも、次世代を担うバイヤーや先進的な人材を育てることもできません。
これからの製造業に必要な「評価の再構築」
1. 目標管理と360度評価で見えない部分も可視化
「目標管理(MBO)」の導入や「360度評価」など、多様な立場からのフィードバックを取り入れた評価システムが有効です。
特に、調達・購買の現場なら業者との関係維持やチーム貢献度も評価の一部に加えることが重要です。
これにより、「上司の主観」だけではない多面的な評価が実現し、透明性が高まります。
2. 数字だけでなく「プロセス評価」を重視
業績や納期達成率、購買コスト削減などの数字はもちろん大切です。
しかし、その裏で地道にリスク回避やプロセス改善へ取り組む人、現場で後輩をフォローしたりサプライヤーと信頼関係を築く姿勢も、見逃してはいけません。
この「成果+プロセス」の評価基準を明文化し、現場リーダー同士で擦り合わせていく工夫が大切です。
3. 評価フィードバックは「改善の機会」として
評価を伝える場は「ダメ出し」ではなく、「どう成長すればいいか」を一緒に考える場に変えるべきです。
部下一人一人の課題と、次のチャンスを具体的に示すことで、公平感・納得感を持ってもらえるようになります。
直近の生産数だけで判断せず、例えば「調達先のリスク分析が改善された」「新たな業者評価制度を導入した」など、プロセス面の進歩も評価する姿勢を保ちましょう。
サプライヤーへの示唆:バイヤーはこう見ている
サプライヤーの立場の方へ。
製造業バイヤーの評価尺度に内在する偏見やアンフェアな点を知ることも、とても大切です。
バイヤーは「身内」のサプライヤーや顔なじみに甘くなりがちで、初参入や反論をする業者を疎外する場合もあります。
取引拡大のためには、バイヤーの評価・意思決定ルートを正しく読み、数字だけでなく信頼関係作りや情報共有(納入リスク、工程の見える化など)を強化しましょう。
評価の「見える化」に協力できる企業は、これからの厳しい時代でも選ばれやすくなります。
まとめ:新たな地平線へ―「人を活かす評価」へ転換を
製造業の発展において、上司の偏った評価がもたらす弊害は無視できません。
評価とは、人を動かし、育て、組織を生かす最強の仕組みです。
昭和型の曖昧な評価から脱却し、「多角的・透明・根拠ある」評価を導入することで、初めて現場は活性化し、イノベーションも人材流出の抑制も両立できます。
買い手も売り手も、これからは「見えない部分」を見える化する努力、その成果を正当に認め合う構造を作っていきましょう。
それこそが製造業の底力を引き出す「新たな地平線」への第一歩なのです。
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