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作業者依存の品質管理を放置すると事故が増えるメカニズム

目次
はじめに:作業者依存の品質管理がもたらす現場のリスク
製造現場では、長年にわたり「勘」と「経験」と「根性」に支えられたアナログな品質管理が根強く残っています。
このような作業者依存型の品質管理体制は、昭和の時代からの慣習ともいえます。
しかし、現代のグローバルな競争や、少子高齢化による人材不足、多様化する顧客ニーズの中では、こうしたやり方が大きなリスクにつながりやすくなっています。
この記事では、作業者の技能や勘頼みの品質管理が、なぜ事故やトラブルを増大させるのか、そのメカニズムを実体験や具体例を交えながら解説します。
作業者依存の品質管理とは何か
作業手順の標準化より「できる人」に頼る現場
作業者依存の品質管理とは、その工程で作業する人の個人能力や経験、勘に品質が大きく左右される状態を指します。
例えば、検査工程で検査員の「目視力」や「長年の経験」に期待してしまう、作業台の周辺整頓やチェックシートの記入が個人任せになっている、ベテラン頼りで新人や派遣にきちんとした教育をしていない─こうした現象はどの工場にも多かれ少なかれ存在します。
なぜ作業者依存に陥るのか
背景には、標準作業書や作業手順の整備・教育に充分な投資がされてこなかった、現場が個人技能に価値を見出しすぎて属人化してしまった、過去の成功体験が変革を拒ませるといった事情があります。
特に昭和から続く体質の現場では「〇〇さんがいれば大丈夫」「ベテランの目で見ればわかる」といった属人化した品質管理が今なお色濃く残っています。
作業者依存が生み出す品質リスクのメカニズム
1. ヒューマンエラーの再現性とトレーサビリティ低下
作業者依存の現場では、同じ工程でもひとりひとりやり方や基準が微妙に異なります。
例えば目視検査や手作業の組立・仕上げ作業では、注意力や集中力、体調、経験値などが品質に影響してしまいます。
また記録もきちんと残りにくく、万一問題が発生しても「誰が」「いつ」「どのように」作業したのか正確なトレースができず、原因究明や再発防止が困難になります。
2. 技能伝承の停滞と非効率化
ベテラン作業員だけが暗黙知としてノウハウを持ち、他の人にうまく伝えられていない場合、退職や異動が起きるたびに品質が不安定化します。
また、同じ作業でも人によって生産スピードやミス率が大きく異なることで、全体最適より部分最適が優先され、現場が非効率化しやすくなります。
3. 見えない「小さな不良」が蓄積しやすい
作業者の感覚やマニュアル解釈の曖昧さゆえに、工程内で検出・是正されるはずの不良品や異変を見逃すリスクが高まります。
特に、小さなミスや変化が見逃されてクレームやリコールにつながるケースも増えています。
例えば、自動車部品や電子部品といった高精密部品は、わずかな狂いが重大な事故や法的責任を引き起こすため、アナログな品質管理では限界があります。
事故やトラブルが多発する構造的要因
アナログな現場×業界動向の変化
多くの製造業では近年、調達先のグローバル化や生産の多品種少量化、短納期化、そして「コストダウン圧力」の高まりにさらされています。
こうした状況下では、部分最適な品質管理(=属人化)ではカバーしきれないミスや想定外の事故が発生しやすくなります。
さらに、IoTやAI、自動化が進みはじめている工場では逆に「人間の注意不足」が最後のリスクとなり、「最終工程だけは人任せ」の穴が事故を生むことも珍しくありません。
バイヤー・サプライヤーの視点では
バイヤーが部品や製品を仕入れる際、品質保証体制や工程管理の「標準化」は重要な評価ポイントとなります。
作業者依存の工場は、工程監査や調達先選定で「信頼が低い」「ランダムな品質事故が起きやすい」と評価されやすくなります。
そのため属人的な品質管理を放置しているサプライヤーは、バイヤーからの信頼と受注機会の損失につながりやすいのです。
現場でよく見る“あるある”事故例とその真因
事例1:経験者退職後に発覚する「潜在不良」
長年不具合ゼロだった工程が、熟練者の退職直後に不良発生―よく聞く話です。
これは、実は「現場で個人の裁量によって補正・調整されていた隠れた不安定要素」が、標準化されないまま放置されていたために起きる現象です。
事例2:目視検査のバラつきで流出する異常品
人の目視だけで外観検査をしているラインでは、日によって合格基準がぶれやすく、「今日は疲れているから通してしまった」「新人なので見逃した」といったミスが蓄積します。
この結果、品質事故やクレームとなって表面化します。
事例3:暗黙知に頼った特殊工程での多発ミス
職人技や微調整を要する特殊な加工工程で、熟練者には簡単な作業でも、新人や応援作業員には再現できずにミスが頻発します。
根本原因は、「なぜその操作をするのか」「どうしたらNGなのか」までの教育や標準化がなされていないことにあります。
これからの品質管理に求められる「脱アナログ」の視点
標準化・自動化が不安を減らすカギ
作業手順を文字や動画で見える化し、標準作業書やチェックリストを整備すること。
IoTやカメラ検査、センサー自動記録などのデジタル技術を段階的に導入し、人のミスや「思い込み」に頼らず管理できる土壌をつくること。
これが「誰でも同じ品質」「再現性のある作業」を実現するための第一歩です。
現実的な第一歩は「属人化の棚卸し」から
とはいえ、工場にはどうしてもアナログな工程・人間ならではの判断が必要な場面も多くあります。
改革の現実的な始め方は、「どの工程が誰に頼りきりなのか」を棚卸しし、属人化のリスクが高い順に「マニュアル化」「基準値の明確化」「記録の徹底」から着手することです。
現場のベテラン作業者を巻き込み「なぜこの方法を取るのか」まで掘り下げることで、教えること自体が現場力の底上げにもつながります。
現場目線で考える「脱・作業者依存」の3つのポイント
1. 教育・訓練のしくみ化と継続
単に動画教材や手順書を用意するだけでなく、「なぜその手順を踏むのか」「どうすればミスにつながるのか」まで腹落ちする教育を繰り返し行いましょう。
OJTだけに頼らず、体系だった教育訓練計画を立ててPDCAで効果を検証すれば、人によるバラつきを減らせます。
2. 記録とフィードバックの徹底
どの作業でどんな記録が必要か、現場で何が起きていたのかをデータとして残すことで、事故やミスの芽を早期に見つけやすくなります。
手書きやエクセルだけでなく、可能な範囲で電子化・自動記録を導入するとさらに信頼性が高まります。
3. 改善活動への現場巻き込み
管理者や一部スタッフだけでなく、現場作業者全員が「自分ごと」として改善に参加することで、「自分の仕事のやり方を見直す」文化が生まれます。
例えば、ヒヤリハットの事例共有会、朝礼での安全・品質目標の確認など、日々のコミュニケーションも大切です。
バイヤー・サプライヤー双方が意識すべきこと
現代のものづくりは、単なるコストや数量勝負から「品質をどれだけ標準化できているか」の勝負へと移りつつあります。
サプライヤー側は、作業者依存の現状がないか定期的に点検し、工程監査や認証(ISO、IATF等)への準拠度を高める必要があります。
バイヤー側も、単に「安かろう悪かろう」を選ぶリスクを理解し、「現場の管理レベル」を確認する監査・連携を重視しなければなりません。
まとめ:「現場の暗黙知」を未来の価値に変えるために
作業者のスキルや勘・経験に依存する品質管理を続けていると、ヒューマンエラーや技能伝承の断絶、トレーサビリティの低下といったリスクを避けられなくなります。
現場の暗黙知やノウハウそのものは決して悪ではありませんが、それを形式知化・標準化・自動化し「再現性ある現場力」へ昇華させることが、今後の製造業の競争力強化には不可欠です。
まずは「自分の現場がどれだけ作業者依存なのか」、現状を真摯に見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。
現場での経験と知恵を、次世代の新しい価値へとつなげていきましょう。
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