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購買部門が検討すべき日本中小メーカーの共同購買活用法

目次
はじめに:なぜ今「共同購買」なのか
製造業の現場では、部品や原材料の価格高騰、人手不足、そしてグローバル競争の激化という三重苦が続いています。
特に日本の中小メーカーは、コスト圧力に苦しみながらも、どうしても「一社ごとの個別調達」が根強く、調達手法の抜本的転換には慎重な空気が漂っています。
しかし、ここ数年、製造業の調達現場で新たな地殻変動が起きています。
それが「共同購買」という手法です。
大手メーカーが持つボリュームの力を持たない中小メーカーこそ、「共同」の力を活用することで現状を打開できる可能性を持ち始めたのです。
この記事では、昭和時代からの延長線上にある現場の常識や文化をふまえながら、実践的な視点で共同購買の活用法を深掘りします。
購買部門の方はもちろん、これからバイヤーを目指す方や、サプライヤーがバイヤーの本音を知りたい場合にも役立つ内容にまとめました。
共同購買とは何か? 昭和流「自前主義」からの脱却
共同購買の定義と基本のき
共同購買とは、複数の企業が自社のニーズを持ち寄り、まとめて発注や交渉を行うことで、調達コストや業務負担を削減しようとする仕組みです。
たとえば、ネジやアルミ部材、包装材、消耗品など、各社が個別に仕入れていたものを「地域の工場仲間」や「同じ業界団体の会員」でまとめ買いするイメージです。
海外では組合や購買協同組織(Group Purchasing Organization:GPO)が一般的ですが、日本では「仕入れは全部自前で担当するもの」という価値観が根強いのが現状です。
なぜ日本の製造業で広まりにくかったのか?
日本の中小製造業は、昔ながらの商習慣や人間関係を重視します。
「○○商店の△△さんからずっと買っている」
「品質トラブルになったら自分できちんと責任がとれる相手から調達したい」
「価格交渉は現場の暗黙のルールがある」
こうした「昭和流の付き合い」は悪いことばかりではありません。
ですが、「横並びを嫌い、協調よりも独自路線」を貫いた結果、資材原価の高止まり、交渉力の弱さという弱点が顕著になりました。
現場では「他社と協力するなど抵抗がある」という根強い声もあり、取引先の幅や調達力が限定されがちなのです。
中小メーカーに共同購買がもたらす3つのメリット
1. 調達コストの直接的な削減
発注量をまとめることでサプライヤーとの単価交渉力が劇的に向上します。
小口取引では受けられなかった値引きが可能となり、時には10%を超えるコストダウンも生まれます。
仕入れ資材以外でも、物流費・梱包費など共通コストを効率的に削減できます。
2. 優先供給枠の確保と安定調達
規模を武器にすることで、納期遅延や数量調整への対応力が増します。
とくに災害や市場変動時には「まとまった需要がある小口グループ」としてメーカーや商社から優先的に供給してもらえる可能性が高くなります。
3. 業務負荷・ノウハウ共有による間接的な効率化
見積依頼や発注書・納品管理・支払業務など、煩雑な事務仕事を一部共同化することで、現場の業務負担を大きく減らすことができます。
さらに、業界横断で調達ノウハウや市場動向、品質情報を共有することで、バイヤー個人の成長や新たな商機発見にもつながります。
どこから始める? 実践的な共同購買の導入ステップ
1.共同購買の「仲間」と「領域」を決める
共同購買は、信頼と共通利益をもてる「仲間さがし」から始まります。
「同じ町の工場仲間」「特定業界の協同組合」「商工会議所のつながり」など、まずは小規模でも共通性の高いグループを作ってください。
この際、「まずは消耗品など競争関係の薄い領域」から取り組み、徐々に基板材料や樹脂成型品など重要度の高い特殊資材へと広げるのが賢明です。
2.ニーズ集約・仕様の標準化
「みんなで買えば安くなる」とはいえ、個別仕様・個別ルールではまとめられません。
共通材料や消耗品など、標準化しやすい領域から仕様や条件をすり合わせ、スケールメリットを活かしましょう。
もし仕様統一が難しければ、「サプライヤーに複数パターンの見積もりをとり、最も安価な組み合わせをグループで検討する」やり方も効果的です。
3.サプライヤー選定と公平な取引ルールの整備
取引先の選定は、メンバー間の公平性を大切にしてください。
各社が持つサプライヤー情報をオープンにしつつ、品質・納期・価格・アフターフォロー体制など多面的に評価して候補先を絞り込みます。
最終的には「代表窓口(購買担当)」を決め、サプライヤーとの窓口を一本化、決済や支払のルールもグループで明確化しましょう。
4.契約・実施・フォローアップ
マスター契約や共同購買の意思決定プロセスなど、事前に細かなルールを定めておくことが後々のトラブル防止につながります。
また定期的に進捗状況や成果をレビューし、品質不具合や未納リスクなども可視化してグループ全体で対策を講じることが重要です。
注意したい昭和流現場の「違和感」や落とし穴
長年の取引先との関係性をどう守るか
「今ある仕入先への義理」は日本の現場独特の空気です。
共同購買を進めることで、既存サプライヤーとの関係がギクシャクする場合もゼロではありません。
この場合、「部分的な共同購買(例:バルク原材料のみ)」にとどめる、あるいは既存サプライヤーもグループ購買の提案先に含めることで、軋轢を最小化できます。
価格信仰・コスト最優先主義のリスク
共同購買の最大の目的は価格競争力の強化ですが、安さの追求「だけ」に陥ると、品質や納期リスクが急増します。
昭和的な現場では「人間関係のしがらみ」が逆にトラブル発見や柔軟な対応力につながっていた部分もあります。
グループの中で「何を優先するか(品質・納期・コスト)」を合意してから動き出しましょう。
バイヤー目線で考えると、何が最も重要か
共同購買の成否は、「バイヤーの巻き込み力」にかかっています。
自社一社の発想だけでなく、参加企業各社の期待や不安に正面から向き合う姿勢が必要です。
また、一つの購買グループが大きなパワーを持つと「サプライヤー叩き」になりがちですが、それは長期的には業界生態系を壊すことにつながります。
「どこで歩みより、どこで攻めるか」現場感覚の絶妙なバランスをバイヤー自身が模索することが求められます。
サプライヤーから見た共同購買:バイヤーの本音を知る
サプライヤーの立場から見れば、共同購買のグループからまとめて発注が来れば大歓迎です。
しかし、その反面、仕様の違いや納期のずれ、多種多様な問い合わせ対応に追われて現場が混乱することもあります。
バイヤーの狙い(単価低減だけでなく、安定供給や品質確保への期待)を理解したうえで、「グループ全体のメリット」を強調できるよう準備しましょう。
また、共同購買グループと新たに信頼関係を築くことで、現場改善提案や新規商談のチャンスも広がります。
時代とともに変わる「購買力」:これからの調達部門へ
昭和から平成、令和へと時代は進み、製造業の現場も「個社最適」から「全体最適」へのシフトが避けられなくなっています。
大手メーカーのバイヤー経験者として強調したいのは、共同購買は単なるコストカットや作業効率化のためだけの施策ではない、ということです。
現場同士の壁を越え、バイヤー自身が「調達の新たな地平を切り拓く」覚悟があってこそ、本当の意味で業界の競争力が高まります。
まとめ:現場の知恵と勇気で、調達のパラダイムシフトを
製造業の調達現場は、いま大きな転換点に立っています。
「一社ごとに頑張る」「古き良き商売のやり方を守る」――その精神があったからこそ、日本の現場は強かったのです。
しかし時代が変われば、やり方も変わらなければ生き残れません。
共同購買の実践は、小さな一歩かもしれませんが、必ずや業界全体の底力を引き上げる力となります。
現場を知るバイヤーこそが、新しい調達のあり方を仲間と手を組みながら切り拓くべき時代です。
ひとりひとりの挑戦が、未来の製造業を照らす光となることを願っています。
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