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ストレスチェックが職場の信頼関係に影響するケース

目次
はじめに
職場のメンタルヘルス対策として2015年のストレスチェック義務化以降、多くの製造業の現場でも年に1度のストレスチェックが当たり前になりました。
しかし「受けるのが面倒」「結果を会社に知られたくない」といった声が現場には根強くあります。
ストレスチェックそのものは従業員保護のための制度ですが、やり方を誤ると逆に職場の信頼関係にひびが入ることがあります。
20年以上、現場と管理職の両方を経験した立場から、ストレスチェックの「実態」と、それがいかに職場の信頼関係に影響しているのかを実践的な視点で紐解いていきます。
製造業現場におけるストレスチェックの位置づけ
ストレスチェックの目的と現場の受け止め方
本来ストレスチェックは、従業員が自分自身のストレス状況を把握し、必要なら医師面談など早期のサポートにつなげる手段です。
精神的な不調を未然に防ぐ、組織全体の健康度を高めることが制度の目的になっています。
一方で、現場では「会社が従業員の健康リスクを管理したいだけ」「回答内容で異動や評価に影響があるのでは」という-疑念が消えにくい状況です。
とくに昭和的な「ガマン文化」の強い現場では、「本音は書けない」「会社への信頼が揺らぐ」という声もたびたび耳にします。
調達購買や生産管理など間接部門への影響
調達購買や生産管理といった間接部門は、工場現場と管理部門の間で板挟みになることが多く、目立たないストレスを抱えがちです。
特にバイヤーは社内外との折衝が多く、孤独なストレスを「見せない」傾向が強いですが、ストレスチェックも「どうせ誰かに見られる」と懐疑的になりがちです。
このように、製造業の現場や間接部門では、ストレスチェックが職場の信頼構築にプラスに働くのか、マイナスになるのか、その岐路に立たされています。
ストレスチェックが信頼関係を壊すケース
回答内容の取扱いミスによる不信感
「個人結果は秘密」とうたわれていても、職場や部署単位の集計結果をもとに「この部署はストレスレベルが高い」と上層部が発信したり、「あの人が医師面談に行くらしい」と噂が立つことが現実にはしばしばあります。
特に製造業の現場は人数が限られ、ちょっとした異動や配置転換がすぐ話題になる土壌があります。
このような状態で「本音で回答せよ」と求められても、「信じて答えるほどの信頼が会社にあるか」と躊躇してしまいます。
昭和的マネジメントが根付いた現場での拒否反応
いまだに「男なら弱音を吐くな」「ストレスも自己管理」といった価値観が残る現場もあります。
現場リーダーや課長職に「なんでこんなものやる必要があるんだ」「面倒くさい」と公言する人がいると、部下や若手も萎縮して本音が書けなくなります。
このような職場で無理に制度を徹底しようとすると、「どうせ建前だけ」「やらされ感しかない」となり、信頼関係は逆に損なわれがちです。
形式主義的な運用がもたらす形骸化
「ストレスチェックは形だけやっておけばOK」「指摘があればフォーマット通りに指導すればよい」といった運用が横行している現場もあります。
実際に従業員が困っているときに、相談先が形式的な面談しか実施しない、トップの姿勢が事務対応に終始している――こうした状況では「会社に悩みは絶対に話せない」という認識につながります。
心の安全がない職場では、従業員からの信頼は得られず、ますます形骸化した制度運用が進んでしまいます。
ストレスチェックを信頼関係の土台に変えるためには
経営層・管理職の本気度がカギ
まず最重要なのは、「社員の本音を受け止める気があるか」を会社全体で問い直すことです。
経営層や工場長クラスが「本音を歓迎する」「本人の同意なく個票を利用しない」「悩みが表面化すればチームで解決する姿勢」を明言し、徹底して現場目線で取り組む姿勢が不可欠です。
管理職研修で「自分も答えた」「悩みは弱さでなくチームの資産」と伝えたり、率先して自ら悩みを自己開示してみるのも効果的です。
これにより「上司も悩む」「本当の声を許容してくれる文化」を現場レベルで根付かせることができます。
保護と透明性――制度運用の徹底
ストレスチェックの個人結果は厳格な秘密として扱い、相談内容も絶対に口外しない、評価や異動に一切影響させない。
この基本を現場レベルで徹底するには、制度の意義や具体的な守秘義務を何度も説明し、疑念を払拭するしかありません。
また、医師面談やフォロー面談の流れ、相談できる窓口などを具体的に「顔が見える」「何度でも利用できる」形で示すことも重要です。
昭和的価値観との向き合い方
「ガマンこそ美徳」という古い価値観が根強い現場には、時間をかけて価値観をすり合わせる必要があります。
若手とベテランでグループワークやオープンなミーティングを設け、「ストレスも仕事の一部」「助け合いにつながる価値」を共有する取り組みが有力です。
現場のリーダー格が本音で語ったり、自らストレス対策を実践して見せることが、空気を変える突破口となります。
定量データの活用による具体的改善
ストレスチェックの結果は、単なる「数字」ではなく、現場の改善ポイント発見ツールとして使えます。
例えば、ある部署の「職場のコミュニケーション」項目が全国平均より極端に低い場合、「会議の進め方を変える」「雑談機会をつくる」といったアプローチを現場発信で提案することが重要です。
このとき「点数が悪いから指摘」ではなく、「チーム改善のタネが見つかった」というポジティブメッセージを大事にしましょう。
サプライヤー・バイヤー視点で見たストレスチェック
バイヤーのストレスの実態と課題
調達や購買部門は、納期やコストのプレッシャーと社内外の板挟みストレスが常につきまといます。
しかも、サプライヤーの品質問題、価格交渉の難航、新規取引先リスクなど、ストレス源は多様化する傾向です。
バイヤー自身がストレスチェックを活用し「どうやって自分のメンタルを守るか」模索する必要があります。
サプライヤーがバイヤーの本音を知るヒント
サプライヤー(供給業者)にとって、バイヤーのストレス傾向や組織のムードを知ることはビジネス上も大切です。
ストレスチェックの集団結果開示や、バイヤー担当者との信頼関係構築の中で「どういう点がボトルネックになっているのか」探るきっかけにも活用できます。
「納期管理の厳格化が現場のストレスを増やす」「上流の仕様変更が現場混乱につながりやすい」といった現場のリアルな声を、抽象的でなく数値や傾向として理解できるのはサプライヤーにも有益です。
まとめ:ストレスチェックは「現場の信頼度メーター」として活用すべき
ストレスチェックは「会社の管理ツール」でも「やらされ仕事」でもありません。
むしろ現場と会社との信頼関係・オープンネスの度合いを測る、リアルな「職場信頼度メーター」と位置付けるべきものです。
疑念や不安がつきまとうアナログ業界でこそ、経営層や現場リーダーの本気度と、徹底した透明性・守秘義務、そして継続的な現場コミュニケーションがカギとなります。
バイヤー・サプライヤーを含めた関係者のメンタルヘルスは、良好な取引や現場改善の土台となります。
形式的な運用にとどまらず、ストレスチェックをきっかけに本音の信頼文化構築に取り組むことが、製造業の真の競争力へとつながります。
今こそ現場目線・現場本位でストレスチェックの意味を問い直し、「昭和」の壁を越えた新しい現場づくりに一歩踏み出しましょう。