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OEM生産で正確な“生産能力計算”を行う方法

目次
OEM生産で正確な“生産能力計算”を行う方法
なぜ生産能力計算が重要なのか
製造業の現場でOEM(Original Equipment Manufacturer)生産を行う際、生産能力の計算は避けて通れない重要課題です。
これは単に「どれだけ作れるか」という次元を超え、納期遵守、コストダウン、品質維持に直結するためです。
受託生産では、バイヤーからの要望やサプライチェーン全体の流れをいかに正確に把握できるかが、結果的に現場の効率と顧客満足度を大きく左右します。
このため、生産能力計算は調達、営業、生産管理、品質管理など組織横断で取り組むことが求められ、現場の感覚や経験値といった“昭和的な勘”のみでは通用しなくなっています。
生産能力とは何か?よくある誤解
生産能力という言葉は曖昧に使われがちです。
工場に勤務経験のある方であれば、「このラインなら1日300個くらいだろう」といった“肌感覚”に頼った数字が独り歩きするケースも少なくありません。
正確には、生産能力とは、「一定期間内に、定められた品質とコストで生産可能な最大数量」を指します。
この“最大数量”は、設備能力だけでなく人員配置や部品供給、段取り時間、トラブル頻度、品質検査の歩留まりまで考慮する必要があります。
昭和の時代は「とにかく根性でなんとかなる」とされていましたが、現在は細やかな現場データの積み上げと論理的な根拠が必須です。
OEM生産の現場でよく起きる生産能力のズレ
OEM生産の現場でしばしば起きる課題の一つが“生産能力の過信”です。
例えば、普段500個を生産しているラインに「突発で700個入れてほしい」と要望され、「なんとかなる」と引き受けてしまい、納期遅延や品質低下につながる状況が起こります。
また、実際には要員の異動や部材納期、段取り替えで大幅に能力が落ちるのに、過去の最大値ばかりを根拠に能力判定してしまう“数字の独り歩き”も見受けられます。
これらの背景には、正しい生産能力計算に必要な情報が現場・生産管理・調達・営業の間で十分に共有されていないことが隠れています。
正しい生産能力計算のための基本手順
それでは正確な生産能力計算は、どのような手順で行うべきでしょうか。
実績ある手法をもとに、現場目線で整理してみます。
1. 「標準サイクルタイム」の明確化
製品1個あたりの正味作業時間(リードタイム)を定義します。
過去の実績データやストップウォッチ法などで、「通常状態での」作業時間の平均値を求めましょう。
2. 「稼働可能時間」の算定
1シフトの実働時間から、休憩・ミーティング・点検・掃除など、直接生産に使えない時間を除いて稼働可能な時間を明確にします。
3. 「歩留まり・良品率」の考慮
全数出荷は稀であり、途中の不良や再加工が発生します。
良品率(歩留まり)を加味しないと実出荷数は正しく見積もれません。
4. 「ラインバランス」とボトルネック把握
最も遅い工程(ボトルネック)が全体能力を左右するため、ラインのどこが“詰まりやすい”かを把握し、その能力で全体を算定します。
5. 「段取り時間・切替損」
多品種少量・頻繁な段取り替えがある場合は段取り時間を考慮して、1日稼働のうち生産に充てられる純粋な時間を再算定します。
6. 「ヒューマンファクター」「設備トラブル頻度」
従業員や設備による突発停止や習熟度の違い、故障リスクも現実には考慮が必要です。
シミュレーションや過去の故障記録も参考にしましょう。
公式化できる生産能力計算の例
よく使われる公式を例示します。
【日産数】=(稼働可能時間-段取り時間)÷ 標準サイクルタイム × 良品率
例)
・1日稼働可能時間:420分
・段取り時間合計:40分
・標準サイクルタイム:1個あたり2分
・良品率:98%
計算例:(420-40)÷2 ×0.98=186個
安全率を加味して、実際にはこれから5~10%ほど減らして運用するのが現場流です。
アナログ現場でありがちな「落し穴」と改善手法
昨今でもアナログ体質が根強く残る製造業の現場では、
・標準作業時間が現場ごとに違う
・現場のカンと勢いで“増産”が決まる
・ボトルネックの工程が把握できていない
・部品供給の遅れやロスが考慮されていない
といった落し穴が散見されます。
これらを防ぐためには、IT化や自動化に頼るだけでなく、現場と生産管理・営業・バイヤーの“対話”が大切です。
従来の「現場のプロ」と「管理側」の橋渡し役となる“調整役”の視点が不可欠です。
現場データの標準化と見える化の実践ポイント
・各工程ごとの標準サイクルタイムを定期的に計測・更新
・停止・トラブル履歴や段取り・リードタイムの「標準値」を文書化
・MES(製造実行システム)や電子日報で進捗をリアルタイムで記録
・簡単なエクセル集計やホワイトボードでも、必ず“最新値”を使用
デジタルシステムを一気に導入できない現場でも、まずはExcelや帳票、進捗ボードなどですぐに始められる見える化から始めましょう。
バイヤー目線で重視する“生産キャパ”の透明性
バイヤーがサプライヤーに求めるのは、単なる数字の大きさではありません。
・根拠あるキャパシティ
・季節や繁忙期の波動
・急な仕様変更や短納期への備え
・品質維持やトラブル時の対応力
これらをプレゼン資料として「見える化」し、対話によって共有できているサプライヤーは、選定・継続の上で大きな信頼を得ています。
逆に、「昔からこのラインは強いから」といった根拠のないアピールだけでは、新規案件の獲得は難しい時代となっています。
サプライヤーがバイヤーの期待に応えるための考え方
サプライヤーとしては、自社の生産能力を“結果論”ではなく“戦略的資産”として捉えることがポイントです。
そのためには、
・本当に得意な製品群、不得意なスペックへの対応力
・異常時(省人化や自動化していても発生しがちなトラブル)のシミュレーション
・カンバン方式など部品供給システムとの連携
・現場スタッフの技術力、再教育・スキルマップの開示
・自社の生産キャパを定量的に示す“実績ベース”の実例
を積極的にバイヤー側へ提供・共有しましょう。
これは交渉力の向上だけでなく、「現場を守るため」の防衛策ともなります。
生産能力計算で「新しい地平線」を切り開くには
既存の生産能力=過去の最大値や作業者の勘、そういった“昭和から続く数字”に頼るだけでは、応用力やアジリティは高まりません。
今後は、
・IoTデータを活用した実績ベースのライン能力リアルタイム可視化
・AIを活用したトラブル時の自動シミュレーション
・リモートから全生産拠点のキャパシティ状況をダッシュボードで可視化
・現場力×管理技術×データドリブンの三位一体
こうしたラテラルシンキング(水平思考)を駆使して、「想定外」にも強い生産能力計算への変革が必要です。
これからの製造業では、現場の持つ“機動力”とデータの“正確性”を両輪で回していく知見こそが大きな武器となります。
まとめ:生産能力の「見える化」と「共有」が製造現場を変える
OEM生産には多くの変数が絡みますが、“正確な生産能力計算”こそが現場の信頼と発展の土台です。
バイヤー、サプライヤー、現場スタッフそれぞれが「本当のキャパシティ」を理解し合い、根拠ある数字に基づく対話を重ねることで、納期遅延・品質不良・ムリムダの芽を未然に摘むことができます。
今後はアナログからデジタル、経験から論理、そして“現場力×情報力”の融合を目指しましょう。
本記事がOEM生産のみならず、今後の基幹産業を担う皆さまの現場改善と進化を後押しすることを願っています。
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