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納期遵守率が低い仕入先への改善要求を通しづらい状況の打開策

目次
はじめに
製造業における競争力の源は、安定したサプライチェーンと高い納期遵守率にあります。
しかし、現場ではしばしば納期遵守率が低い仕入先に対し、改善要求を出しにくい、または思ったような効果が得られないという壁にぶつかります。
なぜこのような状況に陥るのか、そしてアナログな体質が残る業界特有の課題や、現場で実践できる打開策について、長年の”昭和型”調達現場を経験した目線で徹底解説します。
納期遵守率が低い仕入先がもたらす“本当の痛み”
製造現場で納期遵守率が低いサプライヤーを抱えることは、実は単なる納期遅れによるラインストップや在庫の不均衡以上の深刻なリスクにつながります。
たとえば以下のような悪循環が生まれます。
生産計画の混乱と顧客への信頼低下
部品が揃わなければ、当然ながら生産計画は乱れます。
そのため、生産リードタイムを読みにくくなり、最終的に自社製品の納期遅延につながります。
これは顧客の信頼失墜だけでなく、社内の稼働率低下や業績悪化も招きます。
余剰在庫・緊急輸送コストの増加
納期遅延が常態化すると、「万一」に備えた余剰在庫が増え、在庫回転率が悪化します。
さらに、緊急便や特別手配によるコスト増、調達担当者や生産現場の精神的ストレスの増幅が無視できない負担としてのしかかります。
なぜ改善要求を「通しにくい」のか
多くの購買・調達担当者が悩むのは「サプライヤー改善要求が通らない」ことです。
ここにはシステム的、文化的、構造的な問題が絡み合っています。
アナログな関係性の呪縛
古くからの取引先であり、強く出られない。
これは昭和型メーカーによく見られる、義理と人情、あるいは「貸し借り」感覚が残る調達現場の特徴です。
本音を言えば切り替えたいが、上層部や関連部署の”しがらみ”により是正要求しづらいこともしばしばです。
過度な相互依存と情報の属人化
業界で長年築かれてきた相互依存関係により、サプライヤー側も「どうせ急には切られない」という安心感を抱きがちです。
担当者間だけで話が進み、データに基づく説明や改善計画が不足してしまい、感情論に終始して終わるのが現実です。
“数値基準”と“現場感覚”のギャップ
管理指標として納期遵守率が掲げられていても、「だいたい揃っていればOK」「致命傷にならなければ目をつぶる」といった、現場特有の暗黙値が判断を鈍らせます。
指標遵守のインセンティブが明確でない職場も多く、全体最適よりも部分最適が優先されやすい傾向もあります。
現場で実践する“通る”改善要求アプローチ
では、このような状況を打破する具体的な戦術はどのようなものか。
ラテラルシンキングで一歩踏み込んだ改善要求の打ち出し方を解説します。
数値化による“納得”の土壌づくり
感情論や経験則だけでなく、「過去1年間の納期遵守率」「納期遅延発生理由の定量分析」「遅延が生産現場や顧客に及ぼした影響」をデータで可視化します。
例えば、「平均83%の納期遵守率が残業・緊急便対応で○○万円のコスト増を招いている」ことをグラフ化。
個別事例(どの製品で、どのラインに何時間の影響があったか)も交えてストーリーを作り、関係者にインパクトを与えます。
“伴走型”コミュニケーションで共創を促す
単に「改善してほしい」と突きつけるのではなく、「どんな原因で遅れが起きているか、一緒に分析・対策しませんか」というスタンスで臨むと、サプライヤーの態度は柔軟になります。
現地現物の活動、4M(人・機械・材料・方法)の観点などを、現場リーダーや生産技術者も巻き込んで徹底的に洗い出し、相手工場のボトルネックに寄り添います。
外からの“要求”ではなく、“チームワーク”の感覚が醸成されれば、アクションプランも実効性が高まります。
KPI連動・インセンティブ設計
改善活動が一定期間継続した場合に、実績を正当に評価し、継続取引や次案件配分に反映させる約束事を設けます。
また、逆に未改善で重大な納期問題が続いた場合は、減点ルールや評価ダウン、場合によっては他社へのベンチマーク切り替えも辞さない、という「明確なルール化」が有効です。
この仕組みを社内外にオープンにして、情緒的な誤解を最小限にしましょう。
“選択肢の確保”を常に意識する
仕入先改善活動の裏で、他のサプライヤーやモジュール切り替えなど、実際にセカンドソース・サードソースが稼働できるメリット・コストも試算しておきます。
「この取引先でしかできない」状態からの脱却が取引力・交渉力アップのカギです。
現実的に簡単ではないですが、3年単位のロードマップで第二仕入先の育成にも着手し、リスク分散体制を整えておくと改善要求の説得力が段違いに強まります。
昭和型調達が抱える“変化できない”問題意識
多くの中堅メーカー、特にアナログ文化が色濃く残る工場には、「変化はリスク」「これが当たり前」という心理的ハードルが根付いています。
しかし、時代はグローバルサプライチェーンへの再編や、DX推進、ESG要素の重視に急激にシフトしています。
今こそ「なぜ、変化できないのか」「本当に動かざるを得ないのはどの状況か」を素直に議論する時期です。
現場で求められるのは、単なる仕入先たたきではなく、“ともに勝ち残る”ための現実的な共創モデルへの転換です。
アナログ感情や従来慣習の中から、「データドリブン×現場密着」の新たな調達購買スタンスを創造できれば、納期遵守率の改善要求も“お互いの成長”につながるはずです。
バイヤー・サプライヤー・現場関係者への提言
納期遵守率改善というテーマは、単に調達部門の問題にとどまりません。
生産管理・品質管理・設計・営業など、多岐にわたる現場全体の協調が必要です。
バイヤーは「現場感覚」と「数値分析力」の両輪で戦略を描き、サプライヤーも“やらされ感”から“選ばれるサプライヤー”への意識改革を。
現場の第一線で奮闘する方々こそ、多角的な情報に基づき、新たなチャレンジを起点にしてほしいと切に願います。
まとめ
納期遵守率が低い仕入先への改善要求の打開には、昭和から続く“惰性”や“しがらみ”を乗り越えるための、根拠ある数値化・協調型の改善施策・選択肢の本気確保が不可欠です。
本記事で紹介したアプローチをきっかけに、ものづくり現場から日本の製造業の新たな進化が始まることを期待します。
一人ひとりが当事者意識を持ち、現場と全体を見通したラテラルな視点で、着実に“通る改善要求・選ばれるものづくり”を実現していきましょう。
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