投稿日:2025年11月25日

OEMトレーナーで重視すべき“袖口テンション”と縫製トルクの調整方法

はじめに:OEMトレーナーの現場に潜む課題

OEM(Original Equipment Manufacturer)として生産されるトレーナー(スウェットシャツ)は、アパレル製造現場で最も頻繁に求められるアイテムのひとつです。

しかし、一見シンプルに見えるこの製品においても、「袖口テンション(リブの締め具合)」や「縫製トルク(糸の締め付け強度)」といった部分が外観・着心地・コスト・耐久性を大きく左右します。

特に日本の製造現場では、昭和の感覚に基づく属人的な“勘”が幅を利かせてきました。

しかし、グローバル競争やコスト競争の激化、異業種からのIT化の波が押し寄せているいま、OEMに携わるならば、現場の根本を見直した精度・再現性・効率性を追求する必要があります。

OEMバイヤー志望者、サプライヤー側の担当者、そして現場の技術者が「袖口テンションと縫製トルクの調整」をどのように捉え直すべきか。

深く掘り下げていきます。

袖口テンションがブランド価値を左右する理由

なぜ袖口テンションが重視されるのか

トレーナーの袖口には、ほぼ必ず伸縮性の高いリブ(編みゴム)が使われています。

この「締め付け強度=テンション」こそが、その製品の印象に直結します。

例えばテンションが強すぎると、手首が締め付けられ不快感が生まれます。

逆に弱すぎれば、袖がだらしなく下がったり、耐久性が低下したりします。

実際にOEMバイヤーが工場へ依頼する際、「某有名ブランドの“あの感じ”で」と言われる理由の一つが、この袖口テンションの絶妙なバランスにあります。

分析:サプライヤーが対応に失敗しやすいポイント

多くの工場では、リブの「長さ×本体袖口周」の割り合いをざっくり決めて裁断します。

しかし、素材のロット差や季節の湿度などで伸縮率は大きくぶれます。

また、ミシン掛けや人の“クセ”で想定通りに仕上がらないリスクも存在します。

このブレが残ったまま出荷され、「バイヤーがサンプルは良かったのに量産は…」と品質トラブルになるのは昭和から続く現場あるあるでしょう。

袖口テンション調整の実践的アプローチ

データ活用によるテンションコントロール

まずリブ素材ごとの「伸び率」を定量化します。

5cm幅をストレッチして20cmまで伸びるなら、伸長率300%です。

このデータに基づき、各製品サイズごとにリブ長さを設計します。

さらに出来上がった袖口の周囲を実測し、「計画」vs「実測」のギャップを可視化。

ベテラン技術者の勘よりも、客観的なデータで調整する体制を築くことが求められます。

テンション計測ツールの活用と導入障壁

最近では引張式テンションゲージなど現場向けの簡易計測ツールが登場しています。

仕上がり袖口を固定幅で拡張し、かかった力(ニュートン値)を数値化するイメージです。

「何ニュートン以下はNG」など現場基準を明文化できれば、誰でも品質を安定させやすくなります。

ただし、老舗工場ほど「昔からこうやってきた」のマインドが根強く、設備投資費用も導入障壁になります。

ここは最大のラテラルシンキングを用いて、“最小の投資”で現場改革を実現する知恵も求められる分野です。

縫製トルクが及ぼす影響と調整の考え方

縫製トルク=布地と糸の絶妙な力加減

縫製トルクとは、縫い合わせの際に糸がどれだけ強く引き締められているかを表す概念です。

トルクが強すぎれば、リブ部分が縮んでギャザーが発生したり、ミシン目が布地を引きつれさせてしまいます。

逆にトルクが弱いと、洗濯時に縫い目が開いたり、ほどけや破れの原因になりかねません。

また、縫製糸の種類や太さ、ミシンのタイプ・調整状況によっても最適値が変動します。

現場が陥りがちな“トルク調整”の落とし穴

アパレルOEMでよく見られるのが「機械任せ」でトルク調節の勘所が不明確なケースです。

ベテラン縫製工が“手癖”で調整している現場も多く、「Aさんの作業はOKだけどBさんだとNGだった」とバラつきが生じやすくなります。

サプライヤー側は「ミシンの標準セッティングだから大丈夫」と説明しがちですが、バイヤーにとってはブランドの一貫した着心地・見た目が何より重要です。

縫製トルク調整の最新テクニックと実践フロー

トルクの数値化と標準化をすすめる

現場で有効なのが「テンションボビンゲージ」や「締付け試験機」を使った縫製力の数値化です。

サンプル縫製を行い、一定幅(例えば10cm)のリブ部分を引っ張ったときの変位量や必要力を測定します。

理想的なトルク値を決定し、その値で各ミシンのテンションを調整。

試験縫製と本番とで「再現率」を比較し、問題があれば先に原因を特定して対応する——。

このループを「見える化」できれば、OEMの量産でも品質安定化に直結します。

熟練工の“勘と経験”をデジタルに置き換える

AIやIoTの導入は日本の製造業では進んでいるとは言えませんが、最低限「作業シート」に数値基準を明記する、各ミシンごとにロット管理表を作成するといった“仕組み化”はすぐにでも始められます。

近年は「ウェアラブルカメラ」で縫製手順を録画し、新人指導や現場検証に活かす企業も増えています。

トルク値と動画記録、作業時間、出来上がりの測定値——これらをデータベース化することで、熟練工のノウハウを定量・再現できる時代になりつつあります。

OEMバイヤー目線の“袖口テンション・縫製トルク”チェックリスト

最適化のための現場ヒアリング事項

OEMバイヤーやサプライヤーが工場へ指示・交渉する前に確認しておきたい項目です。

  • 袖口リブの「伸び率」具体値と、設計ロジックは明示されているか
  • テンション・トルクが“数値基準”で管理・記録されているか
  • サンプルと量産サイクルで値のブレはどの程度か
  • 縫製スタッフの教育手順・作業標準書は整備されているか
  • 品質検査の抜取方法とNG基準は現場で実施可能か

このチェックリストを基に会話を進めれば、「感覚」でごまかされることなく、具体的な品質・再現性の打ち合わせが可能になるはずです。

昭和的職人文化に頼らない現代型品質保証の必要性

なぜ現場改革が不可欠なのか

「うちのベテランAさんに任せれば大丈夫」「昔からこの方法でクレームはほとんどなかった」——いまだに多くの工場で聞かれる言葉です。

しかし、それは“たまたま”ベテランの技術が保てているだけ。

人が変われば品質は必ずばらつきます。

また、今日の消費者はSNSでわずかなクレームを拡散し、ブランドイメージをあっという間に左右します。

品質安定化と再現力を高めなければ、小ロット・多品種化やサステナ対応が必須のいま競争力を維持できません。

デジタル基準×現場巻き込みのハイブリッド戦略

現場に数値を持ち込むと、「我流が否定された」と反発を生むこともあります。

そこで重要なのは、“今のやり方”を否定するのではなく、「Aさんのノウハウを全員で再現できる」ことの価値を共有することです。

生産性・品質の両方が向上すれば、現場も取引先も、ひいてはブランド自体も「より高い水準」を目指せるようになります。

まとめ:OEMトレーナーの品質勝負は“見えない工夫”で決まる

OEMトレーナーで重視すべき「袖口テンション」「縫製トルク」は、表には出にくい地味な技術ですが、製品の価値そのものを決める最重要ファクターです。

バイヤー・生産現場・サプライヤーがそれぞれの立場から現場改革に踏み出す時代。

データ活用、作業標準化、仕組み作りを地道に積み上げ、昭和の勘と最新の数値管理を融合させていきましょう。

それが製造業として長期的な成長とブランドへの信頼につながります。

現場目線からの“ひと手間の工夫”こそが、競争力を生み出す最大の武器となるはずです。

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