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OEM依頼でやりがちな“最低ロットの誤解”の避け方

目次
OEM依頼でやりがちな“最低ロットの誤解”の避け方
はじめに――なぜ「最低ロット」問題が繰り返されるのか
製造業におけるOEM(Original Equipment Manufacturer)依頼は、企業が自社ブランドの商品を他社に製造してもらう際に避けて通れない重要プロセスです。
このとき、新規バイヤーや事業企画担当者、あるいはサプライヤー側の営業担当が直面しやすいのが「最低ロット」の理解と交渉にまつわるトラブルです。
昭和の時代から続く「一度に大量生産するのが基本」という製造業独自の商習慣や、デジタル化が進まないアナログな現場の空気は、今もなおOEM契約の現場に色濃く残っています。
この記事では、「なぜ最低ロットで誤解が起きるのか」「どこに落とし穴があるか」を現場目線で分解し、バイヤー・サプライヤー双方がWin-Winの関係を築くための実践的なヒントを共有します。
最低ロットとは何か――現場のリアルな定義
最低ロット=製造の限界ではない
「最低ロット」とは、サプライヤーが「この数量未満では新規生産を受けません」と設定した、製造受注の最小単位です。
しかし誤解されがちなポイントは、これが技術的・物理的な“絶対限界”数量ではなく、主に経済合理性と生産効率、商習慣など複数の要素から決まっているということです。
例えば、組立工場では人手のシフト割当や工程内での段取り替えコストを最小化するために、ある部品Aは「一度に500個までであれば割安に作れる、でも50個ならコストが跳ね上がる」となります。
また、ある化学製品なら「反応タンク一杯が100kgだから、100kg単位未満はロスが多く割高になる」といった物理的制約もありえます。
でも、実際の交渉では「利益を確保するには1000個」とする会社も多く、そこには過去の取引慣習や、“最低ライン”を高めに言っておく値引き交渉前提の心理も混じっています。
なぜ数が合わない?バイヤーの希望とサプライヤー現場のギャップ
バイヤー側が「テスト販売のために100個だけほしい」と要望しても、サプライヤーから「最低ロットは1000個からです」と門前払いされるケースは後を絶ちません。
その背景には、
・量産ラインの立ち上げコストの回収
・受注ミスリスクのバッファ
・見積もり工数とその損益分岐点
など、現場事情が複雑に絡んでいます。
一方で、サプライヤーが最初にここをしっかり説明しないために、「誠意がない」「柔軟性がない」と誤解され、商談自体が破談になってしまうこともしばしばです。
よくある“最低ロットの誤解”と現場の失敗例
バイヤーが陥りがちな「とりあえず見積もり」の落とし穴
新たにOEM商品を企画するバイヤーがありがちな失敗が、「まずは小ロットで様子見できるはずだ」と安易に考え、サプライヤーに「できるだけ小さなロットで」と見積り依頼を出すケースです。
サプライヤーは「赤字にならない数量は最低この規模」と考え見積もり回答。
「思ったより価格が高い!最低ロットってこの程度でできるんじゃないの?」とバイヤー側が納得しない。
現場では次のようなトラブルがよく起こります。
・小ロット見積もり依頼が殺到し、現場の手間だけが増加 ⇒ 結局ほとんど成約しない
・小ロットで生産して赤字に。次回以降の取引を断る羽目に
・「100個だけテスト」と言いながら、追加生産では単価アップを受け入れてもらえない
これは、最低ロット=物理限界でなく「利益が生まれる最小単位」という認識がバイヤー側に不足していることに起因しています。
サプライヤーも油断できない!「交渉余地ゼロ」と勘違いするワナ
サプライヤー側も、「ウチのルールは500個から」とマニュアル通り突っぱねると、せっかく新規バイヤーがついても逃してしまう場合があります。
とくに異業種バイヤーやスタートアップからのOEM依頼では、「まず100個だけ作って市場テストしたい」と考えるのが一般的です。
こうしたニーズの変化を読み取れずに機会を逸し、気づけば他社OEMにシェアを奪われる、という事例も現実に増えています。
最低ロット問題を回避する現場目線の実践ポイント
1.「なぜその数量なのか?」を数値根拠とともに伝える
サプライヤーは最低ロットを「既存ラインの都合」「過去の慣習」「損益分岐点」などの論理で設定しています。
ここをバイヤーに明確に説明できないと、単なる形式的な押し付けに見られかねません。
現場にとって一番説得力があるのは、「なぜその数ならできて、なぜそれ以下だと割増になるのか」を、段取りコスト・原料ロス・梱包単位など具体的な数値とともに説明することです。
例えば――
・「この機械の設定替えに1.5時間必要で、人件費+材料廃棄で約3万円かかる」
・「部品Aは1ケース1000個入りで仕入れており、半端な数量だと保管やピッキング手間で別途費用がかかる」
――といった説明ができれば、バイヤーも納得しやすいでしょう。
2.バイヤーは「最初から数量相談」を!「見込み」「成長プラン」も示す
バイヤーにとって重要なのは、「最小ロットだけ欲しい」の一点張りではなく、以下のような姿勢です。
・なぜ小ロットから始めたいのか「上市前の市場テスト」「クラウドファンディング先行販売」など目的を正直に説明
・初回●個、軌道に乗れば年内に累計●個を見込む、と成長プランを盛り込む
これにより、サプライヤーも「先行投資」として赤字ギリギリの小ロットを受ける判断材料が生まれます。
3.オプション提案でWin-Winの着地点を探る
サプライヤーは、ただ「できません」と突っぱねるのではなく、以下の工夫で折衷案を考えましょう。
・初回ロットだけ「テスト用価格(割高)」を提示し、次回以降は数量が増えれば価格ダウンを約束
・「小ロットは混流生産時のみ可能」「在庫分からの提供なら小口対応可」と条件を緩和する
・梱包・包装等の簡易化を提案しコストをダウン
逆にバイヤーも、「ラベルやパッケージは自社で貼る」「検品や組立の一部を自社で担う」など、現場負荷を下げる協力策を考える余地があります。
昭和流からの脱却――アナログ業界における現代的発想
「つくると売る」の分業意識に気づく
デジタル化の進んだ業界では、「つくる人」と「売る人」の分業化が進み、両者が率直に情報共有しながら、お互いの利益を見つけるのが普通です。
しかし、(特に中小の)日本の製造業は、昭和以来の「一度に大量に作って効率よく納める」の原点思考が根強く残っています。
「うちはこのやり方しかできない」と言い切るのは、危険な保守主義です。
今や、クラウドファンディングで資金調達→小口販売→需要を見て拡大、というパターンが主流になりつつあります。
OEM依頼にも「最初は小さく、うまくいけば大きく、失敗リスクは最小に」の柔軟性が求められる時代になりました。
サプライチェーン全体のムダ・リスクを「見える化」する
最低ロットは、製品毎・工程毎にベストプラクティスが違います。
「なぜ工場はこの単位からしか受けられないのか」「設備稼働率や人員配置、材料ロスはどう最適化できるか」、サプライヤー側も自社の“なぜ”を棚卸しして公開できる体制をつくっておくべきです。
バイヤーは「安く仕入れる」だけでなく、サプライヤー現場のノウハウと悩みを共有し、お互いリスクを分散する戦略パートナーの発想が大切です。
まとめ――“数量ありき”から“付加価値と成長ストーリー”の交渉へ
OEM依頼における「最低ロットの誤解」は、ただルールの問題だけでなく、現場のコスト構造・心理的バリア・時代遅れの商習慣など、より深い要素が隠れています。
バイヤーは
・なぜその数量が必要か、どう成長させるつもりかを明確化し、サプライヤーと共有する
サプライヤーは
・なぜそのロット未満だと難しいのか、現場レベルの数値とともにわかりやすく説明し、代替案を提示する
このスタンスが、昭和的な“数量第一”から、令和の“成長ストーリー重視”OEM交渉への大転換点となるはずです。
製造業現場の知恵を活かし、バイヤーとサプライヤーがともに新たな価値を生み出す交渉術で、次代の産業をともに築いていきましょう。
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