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B2B/B2C双方に対応する需要予測モデルを構築する方法

目次
はじめに
需要予測は、製造業をはじめとした多くの業界で競争力の源泉となっています。
近年、デジタル化やグローバル化が進む中、B2B(企業間取引)とB2C(企業と消費者間取引)の両軸での製品供給やサービス提供が増加しています。
多くの企業や工場が、昭和時代から続く勘や経験といったアナログな手法に依存しがちですが、現代のビジネス環境で生き残るには、より高度かつ柔軟な需要予測モデルの構築が不可欠です。
この記事では、B2B/B2Cの両方に対応できる需要予測モデルの実践的な構築手法について、長年の現場経験をもとに解説します。
B2BとB2Cの需要予測–根本的な違いとは
B2B需要予測の特徴
B2Bは取引対象が企業となるため、オーダーベースでの生産が中心になりがちです。
取引ボリュームが大きく、契約期間も長期に及ぶ傾向があります。
また、受注生産やカスタマイズの対応など、個別対応が求められることが多いのが特徴です。
B2Bでは過去の営業実績やクライアントとのコミットメント状況、マーケットトレンドなど、限定的な情報ソースを基にした予測となるため、営業部門や生産管理・調達部門の密な連携がカギとなります。
B2C需要予測の特徴
一方B2Cでは、不特定多数の一般消費者が対象です。
季節性や流行、キャンペーン効果といった多様な要素が需要変動に影響します。
そのため、ポイントオブセールス(POS)データや各種SNS分析、市場リサーチなど幅広いデータを活用する必要があります。
B2B/B2Cハイブリッドの時代背景
DX化が進み、ECやダイレクトセールス、サブスクリプションサービスなど新たな販売チャネルも登場しました。
B2BとB2C、どちらか一方に特化するだけでなく、両者を組み合わせたハイブリッドビジネスモデルも増えています。
例えば大手部品メーカーが大企業と取引しつつ、ネットを通じて一般顧客に補修パーツを直販するケースなどです。
そのため今後は、異なる需要特性を体系的に捉えられる需要予測モデルが求められています。
需要予測モデル構築の基本ステップ
1. データの収集と整備
まずは信頼性の高いデータを十分に確保することが必須です。
B2Bなら受注情報や納期進捗、顧客からの問い合わせ履歴など。
B2CならPOSデータやWeb上の購買行動ログが該当します。
昭和型の「帳簿管理」だけでなく、ERPや各種生産管理システム、SFA(営業支援)、CRM(顧客管理)システムなどと連携し、データの一元化とクレンジング(精度の高い状態への整理)が成果を左右します。
2. 特徴量の抽出と可視化
単純な販売実績だけではなく、「どの顧客層が」「いつ」「どの製品を」「どのタイミングで求めるのか」といった消費行動のパターンを抽出しましょう。
現場ではエクセルにまとめるスタイルが根強いですが、BIツールやPythonなどを活用し、時系列分析や回帰分析、クラスタリング等でビジュアルに落とし込むことが重要です。
3. 予測モデルの選定と組み合わせ
B2BとB2Cでは適したモデルが異なります。
B2B向けにはプロモーションカレンダーや契約更改時期、供給リードタイムを考慮した「定量+定性」ハイブリッド型モデル。
B2C向けにはAIや機械学習を使った「時系列+プロモーション要因」分析などが有効です。
両者を統合する場合も、複数モデル(アンサンブル)を組み合わせ業界特性や各部門のナレッジを織り込むことが現実的です。
4. 業務プロセスと連動させる
優れたモデルを作っても、現場の業務や意思決定プロセスと乖離していては実用を妨げます。
モデルの結果をもとに生産・調達計画へ落とし込み易い業務フロー構築、バイヤーとサプライヤーの協調的な情報共有体制、DX時代に適したダッシュボードの導入などもセットで進めましょう。
B2B/B2C双方に効く実践的ノウハウ
需要の「質」と「量」に注目する
B2Bでは、大口取引や突然の仕様変更、急な納期短縮(いわゆる緊急対応)が日常茶飯事です。
B2Cでは逆に、急激な売上の上下や予測しづらい流行の波があります。
重要なのは「量」だけでなく、「質」の変化を見極めること。
例えばリピートオーダー比率や契約解除の予兆、キャンペーン結果が一時的か持続的か、といった点もモデルに組み込むべきです。
昭和的な「勘」を否定しない
40代以上の営業や生産管理担当の中には、「自分の肌感」が一番正確だという方も少なくありません。
しかし、過去の経験に基づく勘や暗黙知は、実は予測モデルの“チューニング”材料として極めて有効です。
現場ベテランのインサイト(インタビューやワークショップ形式でのヒアリング結果など)を意識的に取り込み、数値データ以上の知識資産として活用しましょう。
調達・バイヤー視点の需要予測
バイヤーや購買担当者は、取引先企業から常に正確な需要予測を求められます。
サプライヤー側としては、バイヤーがどのタイミングで、どんな基準で意思決定するかを把握しておくことが競争優位に直結します。
例えば大手自動車部品会社の定期発注には、バイヤーの内部調整やOEM先の在庫政策、為替リスクなど多様な要因が影響しています。
バイヤーが持つ「先読み」スキルや、彼らが参照する需要予測のビジネス要件を定期的にヒアリングし、自社モデルに連携させることが肝要です。
サプライヤーの現場知恵との相互補完
サプライヤー側では、「たぶん来月あたり追加注文がくる」といった、これまでの取引関係をもとにした“現場予測力”が生きています。
顧客からの急な手配依頼が来ても迅速に応じられるよう、定期的な顧客コミュニケーションや生産リードタイムの短縮、小回りが利く生産体制の整備が重要です。
また、バイヤーの見通しと整合性を持たせるための定例ミーティングや情報交換も効果的です。
需要予測DX時代の具体的施策
IoT・AI活用によるデータ精度向上
各種センターや工場内設備からリアルタイムでデータを収集するIoT機器の導入が進んでいます。
生産実績や在庫状況、仕掛かり品の動きなど、これまで把握しきれなかった“現場の生”データをダイレクトに分析に活用できます。
また、AIによる異常値検知や需要変動の予兆分析も徐々に普及しています。
サプライチェーン全体での需要予測共有
サプライチェーン上流から下流まで、各プレーヤーが自分だけの需要予測に拘泥していると、いわゆる「ブルウィップ効果」により在庫や生産計画のブレ幅が大きくなります。
最近は、主要取引先とデータを共有して連携予測を行い、業界全体の最適化を目指す動き(CPFR:Collaborative Planning, Forecasting and Replenishment)も加速しています。
昭和的な「部門エゴ」からの脱却が急務です。
リスクマネジメントと柔軟性の付与
コロナ禍や世界的な部材不足など、不確実性が増した現代社会では、「外れにくい」予測と同時に「外れた場合の柔軟な対応力」が同じくらい重要となりました。
安全在庫やサードパーティ調達ルートの確保、緊急生産ラインのトレーニングなど、製造現場ならではの現実解も忘れてはなりません。
まとめ–これからの需要予測モデルの在り方
B2B/B2Cどちらにも対応する需要予測モデルを構築するには、データの網羅性と精度、現場感覚との融合、サプライチェーン全体の連携が不可欠です。
昭和型の職人技や勘にも敬意を払いながら、AI・IoTによるデジタル化と、人・組織間の信頼関係を軸に業務改革を進めることが今後の製造業の競争力を飛躍的に高める鍵となります。
バイヤーを目指す方、サプライヤーの立場でバイヤーの考えを知りたい方、そして日々現場で奮闘されている皆さんには、それぞれの視点から「売れる・作れる・買える」未来を一緒に切り拓いていただきたいと思います。
需要予測モデルの進化が、日本の製造業の更なる発展に直結することを心から願っています。
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