投稿日:2025年10月23日

全国営業で信頼を築くためのオンラインレビューと口コミ活用法

はじめに:製造業における「信頼構築」の重要性

製造業の現場で20年以上にわたり調達購買や生産管理に携わってきた経験から断言しますが、この業界で最も重要なのは「信頼」です。

技術力や価格競争力ももちろん大切ですが、最終的に取引の決め手となるのは、組織間や人と人の間に生じる信頼関係に他なりません。

特に昨今は営業活動も大きく様変わりし、昭和時代の足で稼ぐ営業だけではなく、オンラインでの評価や口コミがクローズアップされています。

本記事では、全国を対象とした営業活動において「オンラインレビュー」と「口コミ」をいかに活用し、信頼構築につなげていくかを、現場目線で具体的に解説します。

元アナログ現場の管理職だからこそ分かる、変わりゆく業界のなかで成果を上げるための実践的なアプローチを、バイヤー志望者やサプライヤーにも役立つ視点でお届けします。

昭和型“御用聞き営業”の強さと限界

御用聞き営業がもたらした安心感

日本の製造業、とりわけ地方の部品メーカーや中小企業では長らく「御用聞き営業」が中心でした。

これは担当営業が頻繁に訪問し、現場で顔を合わせることで、顧客に細やかに寄り添うスタイルです。

“あの人に頼れば安心”“一度お願いしてトラブルがなかった”という積み重ねが、取引先の担当者や現場からも厚い信頼を獲得してきました。

何十年も続くルート営業や対面の密なコミュニケーションは、確かに強力な武器でした。

だが、それだけでは“全国規模”なら限界がある

一方で、デジタルシフトや世代交代が進み、「リアルで会えない顧客」や「遠方の新規顧客」もターゲットとしなければ生き残れません。

全国レベル、さらにはグローバル規模で信頼を得るには、対面以上に“客観的な安心材料”が求められます。

そこで注目されるのが、インターネット上のオンラインレビューや口コミです。

これらは従来の“顔の見える信頼”に代わる、透明性と客観性を持った新しい「社会的証明」と言えます。

オンラインレビューと口コミの強みを再認識しよう

なぜレビューや口コミが信頼構築に効くのか

営業や購買の現場で、「ウチの会社は真面目にやってます」「現場対応力には自信があります」と自ら語っても、お客様はかならずしも鵜呑みにはしません。

多くの取引先バイヤーは“失敗リスク”を恐れており、自社の業者選定ミスが責任問題となるケースも多々あります。

そのため、実際にその会社のサービスや製品を使った“第三者の声”——つまり、レビューや口コミが大きな判断材料になります。

業者選定をする立場からは「みんなが良いと言っているから」「同業で実績があるから」「他の地域でも評判がいい」という情報が何より安心材料になるのです。

BtoBビジネスでもレビュー活用は必須の時代

BtoCの世界ではAmazonや楽天のレビューが購買を左右するのは常識です。

一方で、産業向け部材、設備機器、システムインテグレーションといったBtoB業界でも、近年レビューサイトや専門ポータルが急速に立ち上がっています。

たとえば「イプロスものづくり」「比較ビズ」「メトリー」など、製造業特化型サイトでも、ユーザーや現場担当者からの口コミや評価が掲載されるようになりました。

また、Google マイビジネスやLinkedInの会社ページレビュー、取引実績の実名公表も“社会的証明”として機能する時代です。

製造業営業の現場でできる口コミ・レビュー活用術

自社の強みを“体験談”として投稿してもらう

まず最も効果的なのが、既存の取引先やユーザー企業に、自社サイトや専門メディアでレビューや体験談を投稿してもらうことです。

「実際にどんな課題があって、どう解決できたのか」「現場担当者が感じたメリット」「不具合や課題はどうリカバリーできたか」など、具体的な成功例や改善事例は、同業他社の“リアルな判断指標”になります。

とりわけ導入初期の不安払拭や、トラブル発生時の柔軟な対応力は、アナログな現場でも最新設備でも、高く評価されるポイントです。

レビュー依頼のタイミングと伝え方の工夫

ポイントは「良い評価をください」とストレートに依頼しないことです。

現場対応や納品が無事終わった後、「ご満足いただけた点や、改善してほしい点があればぜひお聞かせください」「ご意見をウェブなどで共有いただけると、より良い製品づくりに役立ちます」と、顧客の“貢献意欲”をうまく引き出すことが大切です。

工場長クラスや管理部長クラスへも「他の現場の方の役に立つ情報として協力してほしい」と伝えると、快く応じていただけるケースが多いのです。

件数より“質”。実名&現場写真が信頼感アップ

よくありがちなのが、レビューの「数」ばかりを追うことですが、それよりも「実名入り・顔写真入り」「現場の写真や作業風景つき」レビューの方が、はるかに信頼度が高いです。

BtoB営業では、現場責任者や生産技術担当者、品質管理責任者など、具体的な所属と役職が記載されている声ほど評価されます。

忙しい製造業現場でこそ、「レビューをひとつ書きたい」「写真提供だけでもしたい」と思わせるフォローアップ体制が重要です。

悪い口コミを“信頼性アップのチャンス”に変える方法

ネガティブレビューの透明性こそ本物の信頼に直結

どんなに優秀な企業でも、オンライン上では時折厳しい評価やネガティブな意見を書かれることも避けられません。

しかし、実は「ありのままの声を出す」ことこそ、逆に信頼アップの大チャンスです。

トラブルが発生した際、どのように対応したのか、自社はどんな企業姿勢で臨んだのかをきちんと記載することで、その企業の誠実さやクライシス対応力まで伝わります。

バイヤーや現場担当は「完璧な口コミ」よりも「正直で現場目線のフィードバック」を信頼のバロメーターにしています。

改善策・再発防止策を書くことで“共感”を呼ぶ

品質トラブルや納期遅延といったアクシデントがあった場合こそ、レビュー上でどう解決したか・再発防止策を実施したかを説明しましょう。

「納品トラブル時に○○という緊急対応があった」「納期遅延の理由と新たなスケジュール管理体制を共有」など、具体的なアクションは業界共通の悩みでもあり、全国営業で強い共感と評価を得るきっかけとなります。

口コミ・レビューを最大活用するための“仕掛け”を作る

自社の“ソーシャルプルーフ・エコシステム”化

より広く、かつ継続的にレビューや口コミを集めるには、自社ウェブサイトを拠点に、「成功事例インタビュー」や「ユーザー交流会」「オンライン座談会」を開催するのも効果的です。

このような“場づくり”が、顧客の「ファン化」を促し、SNSや業界SNS(LinkedInやイプロスなど)にも波及しやすくなります。

社内で「口コミ・レビュー推進チーム」を設け、営業だけでなく導入現場およびサポート部門もレビュー取得を意識することで、全社的なブランディング強化につながります。

技術情報や独自提案力も公開コンテンツ化

単なる「感想」の域を超え、自社の“ものづくり力”や“技術の裏付け”が分かるレビューやQ&Aコンテンツも重要です。

よくある質問や技術サポート内容、新技術へのチャレンジ実績などを記事化し、それに対する顧客のフィードバックも合わせて掲載する。

この「蓄積された評判」が、見込み顧客や新規バイヤーの第一印象を大きく左右します。

オンラインレビュー活用の際の注意点とリスク管理

なりすましレビューや不適切投稿への対策

オープンなレビューサイト利用時は、なりすましによる虚偽評価や、取引先ライバルからの不当な評価などもごく稀に見受けられます。

運営サイトごとに「本人確認」の仕組みがあるプラットフォーム選択や、投稿ポリシーを明確に記載することは必須です。

自社独自のフィードバックフォームや確認プロセスを設けた上で、悪質な内容は速やかに運営に通報・対応するなどのリスク管理も欠かせません。

個別案件の守秘義務・企業情報の扱い方

産業向けBtoBビジネスでは、製品仕様やサプライチェーンの中核に関わる情報には守秘義務が発生します。

レビュー公開時には、顧客企業名や個人名の明示について必ず了承を得てから、必要があれば伏せ字・イニシャル化を徹底しましょう。

また、協力してくれた顧客には「掲載前の内容確認」「公開掲載後のフィードバック」を忘れずに実施し、信頼構築のサイクルを守ることが肝心です。

まとめ:レビュー・口コミの時代に営業がすべきこと

全国営業における「信頼構築」は、もはや対面営業だけに頼るものではありません。

オンライン上でのレビューや口コミをうまく活用・蓄積していくことで、物理的距離を超えた「社会的証明力」となり、新規商談や既存顧客深耕の強い武器となります。

昭和型御用聞き営業の良さを残しつつも、令和の時代は“オープンで透明性ある評価”を積極的に取り入れることが、製造業界においても決定的な差別化を生みます。

「現場目線」のリアルな声、「バイヤー目線」で役立つ体験談、そして「サプライヤー独自の技術提案・解決策」も積極的に発信しましょう。

これからの時代、製造業で全国的な信頼獲得を目指すなら、オンラインレビューと口コミの“信頼エンジン”を本気で仕掛ける時です。

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