投稿日:2025年9月7日

B2C向けOEM商品で重視されるサステナブル素材の選び方

B2C向けOEM商品におけるサステナブル素材の重要性

B2C市場におけるOEM商品の開発では、持続可能性、すなわち「サステナブルであること」がかつてないほど重視されています。

これは消費者の意識変化やESG投資の拡大、大手小売業からの要請、各国の環境規制強化など、さまざまな要因が複合してOEMメーカーへ大きく影響を及ぼしているからです。

特に、グローバル市場で成長するためには「製品原料の選び方」と「その透明性の担保」が、企業競争力の根幹と言っても過言ではありません。

本記事では、現場で培った実践的な視点とともに、現代のB2C OEM商品で重視されるサステナブル素材の選び方について詳しく解説します。

なぜサステナブル素材がOEM商品で求められるのか

消費者意識と企業イメージ

近年、消費者は単に機能や価格で商品を選ぶのではなく、その「背景」を重視するようになっています。

製品がサステナブル素材で作られているかどうか、環境に配慮されているかを気にする層が年々増加しています。

特にZ世代やミレニアル世代の消費者は「この商品を買うことで社会的・環境的にポジティブな影響を及ぼしたい」という強いモチベーションを持っています。

そのため、B2C OEM商品を企画・提案する際には、クライアント企業から「サステナブル素材の採用」の強い要請を受けやすくなっています。

ブランド価値や企業イメージを高め、長期的な顧客獲得を目指すために、サステナブル素材の選択は避けて通れないトレンドとなっています。

国際的な基準と規制強化

欧州を中心としたGRS(グローバル・リサイクル・スタンダード)、FSC(森林管理協議会認証)、また日本国内におけるプラスチック資源循環促進法など、さまざまな国際的規制が強化されています。

ほんの数年前まで「リサイクル原料配合率◯%」や「バイオマス原料使用」などは一部の企業活動に留まっていましたが、今や標準化しつつあります。

これにより、OEMメーカーやサプライヤー側でも、B2C商品提案時に「サステナビリティ基準への適合」が欠かせない最低条件となってきました。

B2C OEM商品開発で重視したいサステナブル素材の主要カテゴリー

1.再生(リサイクル)素材の選定

再生PET(リサイクルペット)、リサイクルアルミ、再生紙など、リサイクル資源を原料とした素材の採用はB2C分野ではすでに一般化しています。

特にアパレル、家電、生活雑貨など幅広い分野でリサイクル原料への切り替えが進み、それがカタログやパッケージに明記されているケースも増えています。

注意したいのは、単に「リサイクル原料だから良い」ではなく、〈原材料の由来〉〈トレーサビリティ〉〈リサイクル過程での環境負荷低減〉など、「どこまで透明性を担保できるか」が重要視されている点です。

また、工場内での「クローズドループ・リサイクル(自社内リサイクル)」の仕組みを活用することで、より付加価値の高いOEM提案も可能となります。

2.バイオベース(生物由来)素材について

サトウキビ由来PE、トウモロコシ由来PLA、バイオマスナイロンなど、植物や動物などの再生可能資源を使用したバイオベース素材も注目を集めています。

しかし、ここでも「単純な置き換え」だけでなく、農業分野における持続可能な調達(RSPOやUSDA認証など)や廃棄時の生分解性、カーボンフットプリントの低減など、総合的なサステナブル価値が求められる時代です。

OEM開発者としては、「最終製品でのパフォーマンス」「量産コスト」「供給安定性」「ユーザーの訴求ポイント」など、従来素材と並行して多角的な検証が不可欠となります。

3.アップサイクル素材・廃棄物利用

工場廃材や食品産業の副産物、都市ゴミなどから新たな価値を生み出すアップサイクル素材も、B2C分野では飛躍的に拡大しています。

例えば、コーヒーかすを配合したプラスチック、魚の皮由来のレザー、廃タイヤから作られたガジェットケースなど、単なるリサイクルよりも「ストーリー性」と「独自性」に優れる点が注目されています。

OEM提案では、「素材の新規性」や「廃棄物の再利用による環境インパクト低減」を強く打ち出すことができ、ブランド側からも高く評価されやすいアプローチです。

4.トレーサビリティとサプライチェーンの透明性

どのようなサステナブル素材を選ぼうと、現代の顧客やブランドバイヤーが重要視するのは「その調達経路や出どころが明確か否か」です。

FSCやRSPOをはじめ、原材料の栽培・採取から、精製・加工、輸送、最終製品化にいたるまで、第三者が証明できる透明性が求められます。

ここが従来型の「単なるエコ素材」選定と根本的に異なる点であり、昭和からのアナログ体質が色濃く残る工場現場では大きなイノベーション課題となっています。

OEMメーカー・サプライヤーとしての現場実践のポイント

1.サステナビリティ推進は「現場起点」で進める

サステナブル素材導入を単なるバイヤーや顧客からの押し付けにせず、現場主導で取り組むことが長期的な成功のカギです。

具体的には、現場で出る廃材や余剰原料の再資源化、使用エネルギーの見直し、熟練工による品質見極めや歩留まり向上活動を徹底すること。

こうすることで「自社の強み」を活かしながら、バイヤーや最終消費者へ独自のサステナブルストーリーを発信できます。

2.「素材選定のベストパートナー」になるために

バイヤー(ブランド側)は、サプライヤーに対し「ただ指示をこなす」のではなく、サステナビリティのプロとして「提案し、ともに改善できるパートナー」を求めています。

そのためには、国内外の認証制度や最新素材の動向、リサイクルインフラの状況、顧客に刺さる訴求方法など、幅広い知見が必須です。

現場発の情報収集・仕入本人脈の構築・自社での試験導入・関係機関との連携など、「アナログとデジタルのハイブリッド」で価値創出を行いましょう。

3.サステナブル調達で躓きやすい「3つの落とし穴」

1. コスト増のみに目を向けて導入を躊躇する
サステナブル素材は一般的に初期コストが高くつきやすいですが、中長期的にはブランド価値・顧客獲得・市場優位性の観点で十分な見返りが期待できます。

2. 表面的な「サステナブル宣言」で終わる
単にバイオ素材を使った、リサイクル原料配合を増やしたと謳うだけでは、今の消費者やバイヤーには響きません。
「どこから・誰が・どうやって」を丁寧に伝えることが重要です。

3. 現場の納得感を醸成できていない
製造現場の一部、購買・品質管理部門だけが取り組み、社内で連携が取れていないと、すぐに形骸化します。
全員参加型の「見える化」と「成功体験」を作ることが大切です。

OEM開発段階での具体的アプローチ

1. 企画初期段階からの素材比較・データ共有

サステナブル素材は、従来品とは物性・コスト・入手性が異なることが一般的です。

そのため上流工程から「どの素材ならどんなメリットがあるのか」「どんなデメリットや課題があるのか」を詳細にデータ化し、設計段階で顧客と共有することがポイントです。

複数種のサステナブル素材サンプルや、物性比較表、カーボンフットプリント評価データを準備することで、設計部門や商品企画部門からの信頼度も劇的に向上します。

2. テスト・量産試作時点での丁寧なPDCA運用

サステナブル素材は、従来素材と比べ加工性や強度、耐久性が必ずしも同等とは限りません。

製造現場での「小ロットスケールでの実試作」「歩留まり逐次検証」「現場作業員からの実感ヒアリング」など、アナログ現場ならではのリアルなPDCAを複数回行うことが肝となります。

バイヤーやエンド顧客に対し、「現場でここまで突き詰めている」という誠実な説明は、大きな差別化要因となります。

3. サプライチェーンの全体最適化・見える化

複数の原材料・加工先・物流業者が絡むOEM生産においては、サプライチェーン全体での環境負荷評価もポイントです。

最近はクラウド型のサステナブル調達プラットフォームや、IoTタグ、ブロックチェーン活用による原材料の追跡管理など、現代的な「見える化」ツールも活用しやすくなっています。

こうしたシステム導入は、アナログな製造業現場でもトップダウンで進める価値があります。

バイヤー・サプライヤー双方の目線で「本物のサステナブル」へ

OEMにおけるサステナブル素材選びは、単に流行りに乗るだけでも、コストカットだけが目的でも、他社の事例を表層的に模倣するだけでも、本質的な価値創出にはつながりません。

これからの製造業には「自社の課題・強み」と「グローバルスタンダード」という両輪を意識した、現場起点のラテラルシンキング(水平思考)が必要不可欠です。

最終的なゴールは、バイヤーの要求を鵜呑みにするだけでなく、「現場で本当に実現可能な持続可能性」かどうかを見極め、お互いの知恵と技術を掛けあわせて「本物のサステナブルOEM商品」を創出していくことです。

読者である現場の皆さんが、今この瞬間から“原材料選びの意義”や“これからのものづくりの誇り”を再考し、自社×顧客とともに新たな製造業の地平を切り拓いていく一助となれば幸いです。

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