投稿日:2025年7月24日

スノーボードウェアOEMが快適滑走を支える防水透湿素材セレクト法

イントロダクション:スノーボードウェアと素材選定の重要性

スノーボードウェアの性能は、素材へのこだわりで大きく左右されます。
特にOEM(他社ブランド製造)でウェア開発を目指すなら、防水性と透湿性の両立は「快適な滑走体験」を支える最重要ファクターです。
本記事では、製造業現場で20年以上培った知見と現場目線をもとに、防水透湿素材の選び方や業界動向を掘り下げて解説します。
スノーボードウェアに関わる調達購買担当者、バイヤー志望の方、サプライヤーの方にも役立つ具体的な考え方をお伝えします。

スノーボードウェアに求められる「防水」と「透湿」の両立

なぜ「防水」と「透湿」が不可分なのか

スノーボードは雪上スポーツのため、ウェアに着雪や水分の浸透が起きやすいのは周知の通りです。
しかし単なる防水では、内部の汗蒸れで「サウナスーツ状態」になり、結果的に不快感や体温低下、パフォーマンス低下を招きます。
ここで重要になるのが「透湿性」です。
ウェア内部の水蒸気(汗など)が外に抜けてこそ、長時間快適な滑走が維持できるのです。

JIS規格とスペックの見方

日本国内での素材選定の際によく用いられるJIS(日本工業規格)で、防水度は「耐水圧」(mm単位)、透湿性は「透湿度」(g/㎡/24h)で表現されます。
現場で快適性と耐久性を両立させるための指標目安としては、
・耐水圧:10,000mm以上(なみの雪や雨を防ぐ)
・透湿度:5,000~10,000g/㎡/24h(発汗量を効率よく外に放出)
を一つの基準と考えるとよいでしょう。

防水透湿素材の主要種類とその特徴

1. ポリウレタンコーティング素材

コストを抑えつつ、防水性もあるポリウレタン(PU)コーティング素材は、OEM製造では非常に用いられる機会が多い素材です。
ただし、呼吸性(透湿性)が劣ること、経年劣化による剥離リスクがあるため、耐久性を重視するハイエンドモデルにはやや不向きです。

2. ラミネート系防水透湿素材(PTFEメンブレン等)

ゴアテックス登場以来、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPUメンブレンを使用するラミネート方式が主流となっています。
代表的には「ゴアテックス」「デュポンテフロン」などが挙げられ、ピンホール状の微細孔によって水は通さず水蒸気のみ透過する仕組みが特徴です。
現場感覚では、初期コストが高くなるものの、長時間の滑走や春先の暖かい雪、激しいアクションをする上級者に絶大な支持を得ています。

3. ニュージェネレーション:バイオポリマー&サステナ素材

近年ではアウトドア業界のサステナビリティ意識と共に、植物由来ポリマーやリサイクル素材の透湿防水生地もOEMの現場で急増しています。
エコ素材はコストや性能の点で従来材料に劣る部分も見られますが、ブランドのストーリー性やSDGsへの対応として、大手バイヤー・エンドユーザーの指名買いも増えつつあります。

OEM製造での素材選定実践ポイント

1. 調達購買フローと「要件定義」の肝

調達現場において最も重要なのは「どこまでの用途・ターゲットを想定するか」の要件定義です。
例えば週末スノーボーダーとプロユースでは必要スペックが大きく異なります。
闇雲にハイスペック素材を選べばコストアップ、売価とのバランスを失う可能性があります。
現場目線でのポイントは、
・ターゲットユーザー(初級~上級)
・使用頻度、天候条件
・洗濯頻度などケア面
など「使い手のリアルな運用現場」を想像し、最適な素材スペックを決めていくことです。

2. バイヤー視点:メーカー提案の見極め方

バイヤーがOEMの提案を受ける際、素材スペックシートの数字だけに頼るのはNGです。
同じ数値でも加工プロセス、縫製技術、シームテープの精度によって現物性能は大きく変わります。
数値の裏取りとして、実使用テストや第三者機関での耐水圧・透湿度検査を依頼することが「失敗しないOEM」の重要なアクションです。

3. サプライヤー視点:バイヤーニーズの本質を読む

サプライヤーは単なる「素材提案者」ではありません。
ベストな提案をするには、バイヤーの背後にある
・小ロット対応か大規模量産か
・納期や運送リードタイム
・ブランドストーリーや環境要求
といった「経営側の論理」まで読み取れる姿勢が重要です。

昭和的アナログ現場にも根付く「素材選定のリアル」

スノーボードウェアのOEMは年々高度化していますが、素材調達の現場は今も昔ながらの人的ネットワークや現物サンプル至上主義が色濃く残っています。
カタログスペックやデジタルデータでは分からない「風合いや重さ」「手触り」「音」など感性に訴える要素が、バイヤーの最終決裁を分けるケースも珍しくありません。
さらに、現場感覚では
・縫製職人のクセや設備能力
・サプライチェーンの柔軟性
・突発的な気候変動リスク(例:雪解けの早まりなど)
といった、数字化・自動化が難しい「経験値型知見」が意思決定に大きく関与しています。

OEM開発現場でこそ活かせる現場知とラテラルシンキング

業界内では今も「過去の実績」や「特定取引先とのしがらみ」で素材選択が惰性的になりがちです。
しかし、世界的にみると環境規制の強化(PFAS規制、REACH法順守など)、多様なフィールド対応、カスタマイズ志向の高まりなどでOEMウェアの開発はいま「転換点」を迎えています。
ラテラルシンキング、すなわち「定石の外」に踏み出す柔軟な選択こそが求められる時代です。

たとえば、
・使用済みウェアをリサイクルする素材システム
・各国の山岳天候に最適化したマイナー生地の採用
・職人ネットワークと3Dプリント接合作業のハイブリッド導入
など、従来の壁を打ち破る新発想の開発が、これからのOEM市場では生き抜く力になるでしょう。

まとめ:防水透湿素材選定は「現場」と「未来」への架け橋

スノーボードウェアOEMの素材選定は、
「マニュアル通り」「コストだけ」で選ぶ時代から、「滑走現場と未来価値」を意識して選ぶラテラルな発想へと変わりつつあります。
購買担当やバイヤーは、最新の素材スペックとともに、「本当にユーザーにとって快適か?」「ブランドや社会が求めるものは何か?」を深く問い直す必要があります。

サプライヤー側もバイヤーの本質的ニーズやトレンドを把握し、現場知を活かした情熱のこもった提案を心掛けることが、これまで以上に強く求められています。

最後に、現場から湧き上がるリアルな気付きや学びがOEMの品質を押し上げます。
本記事をきっかけに、皆さまの現場目線による新しい素材調達、快適な滑走体験の実現にぜひ貢献できれば幸いです。

You cannot copy content of this page