投稿日:2025年9月6日

OEM商品の販路拡大に向けた小売店との協業方法

はじめに:OEM商品と販路拡大の重要性

昨今の製造業は、品質やコスト競争力だけでなく、販路の多様化がますます重要になっています。

とりわけOEM(Original Equipment Manufacturer)商品は、他社ブランドで販売されるため、知名度向上や自社名義でのマーケティング展開が難しい一方、安定した供給や大量受注が可能という大きなメリットがあります。

しかし、「OEM商品はいかにして販路を拡大するか?」という課題は、どの現場でも共通して聞かれる難題です。

特に、日本の製造業には昭和の時代から続く旧来型の販売体制が色濃く残っており、“良いものを作れば自然に売れる”という価値観が根強いものです。

しかし、多様化する消費者ニーズやライフスタイルの変化、さらにはデジタルシフトを受けて、「小売店との協業による販路拡大」がこれまで以上に求められています。

本記事では、現場視点から、OEM商品の小売店との協業による販路拡大の実践的な方法や、アナログ業界特有の根強い背景についても深く掘り下げ、ラテラルシンキングで次代の挑戦を提案します。

OEM商品とは?基礎に立ち返る

まずOEM商品の位置づけを再確認します。

OEM商品とは、受注先ブランドの名義で製造される商品を指します。自社で製品企画やマーケティングを行うODM(Original Design Manufacturing)とは異なり、発注元のブランド価値や販売ルートに依存する傾向が見られます。

そのため、部品や半製品を納入するB2B型の商習慣が色濃く、販路開拓の主導権が自社だけでは持ちにくいという事情があります。

一方で、以下のような特長もあります。

  • 一度取引が成立すれば、まとまった数量の受注が見込める。
  • 大手ブランドとの取引によって、品質・生産管理体制が鍛えられる。
  • 安定した売上基盤を形成しやすい。

しかし、成長や利益拡大を狙うためには、「新たな販路の拡張と小売店との協働」がキーワードです。

昭和的調達構造から抜け出せない理由

依然として、日本の多くの製造業では「親会社発注‐下請け受注」という直列的でクローズドな構造が色濃く残っています。

これは、丁寧かつ高品質な製造体制や、長期的な信頼関係が求められるためですが、これが“販路拡大=新規取引進出”の大きな壁になっています。

主な特徴や課題は次の通りです。

  • 製造現場は「良いものを作れば必ず誰かが評価してくれる」という美徳信仰が根強い
  • 営業活動や販路開拓よりも、品質・コストダウン・納期遵守が最優先事項になりやすい
  • 販売先は親会社や大手一次下請け企業に限られる場合が多い
  • 小売業界へのアクセスや情報網が乏しい

このような背景から、OEM商品の販路拡大には「外部プレーヤーとのパートナーシップ」や「小売店との新規協業」が必要不可欠です。

小売店との協業の全体像

OEM商品の販路拡大を実現するためには、小売店といかに協働するか――これが最大のポイントです。

考えられる協業パターンは以下の通りです。

  • 小売店との共同開発
  • 小売店のOEMブランド品として販売
  • 販促やキャンペーンの共同実施
  • 店頭スタッフ向け研修や商品理解促進サポート
  • アフターサービスの共同体制づくり

ただし、これを実現するには、製造側が「自分たちはOEMメーカーで、お客様はバイヤー(仕入担当者)」という受け身のスタンスから脱却し、小売店側と“パートナー”として対等に議論できる関係性づくりが不可欠です。

バイヤーが求めるOEM商品の条件

バイヤーの立場に立つと、OEM製品選定の視点は多岐にわたります。実際に多くの商談現場で感じるのは、販売現場のスタッフや来店客の声を重視した、説得力ある商品提案が求められることです。

バイヤーがOEM商品に求める要素には、例えば以下があります。

  • 自社店舗のコンセプトや客層とマッチする特徴があるか
  • 単なる価格競争ではなく、競合他社と差別化できる“ストーリー”や“開発背景”があるか
  • 販促ツール、商品説明資料などのサポート体制が整っているか
  • 納期、在庫供給体制の信頼性
  • (昨今重視される分野として)SDGsや社会的責任への取り組み

OEMメーカーは、これらの要素を踏まえ、単なる「供給者」ではなく、「“商品ストーリーを語れるパートナー”」として、小売店の目線で提案することが求められます。

協業までのステップと現場での留意点

1. 情報収集と市場分析

まずは、小売業界と自社商品がフィットする市場を徹底的に調べます。

特定の小売業態(ホームセンター、量販店、ドラッグストア、専門店等)によって顧客層が異なるため、どの店舗・企業と協業できるのか、地道な情報収集が欠かせません。

また、実際に店頭調査を行い、自社が供給できるカテゴリー、現行商品の価格帯や商品の見せ方、競合店の状況も把握することが重要です。

2. バイヤーとの接点作りと商談の工夫

商談相手であるバイヤーは、日々大量の商品提案を受け、効率的な仕入れ業務が求められています。

以下の観点からアプローチすると良いでしょう。

  • 事前にバイヤーの取扱商品や店舗特性、顧客層を研究しておく
  • 「この商品はあなたの売場のどこでどう活きるか」という具体提案を用意する
  • 価格や納期だけでなく、“開発秘話”や“現場のこだわり”等、ストーリー性のある訴求を行う
  • 販促協力や展示会(店頭企画)など、Win-Winの施策を提示する

3. パートナーシップ強化と協業体制の構築

OEM商品の販路拡大においては、「取引開始=ゴール」ではありません。

持続的な売上拡大のためには、以下のような取り組みがポイントとなります。

  • 売場担当者との対話や店頭応援など、現場目線の活動支援
  • 定期的な販売データのフィードバックや商品改善提案
  • 急な追加注文や納期変更にも柔軟に対応できる生産管理体制
  • 共同キャンペーンの実施や販促ツールの提供

これらを実施することで、「単なるOEM供給者」から「売れる売場づくりのパートナー」へと存在感を高めることができます。

押さえておきたいデジタル・販促の最新動向

昭和型の調達構造から脱却し、販路を拡大するためには、デジタルを活用した情報発信や販促が急務です。

バイヤーや小売店も、従来以上に「SNSや動画コンテンツを使った拡散力」や、「QRコードを活用した商品訴求」など、リアルとデジタルの融合を求めています。

例えば、商品に込めた技術力や、SDGsに対応した生産背景などは、短い動画やSNS投稿でチラ見せすることで、小売店側のブランド価値向上にも貢献します。

こうした取組みを「自分たちでやるのはハードルが高い」と感じる場合は、外部の販促専門企業やPR会社をパートナーに巻き込み、実現するのも一つの手です。

OEMメーカーに期待されるバリュー:現場の視点から

私は20年以上、工場の現場や経営に携わってきましたが、本当に求められるOEMメーカーの“価値”は、大きく以下の三点です。

  1. 高品質・安定供給…これは当然の最低条件です。
  2. バイヤーや小売店に寄り添う商品企画力…“自分たちの売場ならどう売るのか”という発想で提案すること。
  3. アフターサービス・顧客サポート…信頼して使い続けてもらうには、小売店や最終ユーザーとつながる姿勢が不可欠です。

現場では、設備投資や生産性向上だけでなく、サプライチェーン全体での“付加価値”を強く意識すべき時代です。

まとめ:OEMメーカーこそ、領域横断でチャレンジを

OEMメーカーが販路を拡大するためには、小売店と“一部の部品納入”あるいは“受注生産のパートナー”という枠にとどまらず、「一緒に売場を育てていく」視点が不可欠です。

現場力・品質・コストダウンといった日本製造業の強みは、そのまま“小売店への提案力”に変えていけます。

従来の常識にとらわれず、柔軟なラテラルシンキングで、小売店やバイヤーが本当に困っていること・成長したい部分に寄り添い、新たな協業のあり方をともに模索しましょう。

販路拡大の未来は、決して「大企業だけのもの」ではありません。

今こそOEMメーカー自身が、一歩前に踏み出す時です。

製造業の新しい地平線を開拓し、ともに未来を切り拓きましょう。

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