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相見積の質を上げるRFI→RFQブリッジドキュメントの作成法

目次
はじめに:現場の相見積は、本当に最適化できているか?
製造業の調達購買部門において、相見積(アイミツ)はコスト削減や品質向上だけでなく、サプライチェーン全体の安定やリスクマネジメントにも大きな役割を果たします。
しかし「ただ複数社から見積を取れば良い」という昭和的な相見積のやり方に、まだ多くの現場が留まっています。
私自身も、工場長や調達購買マネージャーとして数多くのアイミツを経験してきましたが、今こそRFI(情報提供依頼)とRFQ(見積依頼)の間に“プロのための橋渡し資料”を設けることで、圧倒的な業務品質向上が実現できると強く感じています。
この記事では、ラテラルシンキング的な視点も交え、【RFI→RFQブリッジドキュメント】の具体的な作成法と運用ポイントを、現場目線で詳細にお伝えします。
なぜ、RFIとRFQの“間”が重要なのか
業界の現状:RFIもRFQも、同じ資料?
多忙な現場では「とりあえず設計図面とスペックをパラッと送付。返事をただ待つ」というケースが根強く残っています。
RFIとRFQの違いも曖昧なまま、
– RFI=“とりあえず声かけ”→“関心のある業者を絞る”
– RFQ=“出せるところ全部に見積依頼”
この流れが、昭和から続くアナログな調達現場では“やり方のスタンダード”になりがちです。
なぜ非効率に陥るか:背景と課題
しかし実際は、同じ図面・仕様書でもメーカー毎に解釈や得意分野、取引姿勢が違います。
RFIだけでは意図や期待値が伝わらず、RFQ段階の見積もりが大きくバラバラになったり、本当に選びたいサプライヤーを落としてしまった…という痛い経験も数えきれません。
ここで注目すべきは、「どこまでをRFIで伝え、どこからRFQの“前提条件”として具体的にドキュメント化するか?」この“情報のグラデーション”です。
“RFI→RFQブリッジドキュメント”とは?
橋渡し資料で、何が起こるのか
このブリッジドキュメントとは、RFI応答(サプライヤーがどこまで出来るかの表明)と、実際のRFQ(具体的な見積条件提示)の間を繋ぐ専用資料のことです。
この工程を明確に挟むことで、以下のようなメリットが生まれます。
– サプライヤーの“解釈ブレ”を最小化
– 見積もり内容の比較可能性が高まる
– 本当に期待したい技術・提案力を活かせる
– 誤解や齟齬による手戻りが激減
どんな内容をまとめるべきか
このブリッジドキュメントには、次のような項目を整理します。
– 技術要件・仕様の再確認と“なぜそれが重要か”背景説明
– 工程や検査プロセスの“自社譲れないポイント”
– 調達の目的(コスト?リードタイム?新技術導入?)の明記
– 取引・契約での注意事項(納期変更ポリシー、品質保証体制)
– サプライヤーに求めるアウトプットや提案案
– NG例・OK例(過去トラブルや好事例を記載)
この「なぜ?」の部分をきちんとアウトプットすることが、単なる“お願い”から“業者参画型”の調達に進化させるポイントです。
ブリッジドキュメントの“作成ステップ”
1. RFI回答の棚卸しからスタート
まず、サプライヤーからのRFI回答を一覧化していきます。
– 技術的力量
– 過去実績
– 生産拠点・キャパ
– 開発・品質管理体制
– 提案意欲(イノベーション度)
ここで初めて、「自社はなぜ今回この業者に頼みたいのか」を“論理的”に棚卸しできます。
2. 路線設定:コスト重視・品質重視・イノベ重視のどれか
どの業者にどんなゴールを求めるかを最初に明言します。
– コストパフォーマンス重視
– 超精密・高品質重視
– 量産立ち上げのスピード重視
– 技術革新・新工法チャレンジ重視
狙いが曖昧なまま“全部盛り”を要求すると、相見積の意味が消えます。
3. “譲れない条件”と“サプライヤー提案枠”の明示
よくあるのは、「どこまでが絶対課題で、どこまでならサプライヤーで最適提案してもらってOKなのか」が曖昧なドキュメント。
– ●ここまでは絶対遵守(品質、納期、標準コスト、主要材料等)
– ▲ここからは提案型(溶接方法の最適化、物流ルート、外注ネットワーク等)
このフレームワークを示しておきます。
4. ベンチマーク例の共有と“相見積査定指標”の公開
“過去のベストサプライヤー事例”や“NG失敗例”を参考例として公開。
さらに「どの観点で相見積を判断します」と“基準値”を可視化しておくと、各サプライヤーの見積回答がグッと質向上します。
5. 最終版を関係者で横断チェック
よくあるのが……調達主導で資料は作ったが、
– 設計部門→「この仕様文言では誤解しかねない」
– 品質管理→「検査項目が曖昧でトラブル化しそう」
など、横断の視点が抜けてしまうこと。
必ず関連部門でブリッジドキュメントの内容を“現場目線”でレビューし、最終版をリリースします。
どんな時に特に効果的か?
量産品だけでない、次世代部品でも威力を発揮
– 新分野の部材調達(例:EV/半導体パッケージ)
– 標準仕様に“カスタマイズ要素”が混ざる製品
– 海外調達や、地政学リスク分散案件
こうした“曖昧さ”が残りやすい領域ほど、ブリッジドキュメントは必須。
アナログ産業だからこそドキュメント化が効く
口頭指示や、長年の“なあなあ”関係が続く業界こそ「言葉にして整理する」「判断軸を見える化する」これが地殻変動レベルの効能を生みます。
現場の“疑問点”“なぜ?”の声を、正直に盛り込むこそ全員の合意形成と品質向上に直結します。
実践事例と成功のポイント
とある自動車部品メーカーでのケース
新規サプライヤー開拓を進める中で、従来の“スペック一斉送信”式RFQで相見積を実施。しかし価格は安いが決定仕様が全くバラバラになったり、工程ごとのリードタイム解釈が食い違い過ぎて“比較不能”に陥った事例がありました。
チームで協議し、RFIへの回答を踏まえて
– なぜそれを重視するのかの根拠説明
– 品質トラブルの再発防止条件
– サプライヤーに任せる部分、断固譲れぬ部分の書き分け
を明文化したブリッジドキュメントを新設。
見積書返却後、同軸での比較が8割以上で実現。
何よりも“選定理由”がロジカルに根拠付けられ「開発、調達、品質どの立場からも説明可能」に大幅進化しました。
品質トラブルの抑止にもなる
過去、見積取得段階で手配書や品質基準が“グレー”のまま走り出し、後工程でサプライヤーとの大喧嘩に発展したことがあります。
こうしたリスクも、RFI→RFQブリッジドキュメントの“ダブルチェック”で、実質的に撲滅できました。
“バイヤー目線”を持ったサプライヤーになるために
バイヤー目標を知ることは、調達戦略においてサプライヤーの最大の武器となります。
ブリッジドキュメントで明示される
– なぜその条件が大切か
– どこで工夫の余地があるか
– 短納期・コスト競争だけではない提案の出し方
これを読み解く練習を重ねていけば、サプライヤー自体が“発注側ファースト”の視点で資料作りや提案ができるようになります。
まとめ:昭和的な相見積から、未来型調達へ
製造業調達現場の“相見積もり”は、単なるコストサーチのための作業だと思われがちです。
しかし、RFI→RFQブリッジドキュメントを丁寧に作り上げることで
– サプライヤー側の創意工夫も引き出し
– バイヤーとしても曖昧さを最小限に抑え
– 業界全体がより透明な競争、パートナーシップ型購買にシフト
していくことができます。
ぜひ、現場でしか気付けない“なぜうまくいかなかったか” “次からもっと比較しやすくする方法はないか”――
この問いを、ブリッジドキュメントを通して形にし、あなたの現場、業界、そして日本の製造業全体を、新たな地平へと導いてみてください。
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