投稿日:2025年9月7日

ペットフードOEMの品質保証と検査フローの作り方

はじめに:ペットフードOEMの品質が重要な理由

ペットフード市場は年々拡大を続けており、消費者の品質要求もますます厳しくなっています。

ひと昔前のアナログな製造現場から脱却し、信頼を獲得するためには、OEMメーカーとして品質保証と検査フローの徹底が欠かせません。

本記事では、大手製造業出身の現場目線から、ペットフードOEMにおける品質保証体制の構築と実践的な検査フロー作りについて深く掘り下げます。

また、昭和的な「なあなあ」管理や「カン・コツ」重視からの脱却も意識し、今日のサプライチェーン全体に求められる動向も解説します。

OEM事業で求められる品質保証とは何か

OEMにおける品質保証のポジション

OEM(Original Equipment Manufacturer)とは、販売ブランドが企画・設計し、製造を専門メーカーに委託するビジネス形態です。

発注元(バイヤー)は自社のブランド評価をリスクに晒します。

そのため、OEMメーカーには、
1. 決められた仕様を守る
2. 一貫して品質を維持する
3. 問題発生時は迅速対応する

この3点すべてが求められます。

どれかひとつが欠けても、信頼は失われます。

ISOやFSSC、AIB…ペットフード特有の規格事情

食品業界全体ではISO9001、ISO22000やFSSC22000に準拠することが多いですが、ペットフードならではの規格も存在します。

たとえば、欧米向けではAIB認証や、米国FDAのFSMA規制、日本国内ではペットフード安全法が重要です。

業界動向として「ヒューマングレード(人が食べられる)」レベルの品質要求も高まりつつあります。

OEMメーカーはこうした各規格や法令に柔軟に対応できる品質保証体制を構築しなければなりません。

ペットフードOEMの理想的な検査フローマップ

原材料受入れ検査

原材料段階からの品質確保が徹底の第一歩です。

着荷時検査では、見た目や匂い、表示確認だけでなく、サプライヤーの「製造年月日」「ロットトレース情報」「COA(成分証明書)」も細かくチェックします。

独自の基準値を文書化し、抜き取り検査や、時には検体を第三者機関に送り品質監査を実施することも、大手メーカーにおける実務ノウハウです。

仕込み・加工工程でのモニタリング

仕込時には混入異物チェックや分量の誤差、機器の温度・圧力記録、アレルゲンの混入対策を徹底します。

人手作業が絡む工程はミスやムラを生じやすいので、ダブルチェック体制や自動測定への投資も進めましょう。トレーサビリティ確保のためログを自動で残すシステム導入が望ましいです。

中間検査・最終検査のポイント

加熱・乾燥後、また包装後に抜き取り検査を実施します。

湿度・水分率、物性(粒の硬さやサイズ)、成分分析(蛋白・脂質など)をルール化し、「合格基準」と「逸脱時の対応フロー」を文書で明確にします。

さらに「物理的(金属検出器, エックス線検査)」や「生物的(微生物検査)」、必要なら「アレルゲン検査」も実施することで、リスクを最小化できます。

出荷前レビューと最終品質判定

問題ないバッチのみを「リリース判定」する仕組みが肝要です。

この段階でバイヤー(顧客)と事前合意した出荷判定基準がなければ、個別対応でリズムが崩れます。

現場任せになりがちな日本的な調整を、人・システム両面から標準化してください。

検査フローづくりで“陥りがちなワナ”と回避のヒント

「前からやってきた方法」に頼らない

昭和的な現場にありがちなのが、
「今までこのやり方だったから」
「ベテランがいれば大丈夫」
といった思考停止です。

そのやり方で品質事故が発生した原因追及、そして二度と同じことが繰り返されないよう、フローの見直し・文書化・教育徹底が不可欠です。

「誰が見ても分かる」可視化と標準化

QMS(品質マネジメントシステム)を現場に根付かせるコツは、作業手順を「図」や「フローチャート」で可視化し、「なぜこれが必要か」をセットで教えることです。

ムダな「指示待ち」や「勘違いオペレーション」が減り、安定生産が実現します。

IoTセンサー・AI活用によるデジタルシフト

人が直接目視や手作業で100%カバーするのは難しい時代です。

温湿度や流量、粉量の計測、画像による異物検出、AI判定による異常早期検知など、安価でレトロフィットできるツールが急速に広がっています。

全自動化が難しい場合でも、要所のデジタル化とデータの蓄積・分析が「見逃しゼロ対策」につながります。

バイヤー直伝!OEMメーカーに求める品質保証の「気配り」とは

契約書・仕様書=コミュニケーションの出発点

バイヤー目線で一番困るのが「言った言わない」「書いてなかった」という曖昧な指示・仕様書です。

契約時、検査成績書のフォーマット・報告頻度・逸脱時の報告ルールまで、しっかり詰めておくことが、リスク未然防止につながります。

サプライヤー側からの「提案力」も強みになる

国内ではまだまだ「言われたことを守るだけ」と思われがちなOEMメーカーですが、グローバルバイヤーは違います。

工場視察や監査の際、「うちはこんな改善案を持っています」と自社の品質フローや検査強化策をアップデートして提案できれば、大きな加点対象となります。

現場ベースの改善提案が差別化要素になる時代です。

昭和から令和へ、業界のデジタル変革は止まらない

DXは現場の「実利」から進める

中小・地方のペットフード加工現場には、いまだに紙伝票や棚札、アナログな記録管理も多く残っています。

最初から壮大なシステム導入を目指さず、「毎日の検査記録をクラウド共有」「バッチNo.検索の自動化」といった地道な第一歩から始めましょう。

これが全社的なトレーサビリティ・ヒューマンエラー削減に結びつきます。

グローバルサプライチェーンへの対応力=生き残る力

競争が激化する現代、バイヤーは国内・海外問わず品質と情報の透明性を最重視しています。

「事故発生時のバックデータ提出」「コストダウン交渉でのプロセス透明化」など、検査フローの構築・運用が企業価値そのものと言えます。

まとめ:品質保証の深化がペットフードOEM業界の未来を創る

ペットフードOEMは、単なる下請け工場の域を越えて「パートナー」としての責任がますます重要になっています。

原材料管理から製品完成、納品後のアフターフォローまで、一貫した品質保証体制と現場主導のアップデートを続けていくこと。

それこそがバイヤー・サプライヤー双方の信頼構築と、今後の業界発展のカギです。

変化の激しい令和の製造現場だからこそ、現場目線とデジタルの融合が最適な品質保証・検査フローを生み出します。

本記事が、ペットフードOEMの品質保証に悩む方、バイヤーを目指す方、あるいはサプライヤーポジションでバイヤー視点に興味のある方のお役に立てれば幸いです。

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