- お役立ち記事
- USDMを用いた漏れ抜けゼロの要求仕様書作成と手戻り防止ノウハウ
USDMを用いた漏れ抜けゼロの要求仕様書作成と手戻り防止ノウハウ

USDMを用いた漏れ抜けゼロの要求仕様書作成と手戻り防止ノウハウ
はじめに:要求仕様書における「漏れ」と「手戻り」の現実
日本の製造業、とりわけ多くの工場がアナログな慣習を色濃く残す現場では、いまだに要求仕様書のトラブルによる「漏れ」や「手戻り」に悩みが絶えません。
設計や生産部門、品質管理、サプライヤーとのやりとりで起こる認識のズレ、この問題が潜在的なコスト増や納期遅延、品質問題の種となっています。
私自身、工場長や調達の立場として20年以上現場に携わる中で、要求仕様書の不備がいかに現場の非効率やストレスの元凶か、痛いほど体験してきました。
この現場目線を踏まえ、昨今の業界動向とも融合した「USDM(ユーザー要求仕様定義手法)」の活用ノウハウを、徹底的に掘り下げて解説します。
USDMとは何か?現場改善の切り札となる理由
USDM(User Story Driven Method)は、もともとITやシステム開発領域で生まれた手法です。
ですが、その”要求(ユーザーの望み)を徹底的に可視化することで、設計・開発・生産の手戻りをゼロに近づける”思想は、製造業にも即応用が可能です。
従来、「設計意図とは異なって部品が作られる」「仕様書に曖昧さがあったのでサプライヤーが勝手解釈」「現場と購買の間で行き違いが頻発」などは、すべて”オーダー伝達の言語化・構造化不足”から生じています。
USDMは、これらを「抜け・漏れが発生しない粒度で、端的に・フラットに記述する」ことを追求します。
結果、誰が読んでも同じ解釈となり、
サプライヤーや外注先も「自分に都合が良いように斜めに読む」ことを防ぎます。
昭和的アプローチの限界と、USDMの現場定着のコツ
日本の製造業は長らく「阿吽の呼吸」や「前例主義」で要望伝達をしてきました。
発注側はすべて把握してるつもり、受注側は「まあこれくらいで」と経験則に流れる。
その一方、
・人の入れ替わり
・複雑な多工程・多品種
・グローバル化
が進んだ今、属人性の高い慣習はもはやリスクになっています。
USDMを導入する現場では、「口頭ではなく、USDMシートに『ユーザーストーリー』を必ず記述・レビュー」という形で文化を作ることが近道です。
初めは一手間かかりますが、その分、伝達漏れの劇的減少やリードタイム短縮、顧客満足の向上が狙えます。
USDMによる要求仕様書の作成プロセス
1. ユーザー要求の掘り出し
製造業におけるユーザーとは、エンドユーザーだけでなく「現場作業者」「生産技術担当」「バイヤー」「品質保証」など多岐にわたります。
まずは、各ステークホルダーが何を望んでいるか、現場に足を運びヒアリング。
典型的な質問例は以下の通りです。
– その設備・部品・サービスで何を達成したいのか?
– どんな困りごと・制約があるか?
– 失敗例、過去のクレームは?
複数の担当者への対話により、潜在的な要求を洗い出し、USDMのストーリーフォーマット(例:「私が[この要求]をしたいのは、[この成果]が必要だからだ」)で記述します。
2. 制約と仕様(スペック)の可視化
現場では、「コスト」や「納期」、「安全」「品質」といった制約条件が多くを左右します。
従来は口約束やExcel方眼紙で曖昧に処理されがちでしたが、USDMでは
– 優先度(Must/Should/Could)
– 数値化(温度34℃±2℃、品種切替5分以内、など)
– 検収基準(どんなテストで「要求達成」か?)
を明文化します。
この段階で、後工程になって「あれが決まってない」「誰も見てなかった」のリスクをゼロに近づけます。
3. 利害関係者全体でのレビュー
現場・工場・設計・購買・品質・営業・サプライヤー(場合によっては顧客)も集め、USDM仕様書を「全員が同じ絵を描ける」レベルで合意します。
昭和の現場流では「おおむねOK」で終わりがちですが、USDMでは
– 「誰が」「何を」「なぜ」「どの条件で」「どう検証するか」
を明文化し、ダブルチェックやレビュー会議を必須とします。
これにより、「誰それの解釈が違ってた」という事態が激減します。
手戻りを徹底的につぶす実践ノウハウ
ここからはさらに、20年超の実体験に基づく「地に足のついた」手戻り削減ノウハウをご紹介します。
ドキュメント管理の徹底とナレッジ化
USDMで仕様書を作成したら、現場部門ごとに検索性を担保してストック化します。
「昨年度の失敗事例」「クレーム分析結果」も並列管理することで、次回要件定義時に「前回の抜け・漏れ」も先読み可能となります。
プロトタイピングによる早期検証
可能な限り、最小単位の試作品や工程をつくり、仕様の「抜け・曖昧な部分」を試作段階で露呈させます。
USDM仕様書をもとにした“バーチャル生産会議”も有効です。
現場・調達・開発が共通言語をもって、先取り質問を出せます。
デジタル活用と昭和的ノウハウの融合
iPadや共有サーバーの活用でUSDM制作・修正・配信の即時性が高まります。
同時に、ベテラン作業者の“勘”“暗黙知”もUSDMストーリーに組み込むことで、本当の意味で「現場に効く仕様書」となります。
業界動向:DXとバイヤーの新たな視点
製造業でもDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が加速しています。
AIやIoTが主流になる中で、調達やサプライヤーにも“データドリブンのやり取り”が求められます。
バイヤーを目指す方は、USDMを使いこなすことで
・発注内容の透明性向上
・サプライヤーとのフェアな関係構築
・内製/外注切り分けの合理的判断
に強みを発揮できるでしょう。
一方、サプライヤー視点では、「なぜこの仕様なのか」までユーザーストーリーで読み取れるため、ビジネス提案や差別化の根拠にもなります。
まとめ:USDMで、製造業の真の伝達力を創造する
「USDMを用いた漏れ抜けゼロの要求仕様書」は、単なるドキュメント技術ではありません。
現場の深い課題意識と、日本的な「伝統」と「進化」を融合する新たなコミュニケーション文化の創造です。
属人的・アナログな伝達体質から脱却し、本当に現場で機能する「言葉」をシートに落とし込む。
これが、調達購買、生産管理、品質、工場全体、そして製造業の未来をつくる大きな差別化要素になるでしょう。
現場で苦い経験をしてきた方、これから工場現場やバイヤーを志す若手の皆さんにも。
“日本のモノづくり”を次代へ繋ぐ知恵として、USDMを活用していきましょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)