投稿日:2025年11月28日

ボディから作るか既製品をカスタムするか?OEMパーカーの判断基準

はじめに:OEMパーカー開発で迷いがちな「ボディ」と「カスタム」

OEMパーカーを製造する際に、既製品のボディをカスタムするか、それとも一からボディを開発して作り込むかは、製造業バイヤーやサプライヤー双方にとって悩ましいテーマです。

近年はアパレル市場全体で少量多品種やスピード感が求められており、従来のような大量発注によるコストダウン一辺倒の発想だけでは差別化が難しくなっています。

本記事では、昭和世代から続くアナログな業界慣行を踏まえつつ、「なぜ今その選択をするのか?」という現場目線で、ボディ一から製作する場合と既製品をベースにカスタムする場合の判断基準を整理します。

ボディから作るOEMパーカー:メリット・デメリット

圧倒的オリジナリティが最大の強み

ボディ自体を型紙から作るOEMパーカーは、使用生地・シルエット・縫製仕様など全てが自由設計です。

ブランドの世界観や顧客の要望を突き詰め、他社製品と完全に差別化したいときには最適な手法です。

たとえば以下のような具体的なケースで有効です。

・細部までこだわるファッションブランドのオリジナルアイテム
・スポーツ・アウトドア向けで機能性素材や特殊なパターンが必要な場合
・新規開発した素材や技術を打ち出したいケース

リードタイムと初期費用の増加が最大の障壁

最大のデメリットは、試作やサンプル作成に時間とコストがかかることです。

ボディの新規型作成、パターン調整、縫製テストなどで最低でも2~3回のサンプル作り直しが発生しがちです。

さらに現場レベルでは、「量産になって初めて想定外の不具合が出る」「部材取り都合でコストが跳ね上がる」といったトラブルも時折起こります。

また、小ロット生産では1着あたりのコストが既製品より明らかに高くなる点も注意が必要です。

リードタイム圧縮の工夫は?

昨今はパターン自動作成ソフトやデジタルサンプルなど技術革新も進んでいます。

とはいえ、工場現場では「アナログ型紙が一番確実」というベテランの声も根強く、IT化だけで劇的に短納期化できる現状にはありません。

現場での効果的なリードタイム短縮策は、「事前の十分な合意形成」と「過去実績からのフィードバック活用」、そして「信頼できるパートナー工場」の選定です。

既製品のパーカーボディをカスタマイズ:メリット・デメリット

「手軽さ」と「コストダウン」を両立

既製品のパーカーボディにロゴプリントや刺繍、カラーアレンジを施しオリジナル品とする方法は、アパレル業界全体で主流の手法です。

最大のメリットはコストダウンとリードタイム短縮。

すでに量産体制が確立されたボディを流用するため、材料手配や縫製工程、検品基準も標準化されており、「短納期・低コスト・小ロット」に適応できます。

物販イベントやノベルティアイテム、社内ユニフォームなど「速攻で数を揃えたい」ときには最適です。

差別化・独自性はどう確保する?

デメリットは「他社製品と差がつけにくい」ことが挙げられます。

特に有名ブランドの既製品ベースでは、どれほどロゴやカラーを変えてもシルエットや素材感は同じ。

顧客から「どれも一緒じゃない?」と思われるリスクが現実的に生じます。

そのため「限定カラー」「特殊プリント技法」など、カスタム部分で限界まで付加価値を上げるノウハウが求められます。

また、近年はSDGs志向により「エコ素材の既製品を選ぶ」「工場のサステナビリティ認証を重視する」といった選び方も増えつつあります。

既製品カスタムにも落とし穴が存在

実務の現場としては、「在庫切れ」「仕様変更」「モノづくりへの想定不足」など、既製品ならではのトラブルも意外と多いです。

とくにOEM生産ラインと直販ラインが分かれていないメーカーでは、商況により型落ちや生産中止が発生します。

したがって、選定段階で「安定したサプライチェーンとメーカーの姿勢」を確認しておくことがリスク回避のポイントです。

バイヤーが判断するための現場目線チェックリスト

1. 目的・ターゲット明確化

なぜOEMパーカーを作るのか?
売りたい相手(ターゲット)は誰か?
どんな価値を打ち出したいのか?

この3点を現場レベルで言語化するのが全てのスタートです。

「イベントで使い捨て的に配るもの」と「ブランディングの主力アイテム」に必要なモノづくりレベルは大きく違います。

2. 予算・数量・納期の現実的把握

コスト管理は言うまでもなく、「どの程度の数量か」「いつまでに必要か」も事前にクリアにします。

小ロット・短納期ならカスタム既製品、大ロット・長期的商材なら新規ボディ、と大枠で方向性が絞れます。

3. ブランド力・独自性の重要度

市場で「ありふれたOEMでは戦えない」場合は、やはりオリジナルボディで差別化が必要です。

ですが、現場の肌感覚として「独自性100%」を目指すとコストや納期が必ず跳ね上がるため、8割既製・2割オリジナルのようなバランスも有効です。

4. 安定供給とサプライチェーンの堅牢性

特に法人向けや定番品を狙う場合、「同じボディが毎回安定して供給できるか」は最重要です。

新興サプライヤーを選ぶ場合も、過去の供給実績や工場の生産能力、在庫管理体制までヒアリングしましょう。

5. 製造現場との距離感とコミュニケーション力

OEMパーカーの開発で最大の成功要因は「工場との緊密なコミュニケーション」です。

「これくらい伝えれば察してもらえるだろう」といった“昭和的阿吽の呼吸”は、現代では通用しません。

図面・仕様書・現場検品まで具体的かつロジカルにすり合わせる——これが現場が一番失敗しないポイントです。

業界動向:アナログから脱却する“知恵”の活用

属人的ものづくりから「仕組み×現場感」ベースへ

製造業の現場では長年、「ベテラン社員の経験・勘・度胸」いわゆる“KKD”で判断されてきました。

しかし、グローバル化・AI化・SDGsが叫ばれる今、KKD頼みではサプライチェーンが持続しません。

既製品活用であっても「過去トラブル情報のシェア」「納品品質の見える化」「小さな現場からのIT導入」など、“沼る”現場知恵を活かしながら標準化・デジタル活用が急務です。

昭和から抜け出せないアナログ業態が目指すべき道

たとえば現場では、手書き伝票や口伝連絡がいまだに日常茶飯事です。

OEMパーカーの開発現場でも、設計変更の伝達ミス・納期遅延など「人任せ」のリスクが完全には消えていません。

今こそ、伝統の現場力とデジタルユーティリティをブレンドし、“現場に根差した仕組み”による差別化が次の競争力と言えます。

まとめ:OEMパーカーは「目的」×「現場力」で最適解を導く

ボディから作るべきか、既製品カスタムか——。

生産管理・購買現場としての答えは、「作る目的」と「現場の知見」を組み合わせて、その都度柔軟に判断するしかありません。

コスト・納期・差別化だけでなく、現場の安定供給力やコミュニケーション、IT化への対応力も総合的に見据えましょう。

効率一辺倒で失敗する時代はもう終わりです。
いかに「現場力」と「仕組み」を融合して進化していくか、OEMパーカープロジェクトを通じて一歩先を行く“ものづくり組織”を目指してください。

You cannot copy content of this page