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職人が主役のブランドを作るためのファウンダーストーリー設計と伝え方

目次
はじめに:製造業の現場から見るブランド構築の本質
ブランドという言葉を聞くと、多くの方はファッション業界や消費者向け製品に限定したイメージを思い浮かべがちです。
しかし、ものづくりの現場――特に製造業においても、ブランドという概念は極めて重要な意味を持ちます。
特に、職人が主役となるブランドを確立することは、技術力や経験といった“見えない価値”を市場に見える形で伝える上で非常に有効です。
本記事では、製造現場やバイヤーの視点を持つ方が知っておくべきファウンダーストーリー設計の考え方、アナログな現場だからこそ活きる事例、デジタル時代への伝え方まで、現場目線で解説します。
なぜ職人主役型のブランドが今、求められるのか
消費者・バイヤーが「顔の見える現場」を求めている背景
インターネットを通じて誰もが情報にアクセスできる現代では、企業の表面的なスペックや品質だけでは差別化が難しくなっています。
購買サイドや消費者は製品の向こう側にいる「職人」や「企業文化」まで目を向け、その価値観やストーリーに共感する傾向が強まっています。
昭和の時代のように「物さえ良ければ売れる」という時代ではありません。
サプライヤー側から見ると、価格や納期だけでなく「自社の職人や現場文化」にストーリー性や唯一性を持たせることが重要です。
アナログな技術=時代遅れではない理由
日本の製造業が長年にわたり世界から評価されてきたのは、卓越した手仕事、現場で蓄積された知見、熟練の「勘」などに裏付けられた品質・信頼性です。
こうしたアナログな職人技はAIや自動化だけでは再現できない圧倒的優位性であり、それこそがブランドの核となります。
つまり、昭和的な“現場力”が現代のブランド戦略でこそ強みになるのです。
ファウンダーストーリー設計の基本フレームワーク
起承転結ではなく、「課題起点」で語る重要性
従来日本のブランドストーリーは「創業の経緯」や「製品が生まれた背景」に着目して語られがちですが、これからは“時代が抱える課題”にまず触れることが重要です。
たとえば、「グローバル化で失われゆく熟練技能への危機意識」や「地域産業の衰退」などに、ファウンダーや現場がどう向き合い、何を守ってきたかを物語の出発点に据えます。
職人一人ひとりに「顔」と「使命」を与える
単に「技術が高い」だけでは共感を得にくくなっています。
職人たちがどのような人生観、価値観、誇りを持って仕事と向き合っているか。
仕事にかける想い、その裏側にある苦労や葛藤、挫折、そこからの学び。
可能な限り一人ひとりの表情や言葉を、具体例や逸話を交えて描きましょう。
お客様+現場+社会、三方良しの視点を入れる
顧客が得る「製品」の価値、現場で働く人の「働きがい」、そして地域や社会に還元されるプラスの影響。
この三つの視点をストーリーに織り込むことで、より多くの人に自社の思いを伝えやすくなります。
ストーリーに落とし込むべき「現場ならでは」の要素
1. 失敗と再挑戦――不器用な現場のリアル
日本のものづくり現場では「暗黙知」が多く、うまく言葉にできない難しさをずっと抱えてきました。
しかし、その不器用さこそ現場の人間味であり、よき伝説となります。
たとえば、
「初めての量産化プロジェクトで、全数不良品という大失敗。そこから夜遅くまで悩みぬき、新しい治具を開発し直した話」など、
“失敗→再挑戦→成功”の流れを具体的な現場エピソードで表現しましょう。
2. 暗黙知・勘・コツの言語化
機械化・自動化が進む中でも、「この温度帯がベスト」「この音が異常のサインだ」など、現場でしか分からないノウハウがあります。
こうした“伝承されてきた知恵”を聞き書きや若手との対話を通じて言語化し、ストーリー内や発信コンテンツへ積極的に落とし込むことがブランド価値単価の向上につながります。
3. 地域やコミュニティとの共生
日本の工場や町工場は、学校や自治会、地域行事などを通じて住民と密接な関係を築いてきました。
この“共生関係”もブランドストーリーの大きな武器です。
「地元小学校と行っている職業体験」や「震災や災害時に工場を開放したエピソード」など、地域との関係性を積極的に発信しましょう。
伝え方の工夫:アナログ業界こそデジタル発信を恐れない
脱・パンフレット!ライブ感と臨場感を伝える手法
かつては紙のパンフレットや展示会が主流でしたが、今では工場の仕事をそのままInstagramやYouTubeでライブ配信、解説動画として発信する企業も増えています。
現場の音、光、職人の手の動き――これらは写真や動画でこそ初めて伝わります。
普段は見せない現場の“舞台裏”にデジタルでスポットライトを当てることで、若手の採用や顧客への信頼醸成にも大きな効果を発揮します。
ストーリーを多様なフォーマットで展開する
一つのストーリーも、ウェブ記事、SNS投稿、採用パンフ、PR動画、メディア寄稿…と多様に「再構成」できます。
とくにバイヤー層に伝えたい「工程のこだわり」や「原価への影響」などは、図解や短尺動画でわかりやすく解説すると効果的です。
成功事例に学ぶ:職人起点ブランドのリアルな構築法
金属加工メーカーA社:職人インタビュー動画の活用
10年選手の現場リーダーに密着。
「どうやって技能を継承しているか」「新人時代の失敗談と学び」などを本人の言葉で語ってもらい、旬の事例を毎月1本動画で配信しています。
これにより、技能実習生の採用倍率が2倍になり、海外バイヤーとの商談でも「現場のリアルさ」に共感され、案件受注につながりました。
樹脂部品メーカーB社:創業家三代の歴史を連載形式で発信
現社長、その父、創業者それぞれの時代の課題と乗り越え方を切り口にしたストーリーを自社ブログで連載。
工場見学に来るバイヤーから「ファミリービジネスらしい温かみが感じられる」と高評価。
中小企業ながら顧客の定着率向上に寄与しています。
バイヤー・サプライヤーにとっての「ストーリー」の本当の意味
サプライヤーから見れば、「良い物を安く」「納期どおり」に納入することが最大の価値だった時代は終わりました。
今、顧客やバイヤーは、サプライヤーの“人”や“現場”を知ることで信頼を深め、難案件やイレギュラーな商談ほど「ストーリーの力」が決定的な要素となります。
逆に言うと、ストーリー発信力が無い=価格競争に巻きこまれるリスクが高い時代となっています。
バイヤー視点に立てば、自分たちが何に価値を感じるかを再定義し、その価値に誇りを持って熱意を伝えてくれるパートナーと長期的な関係を築きたい、という流れが生まれています。
日本の製造業が得意とする「不器用な現場力」「泥臭い努力」「小さな工夫」こそが、本音ベースのストーリーとして最も刺さるのです。
まとめ:職人主役型ブランドの未来像
製造業の現場には、時代を超えて受け継がれる“人間味”や“現場知”があります。
裏表のない現場目線のストーリー設計と発信こそが、これからの競争時代を勝ち残るための最大の武器です。
デジタル時代になっても、日本の工場や職人の物語には世界中に通用する普遍的な力があります。
ぜひあなたの現場も、独自のストーリーを「見える化」し、
バイヤー・サプライヤー双方にとってかけがえのないブランドを構築していきましょう。
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