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地方製造業を軸にした国産回帰型サプライチェーン戦略の立案方法

目次
はじめに
地方製造業は、日本のものづくりの根幹を支える存在です。
しかし、グローバル化やデジタル化の波、地政学的リスクの増大、新型感染症の影響、さらには人手不足や高齢化など、さまざまな課題が押し寄せています。
そんな中、「国産回帰」が重要なキーワードとなっています。
コロナ禍やウクライナ情勢をきっかけに、サプライチェーンの脆弱性が露呈し、国内回帰の動きが再評価されています。
特に地方の中小製造業を保護・活用し、強固なサプライチェーンを再構築することは、産業界全体の持続的成長と安全保障の観点からも極めて重要です。
本記事では、20年以上の製造業現場経験をもとに、地方製造業を中心とする国産回帰型サプライチェーン戦略の立案方法について、バイヤー、サプライヤー双方の視点から解説します。
なぜいま「国産回帰」なのか
外部要因によるサプライチェーンの不安定化
ここ数年、想定外の事態により、海外とのモノや部品の流れが突然滞る事例が多発しました。
世界分業体制のもとでは、海外に依存する部分が多すぎると急激な供給不安に陥ります。
特に、一次サプライヤーや二次サプライヤーが海外に偏っている場合、一箇所で事故や停止が起きると、完成品の納期や生産にも深刻な遅れが出てしまいます。
調達リードタイムの長期化とコスト高騰
貨物船の遅延や原材料不足、輸送費の高騰も深刻です。
これにより、旧来型サプライチェーンのもろさが浮き彫りになりました。
グローバルで安価だったはずの部材も、いまや納期遅延や緊急調達のコスト増で価格メリットが薄れています。
地方製造業が担う「安全保障」的役割
国産回帰型のサプライチェーン強化には、地方製造業の活性化が欠かせません。
地元での生産拠点やサプライヤーを確保することで、外部要因による供給リスクを最小化でき、雇用や地方経済の循環にも大きく寄与します。
現場から見た地方製造業の強みと弱み
アナログ業界の「粘り強さ」
最新鋭のデジタルツールや自動化設備とは無縁でも、昭和の頃から「現場力」で培われたノウハウ、熟練の技術は大きな財産です。
小ロット・多品種、仕様変更への柔軟な対応力など、きめ細かなニーズへ応える現場対応力は日本の地方製造業ならではの強みです。
デジタル化・人材不足といった課題
一方で、ITやIoT、DXなどへの対応が遅れ、情報連携や見える化が進んでいないケースも多く見受けられます。
また少子高齢化による人手不足、後継者難、生産現場の「ブラックボックス化」なども大きな課題です。
技術の伝承、新規顧客開拓の困難さ
長年にわたり“なじみ取引”が中心だったため、新規にバイヤーを獲得する営業力や、ターゲットの切り替えが苦手という特徴も根付いています。
国産回帰型サプライチェーン戦略 立案のポイント
1. サプライヤーマップの再設計
まずは既存サプライヤーの状況を棚卸しし、調達品目ごと・地域ごとに調達系統図(サプライヤーマップ)を作成します。
地元サプライヤーの活用余地や、ローカル最適化の可能性を探ります。
ここで重要なのは「遠いけれど安い」から「近いけれど確実」という軸へのパラダイムシフトです。
ローカルで供給や加工が可能なアイテムを積極的に付け替え、非常時には代替が利く二重化・多重化(リスク分散)も意識します。
2. 情報連携とデジタル化の推進
地方製造業の現場力にデジタル技術を掛け合わせることで、「アナログの強さ」と「デジタルの効率」を両立できます。
例えばEDIやクラウド活用による受発注連携、IoTを活用したリードタイム短縮、トレーサビリティ強化など、段階的なデジタル化が効果を発揮します。
なお、ITリテラシーが低くても運用できるシンプルなツール選定が重要です。
3. バイヤーとサプライヤーの共創関係構築
従来の「値切り型」「単なる甲乙取引」から「共創型」「パートナー型」へ。
日本の製造業が次に目指すべきは、バイヤー・サプライヤーが一体となって開発や生産効率化に取り組む姿勢です。
発注側は、設計段階からサプライヤーの現場力や技術を生かすために、積極的に情報共有し、コストダウンや品質向上を協議する場を設けます。
サプライヤー側も、改善提案や現場課題の”見える化”に積極的に参加する姿勢が欠かせません。
4. ブロックチェーンやAI活用も視野に
第三者的な信頼確保や、複雑な工程・履歴管理にはブロックチェーン技術も有効です。
また、需要予測や労務シフト、設備メンテなどにAIを導入し、より高精度で効率的なサプライチェーン運営を現実化します。
ただし、IT導入「だけ」に頼るのではなく、現場の暗黙知・職人技との融合による“ハイブリッド型運用”が日本製造業の特有の強みとなります。
バイヤーのための実践アプローチ
ボトルネック工程/バリューチェーンの可視化
自社の製品組立・生産工程におけるキーパーツ・特殊部品の調達元(サプライヤー)を特定し、「どこが止まると致命的か」「どこがブラックボックスか」を整理します。
想像以上に「地方の小規模サプライヤー」への依存度が高いケースも散見されます。
補完サプライヤーの新規開拓や、ノウハウ継承の支援プロジェクト立ち上げもリスク管理上有効です。
自社事情にあった国産化・地産地消の手法選定
全品目を国内に戻すのは現実的ではありません。
「戦略的国産回帰」として、QCD(品質・コスト・納期)とリスク評価を加味し、重点品目から着手します。
他社事例の安易な模倣ではなく、自社の製品特性・顧客要求・地域性を考慮した戦略設計が肝要です。
組織内外への「腹落ち」アプローチ
国産回帰は一見コスト増・非効率と見られがちですが、サプライチェーン全体の安定化やブランド価値向上の観点から、中長期的には大きな投資回収が見込めます。
社内の設計部門や経理部門、および経営層への「腹落ち」説明の工夫も必要です。
また、地方サプライヤーとの意見交換会や共同行動(研修会・現場視察・連携イベント)を通じて、共通目標やビジョンを明確に共有することも重要です。
サプライヤーのための戦略的取り組み
現場力の見える化と見積もり力向上
自社の強み・弱みを可視化し、バイヤーに対して「ウチはここが早い」「ここなら負けない」と説明できるようにします。
納期・コスト以外にも、柔軟対応力、小回り、技術力など、付加価値を伝えることが商談獲得につながります。
見積もりの精緻化、価格の根拠明文化、納期遵守率の数値化なども有効です。
共創型パートナーシップ形成へのシフト
伝統的な「加工請負からの脱却」を目指し、バイヤーと共に設計やコストダウン提案、現場改善活動に参加します。
製造以外にも、環境対策、働き方改革、安全・安心への取り組みなど、社会性の強いテーマにも主体的に関与することで、新たな付加価値を引き出せます。
DX・IT導入は「まずは一歩」から
いきなりフルDXは難しいですが、まずは帳票の電子化やクラウド型受発注システム導入、簡単なIoTセンサー設置など、「小さなデジタル化」から始めることで、生産性向上の糸口が見つかります。
IT人材が不足していれば、地元のITベンダや商工会議所、外部アドバイザーの活用も一つの手段です。
今後の展望とまとめ
これからの日本製造業、特に地方製造業には、「現場力の継承×デジタル力の習得×持続可能な経営モデルの構築」が不可欠です。
国産回帰型サプライチェーン戦略のなかで、地元サプライヤーとバイヤーが一体となって「つくる力(現場力)」と「つなげる力(イノベーション)」を融合させていく時代が到来しています。
大手メーカーも、地元製造業との連携を深め、新しい価値共創の地平線を開拓していくことこそ、危機を乗り越え、さらなる成長を遂げるための唯一の道です。
今このタイミングにこそ、組織・個人が大胆な一歩を踏み出しましょう。
地方発、国産回帰型サプライチェーンの再興と発展に、現場目線・実践力・先端テクノロジーをかけあわせながら、共にチャレンジしていきましょう。
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