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自社製品を海外展示会で販売するための価格・数量戦略の立て方

目次
はじめに:海外展示会で自社製品を売るチャンスをつかむ
海外市場の開拓は、多くの日本の製造業メーカーにとって、大きな成長の切り札となります。
とりわけ、海外の専門展示会に自社製品を出品することは、新規顧客の獲得や、現地市場の需要動向を把握するための絶好の機会です。
しかし、展示会で「売れる」かどうかは、単に参加するだけでは決まりません。
限られた期間とスペースのなかで、競合他社と差別化し、買い手である海外バイヤーの心を掴むためには、入念な価格戦略と数量戦略が欠かせません。
本記事では、大手メーカーで20年以上工場の現場や調達、品質管理に携わった実体験をもとに、昭和から続く伝統と、デジタル時代へのアップデートを踏まえた、実践的な「価格・数量戦略の立て方」を紹介します。
なぜ海外展示会で価格・数量戦略がカギになるのか
世界市場の「常識」と、日本国内の「非常識」
日本の製造業では、「コストに適正な利幅を乗せて売価を決める」「一度に大量生産したほうがコストメリットが出る」という価値観が根強く残っています。
ところが、世界市場、特に新興国や欧米では、「価格は相場と競争状況で決まる」「初回取引は少量での信用確認が前提」という慣習が一般的です。
「うちは〇個からじゃなきゃ受けられない」「この単価じゃ利益がでない」では、海外バイヤーからは一瞬で対象外になってしまいます。
日本的な思い込みを外し、グローバル基準での価格・数量戦略を立てる柔軟性が求められます。
「売る」ことと「つながりを作る」ことのバランス
展示会で重要なのは、「一度きり」の取引で儲けることではありません。
むしろ、テストマーケティングとして小ロット・低利益でも入り口を作り、そこからロングタームでの顧客化、数量アップ、単価維持につなげる設計が欠かせません。
この発想転換こそ、海外で成果を出す価格・数量戦略のスタートラインです。
事前準備:海外展示会の実態とバイヤーの考えを知る
現地展示会のタイプと「狙い目」を見極める
一口に海外展示会といっても、規模や特性は様々です。
現地専門バイヤー中心のBtoB展示会もあれば、小売業者や一般消費者が多く来場するBtoC型もあります。
情報収集段階では、主催者への問い合わせや過去の来場者リスト、実際に現地パートナーにヒアリングするなどして、「どんなバイヤーがどれくらい来て、何を重視しているか」を徹底的に調べましょう。
昭和的な「とりあえず何でも置いてみる」ではなく、精度の高い現地バイヤー像を描くことで、現実感のある価格・数量戦略が立てられます。
海外バイヤーの購買心理に徹底的に寄り添う
海外バイヤーが商品を選ぶとき、基本的に日本メーカーに特別なブランド信仰を持っていません。
重視されるのは「品質」「納期の信頼性」「アフターケア」「小ロットでのお試し」など、目の前のリスクを最小化する損得勘定です。
加えて、「本当に継続的に供給できるのか?」「現地の商習慣に適応しているか?」など、サプライヤーの信頼性と現地対応力も見られます。
この前提を理解した上で、「初回は低リスクで試せる」「継続的な数量アップも見込める」と訴求できる価格・数量戦略が強みとなります。
価格戦略:ただ安くではない、本当に「戦える」価格設定とは
競合調査を怠らない
価格設定の前提は、現地相場と競合他社の実勢価格を知ることです。
主催者や現地商社、同業他社サイトの価格リストなど、あらゆる情報網で「今、現地で売れている実売価格」を調査しましょう。
時に、現地ローカルメーカーや中国・韓国・台湾などコスト競争力の高い企業が、実力以上に低い価格で攻めていることもあります。
安易にそれに追随する必要はありませんが、「自社製品はなぜその価格なのか」「品質や保証、アフターサービスがどう異なるのか」を説明できる材料を用意することが大切です。
入口価格:リスクを引き下げる「トライアルプライス」の重要性
最初の商談では、継続取引を前提とした「おためし価格」「ローリスクセット」の形で、据え置き価格や特別割引、返品可能保証を設けるとバイヤーの心理的ハードルがぐっと下がります。
昭和的な一発勝負の利益ではなく、「初回から利益最大化を狙わず、まず足掛かりを掴む」ことを優先しましょう。
これが長期買い付けへ繋がる地道な布石です。
数量アップにつなげる「ステップアップ価格」の設計
初回は小口注文が多いですが、実績次第で段階的に数量・金額を増やせるよう、「数量レンジごとの段階値引」や「年間○個で特別条件提供」など、ツリー状の価格テーブルを用意しましょう。
例えば、「10個ならA単価、50個ならB単価、100個以上ならC単価」といった明快な表を提示することで、バイヤー側が数量拡大のインセンティブを持ちやすくなります。
これが持続可能な価格競争力と、バイヤーとの関係強化に直結します。
数量戦略:現場起点での現実的な「最小・最大ロット」の落としどころ
自社工場の「小ロット柔軟対応力」を強みにする
日本メーカーの多くが苦手とするのが「少量多品種生産」です。
一方、海外バイヤーはまず「数個~数十個」のテスト発注から、というケースが主流です。
このギャップを埋めるため、現場の生産管理と現実的な最小ロット(MOQ)のラインを調整し、「対応できるロット数をなるべく細かく提示する」ことが肝要です。
例えば、設備段取り替えや品質検査体制を柔軟に組み換え、小ロット生産にもコストを転嫁できるスキームを整えると、他社との差別化ポイントになります。
供給力アピールも数量戦略の一部
一方で、特定分野の現地ディーラーなどは「大口、かつ安定供給」を条件に交渉してきます。
この際には、実績や生産キャパシティ、納期管理体制、BCP(事業継続計画)なども含めて、「どれだけ大量に安定して供給できるか」もセットで訴求しましょう。
数量の幅を持たせ、バイヤーの成長につれて取引スケールアップが可能であることをアピールするのも重要です。
実践現場での具体例:戦略的価格・数量設計の成功事例
例えば、私が担当した自動車部品の海外展示会出展時、「徹底した事前調査」「トライアルセットでのおためし価格」「ロットフレキシブルな生産提案」が功を奏して、徐々に現地代理店を獲得し、3年で輸出数量を5倍に伸ばせた経験があります。
特に、現場の技能スタッフと相談しながら「生産段取りのセル化」「受注から出荷までの短縮化」「余剰在庫リスクの分担」など、日本独自の現場改善力を生かすことで、小ロットにも対応可能な体制を作り上げました。
これが結果的に商談成功率を押し上げるポイントとなりました。
昭和的「職人気質」と、デジタル時代の融合が勝負の分かれ目
古き良き「妥協しない品質」「現場目線の対応力」は世界で高く評価されています。
一方で、時代は「スピード」「柔軟性」「見える化」にシフトしています。
展示会場では、「その場ですぐに価格テーブルや納期目安をスマホやタブレットで提示」「数量レンジごとに利益シミュレーション提示」「アフターサポートもデジタルチャネルで迅速対応」など、ITと現場力の合わせ技が成果に直結します。
まとめ:海外展示会で成長するための「価格・数量戦略」の5ヵ条
1. 相場と競争状況を徹底リサーチし、「自社の強み」を言語化できる
2. 最初は「トライアル価格と最小ロット」でリスクを下げ、信頼を積み上げる
3. ステップアップ方式の価格表・ロット条件で、数量アップの筋道を明確化する
4. 生産・供給現場との連携で、「柔軟なロット対応力」を磨く
5. 現地バイヤーの不安(品質・納期・信用)に寄り添い、「選ばれるサプライヤー」になる
海外展示会での販売成功は、「価格競争」だけでも、「品質自慢」だけでもありません。
買い手と売り手、双方のビジネス育成を見据えた、中長期的な戦略設計があってこそ、真の成果につながります。
工場長をはじめとする現場力と、新しい時代のマーケティング発想を組み合わせ、ぜひ御社の海外事業拡大の一助としていただければ幸いです。
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