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SAE規格とJISの違いを現場でどう使い分けるか

目次
はじめに:規格の壁はなぜ現場で問題になるのか
ものづくりの現場で頻繁に話題となる「SAE規格」と「JIS規格」。
一見、どちらも物や部品の共通ルールのように思われがちですが、その採用には背景や目的、メリット・デメリットなど多くの違いが潜んでいます。
現場のバイヤーやエンジニア、さらにはサプライヤーの立場の方にとって、この規格の違いを理解し、適切に使い分けることは、品質やコスト、納期管理の観点から極めて重要です。
本記事では、現場経験を生かして実践的かつ具体的に「SAE規格とJIS規格の違い」と「その使い分け方」について詳しく解説します。
昭和から続くアナログなルールや、グローバル化が進む今だからこそ求められる柔軟な発想も盛り込んでいます。
そもそもSAE規格とJIS規格とは何か
SAE規格の成り立ちと主な特徴
SAEとは、Society of Automotive Engineers(自動車技術者協会)の略称です。
主にアメリカを中心とした自動車・航空宇宙工業界で用いられ、その始まりは自動車産業の黎明期にさかのぼります。
規格の大半はネジや鋼材の寸法、性質、製造試験方法など物理的なものが中心ですが、北米の産業構造に即した合理性の高いものが多いのが特長です。
現場のメリットとしては、
・大ロット生産向きで部品の調達性が高い
・米国内外での調達先が広い
・北米やグローバルサプライチェーンとの互換性が強い
といった点が挙げられます。
JIS規格の歴史と特徴
JISはJapanese Industrial Standards(日本工業規格)の略です。
主に日本国内の産業ニーズに合わせて戦後整備された規格で、日本のものづくりにおいて品質や寸法、試験方法の統一を図る目的で制定されました。
現場での強みとしては、
・日本の取引先との互換性、運用経験の蓄積
・文化的・慣例的な適合性
・日本独自の高品質・高精度技術への対応力
が挙げられます。
現場で直面する実務的な違い
ねじ・鋼材の寸法・形状差
ねじや鋼材は、日米どちらの規格にも多くの種類がありますが、
・ねじ山のピッチ(山の間隔)
・呼び径(外径、内径の定義)
・強度区分や材質記号
など、細かい部分で微妙な違いが数多く存在します。
例えば、日本独自のMねじ(ミリねじ)はJIS、インチねじ(ユニファイねじ・ウィットねじ等)はSAEで使われることが多いです。
この違いを現場で取り違えると、
・組み立て工程で合わない
・部材ストックの誤発注
・現場でねじ切り直しや追加工発生
といった大きなロスやトラブルに直結します。
材質・化学成分規格のズレ
鋼材やアルミ、銅、プラスチック材料といった基本素材の規格も異なります。
例えば、同じ「S45C」相当材でも、SAEなら「SAE1045」と呼ばれ、成分細目や適合許容差が僅かに異なります。
現場調達や品質保証担当では、この違いを承認図面や発注仕様書の段階でしっかりチェックしないと、後々の入荷検査や工程内品質トラブルにつながります。
業界固有の「慣行」として根付く規格の使い分け
昭和から続く「付き合い」重視のJIS指定
日本の多くの工場では、
・長年続く仕入先との調達ルール
・図面や仕様書の保守的運用
・「先代のやり方」という根深いアナログ文化
により、JIS規格が強く支持される傾向にあります。
この背景には、現場の技術者や購買担当が
「JISなら安心。みんな使ってる」
「国内サプライヤーはほぼJISでしか対応できない」
という暗黙の了解や、組織的な慣性が存在します。
グローバル化とともに求められるSAE規格対応
しかし世界的なサプライチェーンの広がりや、外資系企業との取引増加、そしてコスト競争力強化という時代の要請から、
・海外拠点やグローバルサプライヤーとの規格統一
・米国現地主導の調達案件
・新興国との協業案件
では、SAE規格を前提とした部材や部品仕様が急増しています。
現場においては、「JIS一択」から「JISもSAEも使い分ける」戦略的な規格運用が問われ始めているのが現状です。
バイヤーが知るべき規格使い分けの現場ノウハウ
製品仕様・要求事項を明確にする
まず重要なのは、「対象品目はそもそもどちらの規格で設計されているのか」を明確にすることです。
設計図面や部品リスト、承認仕様書などをチェックし、「JIS」「SAE」「どちらでも可」「両社の互換性あり」といった形で分類することが、発注・調達トラブル回避の第一歩となります。
調達可能性・コスト・納期を比較する
JIS指定で調達すると国内で迅速に手に入りやすい一方、SAE統一だと海外含め量産価格やグローバル調達のメリットが期待できます。
発注品の数量・緊急度・用途を見極めて、都度メリットデメリットを「見える化」して意思決定しましょう。
例:
・国内短納期、小ロット、リピート案件 → JIS
・グローバル標準化、海外生産、大ロット案件 → SAE
図面や仕様書の書き分けを徹底する
現場では「過去図面のコピペ発注」や「口頭指示」のままJIS/SAEが混濁しているケースも多く見られます。
設計担当や購買担当は部品表・図面で必ず「JIS規格品」「SAE規格品」など明記し、サプライヤーとも双方向で認識齟齬が起こらぬよう徹底しましょう。
品質トラブル防止には「受入検査基準の明確化」が鍵
たとえ互換材料としてJIS⇔SAEの代替を「承認」した場合でも、原材料証明書(ミルシート)や受入試験結果での規格確認は絶対に欠かせません。
このプロセスを省略すると、後工程や最終製品での不適合やクレーム事故に直結します。
サプライヤー目線でバイヤーの規格運用を理解する
「なぜ今この仕様で指定されているのか」「将来的な調達変更はあり得るのか」
こうしたバイヤー側の意図を汲み取ることが、高評価につながります。
サプライヤーの立場からは、
・JIS/SAEどちらの規格にも幅広く対応できる設備・体制を持つ
・両規格の互換性判断や代替提案力を磨く
・将来のグローバル案件にも柔軟に対応する
ことが、これからの競争時代を勝ち抜くポイントです。
ラテラルシンキング時代の「規格の活かし方」
規格は「守るだけ」から「選んで使う」時代へ
従来のように「前例通り」「規格通り」で思考停止するのではなく、「コスト最適化」「納期短縮」「品質水準確保」のどれを軸にするのか、その時々で能動的に使い分ける姿勢が求められます。
例えば、
・標準品とカスタム品で規格指定を分けて調達
・グローバル調達時はまずSAE品で見積り→必要ならJISに切替可否を検討
・国内向けはJISで試作し、量産移行時はSAEへ切り替え
こうした柔軟な設計・調達フローを構築できれば、「規格の壁」はむしろ競争力強化の武器となります。
まとめ:規格の「違い」を知り、「使い分け」こそ現場の知恵
SAE規格とJIS規格の違いは、単純な「モノの寸法」だけにとどまりません。
それぞれが持つ歴史的背景や技術思想、現場での運用慣行、サプライチェーン全体の動向までを理解したうえで、
「どちらを」「どこで」「どう使い分けるか」が、今後ますます重要となります。
バイヤーや現場責任者は、この違いを活かした柔軟な規格運用こそが現場改善の新しい切り口と捉えましょう。
サプライヤーの皆さんも、「なぜこの規格が指定されるのか?」という本質部分に目を向け、一歩踏み込んだ提案や対応力で付加価値を出していくことが、今後のものづくり産業発展につながるのです。
製造業の進化に向けて、現場目線での「規格使い分け力」を磨き続けていきましょう。