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VAとVEの違いを現場視点で使い分ける原価低減ワークの型

目次
はじめに:製造業の現場で問われる「本質的原価低減」とは
製造業の競争環境はかつてない速度で変化しています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる一方、現場には今もなお昭和から続くアナログ的な意思決定や業務運営が根強く残っています。
このような環境で「原価低減」が形骸化してしまっている職場も多いのが現状です。
工場長や調達購買、生産管理といった現場経験者が本気で原価低減に取り組むなら、VA(Value Analysis)とVE(Value Engineering)は間違いなく不可欠なアプローチです。
しかし、VAとVEはその違いが曖昧なまま現場で「コストダウン」とひとくくりにされがちです。
本記事では、長年の現場経験から見た実践的な視点で「VAとVEの違い」、そしてそれぞれを本当に効果的に使い分ける「原価低減ワークの型」を解説します。
バイヤーやサプライヤー、そして製造業に従事する全ての方へ、今日から使える“現場目線”のノウハウをお届けします。
VA(バリューアナリシス)とVE(バリューエンジニアリング)の本質的な使い分け
VAとVEの定義と混同されやすい理由
まず抑えておきたいポイントは、VAもVEも「価値(Value)」を最大化しながら「コスト」を下げる手法だということです。
文献や各種セミナーでは、両者は厳密にこう定義されています。
– VAは既存製品・プロセスに対して行う分析活動
– VEはこれから設計・計画される新製品・新プロセスに導入する設計手法
現場では「すでにあるモノを改善する」か「これから作るモノを最適化する」か、というシンプルな違いです。
しかしながら、実際にはこの境界は曖昧になりがちです。
多くの企業で、VAもVEも担当部門や目的に応じて入り混じって使われています。
なぜなら、現場の悩みは「既存品の合理化」と「新規開発の最適化」が常に同時進行だからです。
金型・ライン・購買コスト…現場での具体的な使い分け事例
たとえば、すでに何年も生産している金属プレス部品。
ライン工程を省力化しようと、既存設備や治具・段替えを見直すのが「VA」です。
これは「今あるもの」のコスト構造を、ムダ・ムリ・ムラの視点で洗い直します。
一方、新たに設計する樹脂成型部品。
最初から「どうすれば金型コストを抑え、量産移行後の歩留まり・保守性まで見通せる設計となるか」を設計段階で詰めるのが「VE」です。
どちらも“コストを下げる”活動ですが、そのアプローチと発想起点が大きく異なるのです。
コスト低減ワークの型:現場視点でVA・VEを使い分ける3ステップ
ステップ1:目的と対象の明確化が最優先
やみくもにコストダウンを叫ぶだけでは、現場は動きません。
まず「いまどのフェーズの何を対象にして原価低減を狙うのか」を明確にします。
– 既存量産ラインの歩留まり悪化を解決する(VA)
– 新製品開発に初期段階から低コスト設計を盛り込む(VE)
このように、プロジェクトごとに「これはVAなのかVEなのか」を共通認識として持つことが第一歩です。
これにより、関係者の視点が統一され具体的ワークにつなげやすくなります。
ステップ2:価値(Value)の再定義と「顧客目線」導入の徹底
次に最も重要なのは、「価値(Value)」とは何かを現場視点+顧客視点で再定義することです。
部品や工程のコストを見るだけでは十分とは言えません。
その部品や工程が「本当に顧客にとって必要なのか」「機能を満たしているのか」の根本を分析するのです。
例を挙げましょう。
自動車の組立工程で「配線ハーネスの取り回しが悪く工数過剰」という課題があるとします。
現場では「工程短縮がVA」と見られますが、そもそも顧客(自動車メーカー)にとって「配線の取り回しやすさ」の価値基準を再確認し、設計者を巻き込んで「構造そのものを根本的に見直す」ことも重要。
この視点変更が現場力の強化につながるのです。
ステップ3:アナログ文化への組み込みとツール化
最後に、昭和的なアナログ文化が色濃く残る現場こそ「型」として落とし込み、繰り返し現場実践できる標準化が不可欠です。
たとえばVAでは、
– 改善対象リスト化→現場ヒアリング→現状分析→ムダ排除案→試作・効果測定
といった「定型フォーマット」を作ります。
VEであれば、
– 顧客要望定義→価値分解→代替案提案→設計検証→コスト評価
という「標準ルート」を必ず踏むよう仕組み化します。
エクセルやアナログ帳票で可視化して「数字と現物」を結びつけるだけでも、現場の納得感は飛躍的に高まります。
これが昭和的現場にVA/VEを根付かせるコツであり、バイヤーやサプライヤー双方にとって「合意形成の道具」にもなるのです。
バイヤー視点:調達購買が押さえておきたいVA/VEの勘どころ
バイヤーの立場では、VA/VEを以下のように活用できます。
– 自社エンジニアとサプライヤー現場を巻き込み「構成部品ごとにVA実践→コスト根拠の明確化」
– サプライヤー提案をVE観点で評価し、図面段階からコストダウン余地を最大化
特に現場同士が「肌感覚の数字や作業」をテーブルに持ち寄ることで、「ただ値切るだけ」から一歩進んだ「ウィンウィンの原価低減」の実現が可能です。
原価低減提案は数字論だけでなく「現場実践のストーリー」を組み立ててこそ、全体最適の調達へとつながります。
サプライヤー視点:バイヤー想定を超えるVA/VE提案力とは
サプライヤーの側が原価低減競争を戦い抜くには、「設計・製造・調達の社内三位一体」のVA/VE組織づくりが効果的です。
よく「バイヤーからの値下げ要求が厳しくて困る」という声を聞きますが、逆に「自社でVA分析を行い、コストの中身を見せられる」ことが差別化ポイントになります。
さらに、量産立ち上げ前からVE提案を働きかけ、材質・加工方法・外注先選定まで具体案を持ち込めれば、バイヤーにとって不可欠なパートナーとなるでしょう。
その際のコツは「現場検証の記録と効果シナリオを“見える化”した資料」を準備し、単純な値下げ交渉に終始しないことです。
これが成熟したサプライヤーの強みになります。
まとめ:原価低減は「続ける現場型」の型づくりで差が出る
VAとVEの違いを知り、「現場」で実践するワークの型を身につければ、単なるコストダウンの一歩先、「本当に価値ある現場改革」へと進化できます。
– 目的とフェーズの切り分け
– 価値基準と顧客視点の再定義
– 繰り返し回せるアナログ型ツール化
これらの原則に基づいてVA・VEを運用すれば、昭和的現場でも、DX推進企業でも、確実に成果を出しやすくなります。
バイヤーを目指す方、サプライヤーの立場で一歩先を行きたい方、現場で数字と現物を武器にしたい製造業従事者の皆様——
「本気の原価低減」を今以上に加速する現場ワークを、ぜひ今日から自職場で始めてみてください。
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