投稿日:2025年8月26日

共同Kaizenイベントで短期的コスト成果を現場から引き出す進め方

はじめに:製造業現場での「共同Kaizenイベント」の本質とは

製造業では日々、コスト削減や品質向上など多岐にわたる課題に直面しています。

従来は自社のプロセス改善が重視されてきましたが、グローバル競争の激化やDXの波により、取引先と一体となった「共同Kaizenイベント」が急速に注目されています。

共同Kaizenイベントとは、メーカーとサプライヤーが綿密に連携し、現場で短期間に目に見えるコスト削減などの成果を出す取り組みです。

この記事では、20年以上の現場経験から得たリアルな知見、そして昭和から続くアナログな慣習をどう越えていくかを交え、実践的な進め方をお伝えします。

なぜ今、「共同Kaizenイベント」が必要とされるのか

単なるコスト削減活動ではない本当の狙い

かつてはメーカーが取引先に一方的なコストダウン要求を突きつける光景が多く見られました。

しかしその先には「疲弊した現場」「不良率の上昇」「真の信頼関係の希薄化」といった副作用が残ります。

現代の製造業は、複雑化したグローバルサプライチェーンのなかで、サプライヤー1社だけ、メーカー内だけの改善では抜本的な成果が出しづらくなっています。

こうした背景から「意図と意図」「ノウハウとノウハウ」を掛け合わせ、現場力を統合する共同Kaizenが不可欠なのです。

昭和のアナログから脱却できるか?これからの現場マインド

多くの現場ではいまだ紙の帳票、口約束、経験頼りの仕事ぶりが残っています。

一方で世界を見ると、デジタルツールやAIを活用した相互連携が標準化されつつあります。

しかし、現場を根本から変えるのはテクノロジーではなく、現場の「意識」と「熱量」です。

共同Kaizenイベントは、そのきっかけとして大きな役割を果たせます。

共同Kaizenイベントの進め方:5つの実践ステップ

1.現場観察と課題の「共感ベース」洗い出し

開始前のポイントは、バイヤー、現場担当者、サプライヤーがフラットに現場の「困りごと」を列挙することです。

書類上のコストデータだけでなく、「段取り替えが煩雑」「不良発生時の情報伝達にタイムラグ」など、生の声に耳を傾けます。

表面的な指摘や形式的なチェックシートではなく、現場で働く方々との「共感」が成功の第一歩となります。

2.「あと一歩で成果が出る」ギャップの特定と見える化

現状と理想のギャップを洗い出したら、今すぐ着手できるもの、中長期に手を付けるべきものに優先順位をつけます。

「これさえ取り除けば、短期間でコストが落ちる」など、具体的な改善テーマを見える化することが重要です。

その際、現場視点で「非効率」の原因を深堀ることが、ラテラルシンキング(水平思考)的な発見につながります。

3.現場主導のアイデアワークショップ

改善テーマが決まったら、両社が現場視点で知恵を持ち寄るワークショップを実施します。

現場社員、パートさん、設備担当、品質管理、バイヤー…多様な職種を巻き込むことが斬新な案や、すぐに試せる「実践策」の創出につながります。

形式張った討議ではなく、「なぜ、こうなっているのか?」を納得いくまで問い直してください。

ときには「前例がない」「本当にできるのか?」といった声も出ますが、10%でも改善が見込めるならまず動くことが大切です。

4.短期成果を出す「トライアル&エラー」サイクル

イベントのゴールは、会議で終わることではありません。

洗い出した改善策を、小さく、速く、現場で試行してみること。

例えば工具や治具の配置変更、作業手順の見直し、人員配置の柔軟化など「すぐできること」から始めましょう。

これを連続的にPDCAで回し、「成果」を数字や写真で可視化すると、参加者のやる気も維持できます。

5.「見える成果」の社内外共有と、継続Kaizenへの布石

短期的な成果(例:一カ月で段取り時間が20%短縮、廃棄ロスが半減等)は、事前と事後の比較データとしてまとめます。

成功例・失敗例を現場でオープンに共有し、「どうすれば次うまくいくか」に結び付けることで、イベント単発で終わらない継続的なKaizen文化の布石となります。

コスト削減の成果は「現場にしか見えない」?進化する現場力

数値×現場体感=本当の納得感

調達購買部門ではつい金額インパクトばかりに目が行きがちですが、現場主導のKaizenで得られる成果は「数字に現れにくいムダとストレス低減」「現場の自走意識」といった副次的効果も大きいです。

経験的に、「数字化できないけれど現場が納得する」成果ほど、長期的には企業全体の競争力を作ります。

なぜ現場を巻き込むとコスト成果が加速するのか

その理由は、現場が「あなたと一緒にやっている」と感じることで、知恵が生まれ、持てる力を最大限に発揮できるからです。

バイヤーや管理職が主導するだけではなく、現場を対等な「パートナー」「プレイヤー」と位置付けることで、机上では思いつかなかったブレークスルーが生まれます。

ラテラルシンキングが生む、新たなコスト改善の地平

現場×現場コラボ=業界の壁を壊す

既存のやり方にこだわらず、サプライヤーとメーカー、さらには他社同士の現場の知見まで柔軟に取り入れることで、従来では考えられなかった大胆な解決策が見えてきます。

例えば「他業界の段取り短縮ノウハウを自動車向けにも応用してみる」「サプライヤーの社内改善手法を参考に自社現場も変える」など、一歩先行く発想でKaizenを加速できます。

昭和の慣習から“協創”へ―現場が主役の新しい産業像

共同Kaizenイベントは、「下請け-発注者」の一方通行な力関係を超え、連携を軸にした日本のものづくり産業への進化の可能性を秘めています。

現場スタッフも「我慢」「指示待ち」から、「自分たちが変える」「価値を共創する」意識変化を体感できるはずです。

まとめ:今すぐ現場で始めたい“本質的”な共同Kaizenイベント

共同Kaizenの本質は、「持続的な信頼関係」「現場で自走する改善文化」「数字以上の幸福度」の三つです。

外から与えられるコスト削減指令では、現場を本当に動かすことはできません。

今日からできる小さな変化、自分と現場、サプライヤーの「壁」を解きほぐす一歩を踏み出しましょう。

20年以上製造現場で試行錯誤した経験から、真に力のあるKaizenは、現場が主役です。

あなたの現場で、ぜひ「協創」と「ラテラルな発想」を武器に、次のコスト成果を実現してください。

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