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未来予測ロードマップを活用し研究開発を事業利益へ結び付ける方法

目次
はじめに:変化を求められる日本の製造業
日本の製造業は、昭和から続く伝統的なものづくりの精神を土台としながら、時代ごとの変化に対応して発展してきました。
しかし現代では、グローバル化やサプライチェーンの複雑化、デジタル化、SDGsへの対応といった新たな要請が次々と生まれています。
これらの環境変化のなかで、従来の「技術志向・現場主義」だけでは経営の持続性が危ぶまれるという危機感を、多くの企業や現場リーダーの方々が感じているのではないでしょうか。
なかでも大きな課題となっているのが、研究開発で生まれる技術の「事業化」や「事業利益への結び付け」です。
本記事では、製造業の現場で20年以上培った視点を活かしつつ、未来予測ロードマップを活用して研究開発の成果をいかに事業利益へとつなげるかを、具体例を交えて詳しく解説します。
未来予測ロードマップとは何か
そもそもロードマップとは?
ロードマップとは、「経営ビジョン」や「成長戦略」を実現するために、いつ・どの段階で・何に取り組むべきかを時系列で可視化する“行動計画表”のことです。
もともとIT業界や自動車業界など最先端分野で多く使われてきましたが、今やほぼすべての業界で経営の羅針盤として活用されています。
未来予測ロードマップの特徴
未来予測ロードマップは、社会や産業の“未来像”を起点に、技術・商品・業務の革新が「いつ・どのように実現されるか」を逆算で描くことが最大の特徴です。
この手法は、「今ある技術をどう使うか」にとどまらず、「将来あるべき姿に到達するために必要な研究開発」や「市場のタイミングでの事業化」を、俯瞰しつつ具体的に落とし込める点に強みがあります。
アナログ産業こそ取り入れるべき理由
今もなおアナログ的な業務習慣が根強い日本の製造業では、ロードマップ活用が十分浸透していません。
ですが、「計画に強い現場作業力」と「将来ビジョン」を組み合わせた未来予測ロードマップこそ、昭和的“頑張り”の限界を突破し、次代の事業利益貢献を生み出す基盤になり得るのです。
未来予測ロードマップがもたらすメリット
研究開発と事業化の断層を埋める
製造業では、「よい技術はできたがビジネスにならない」「事業部と研究所が乖離している」という声をよく耳にします。
これは、開発テーマの選定が「社内の都合」や「研究者の思い付き」に偏り、マーケットや顧客価値の変化を見据えた計画へと組み込めていないためです。
未来予測ロードマップを元に技術テーマや事業化領域を整理すれば、「どんな技術をどの市場に・いつまでに届けるか」まで明確になり、社内の“断層”を解消できるようになります。
サプライヤー・バイヤー双方の視点をつなぐ
バイヤーや購買担当者が求めるのは、「いつ・どんなスペックの製品が・どの量で市場に出てくるか」という長期的かつ具体的な情報です。
ロードマップ導入済みのサプライヤー企業は、将来あるべき商品・サービス像とその根拠を取引先に説明できるようになり、協同開発や価格交渉でも有利に働きます。
また、バイヤー目線でも「どのサプライヤーなら自社ロードマップのパートナーになれるか」という基準が明確になり、戦略的な取引先選定に役立ちます。
研究開発投資の収益化サイクルを短縮する
特に日本の製造業では、研究開発のリードタイムが長く、投資から回収まで数年単位になるのが一般的です。
未来予測ロードマップなら、KPI・マイルストーンを具体的に設定できるため、プロジェクトの途中段階で「いま何割進捗しているのか」「どこで方向転換が必要なのか」が明確になります。
先送りしてきた収益化の判断を適時に下せるため、経営資源の再配分や新規事業投資も迅速に行えるようになります。
未来予測ロードマップを実際に作成・活用する5つのステップ
1. 顧客・市場から逆算して未来像を描く
まず押さえるべきは「業界や社会は10年後どうなっているか」「どんな市場・技術トレンドが主流になっているか」という全体像です。
例えば電気自動車やカーボンニュートラル、省人化自動化など、明確なテーマがあれば、それぞれの技術・市場の成長曲線や法規制動向を調査します。
現場へのヒアリングも重要です。営業や現場オペレーターの声に耳を傾け、想定される課題やニーズを“現物現場”として盛り込んでいきます。
2. 技術・商品テーマを構造化し、選定する
次にするべきは、「どの技術・商品が、いつごろ、どのような役割で必要になるか?」を階層(ツリー)形式で整理することです。
ここではR&Dと生産・調達が密に連携するのが大切です。研究開発部門は「どの技術を、いつまでに何のために確立するか」、生産部門や調達部門は「原材料や外部供給体制をいつまでに確立しなければならないか」を示し合います。
3. マイルストーンと指標を設定する
ロードマップは「ただの夢物語」で終わらせては意味がありません。
技術的な課題(例:歩留まり80%達成、特性AをBまで向上するなど)、市場評価のポイント(例:取引先〇社での試験導入、規格認証取得)など、測定できるマイルストーンやKPIを段階的に設定し、進捗評価基準とします。
4. オープンな情報共有とアジャイルな見直し
昭和型の製造業現場では、「計画=秘密」「途中変更=悪」と捉えられがちですが、時代のスピードはもはやアナログ思考では対応しきれません。
ロードマップは全社・プロジェクトメンバーで可視化し、適宜外部環境の変化や顧客声、失敗事例に応じてアジャイル(機動的)に見直すべきです。
バイヤー・サプライヤー間でもロードマップの一部共有を進めることで、開発段階から持続的なパートナーシップを構築できます。
5. 研究成果の「出口戦略」を明文化する
成果だけ出しても、事業化・収益化に繋げられなければ投資は無駄になってしまいます。
初期段階から「成果をどの市場でどう販売し、誰にどんな価値を届けるか」や、「顧客課題にどんなレベルで応えるか」といった出口設計を明記しましょう。
その上で、どの部署・どの担当者が、どのフェーズまで主導するか役割分担を明確にします。これがR&Dの“事業貢献”を促進する最大の秘訣です。
実践事例:昭和型組織でも変われたロードマップ革命
ある大手部品メーカー(自動車業界系)では、従来は「上司の勘と経験」「営業の号令」だけで開発テーマが決まり、“いつまでに何をやるのか”が曖昧でした。
しかし、電動化・グローバル化の波に押され「事業利益に直結する付加価値創出」を目指し、未来予測ロードマップ手法を導入しました。
すると、営業・開発・製造の各部門が同じシートを使うことによって、以下のような変革が実現しました。
・研究開発テーマの優先順位が明確化し、無駄な投資が大幅に削減
・部門責任者が収益責任を持つことで「リリース時期=利益回収時期」の意識共有が進展
・サプライヤーとの共同ロードマップ作成により、新規材料や設備投資のタイミングがジャストフィット
・現場サイドから出た「現物現場」の声(生産性課題、人材育成課題)が研究テーマに反映
特に印象的だったのは、バイヤーから「御社のロードマップが見えるので、設備投資やOEM契約判断が早くなった」という声があがった点です。
これにより売上・利益の両側面からビジネススピードが格段に向上し、「現場の頑張り」から「全社の戦略的成長」へと脱皮を遂げることができました。
まとめ:新たな地平を切り拓くために
未来予測ロードマップの導入は、単なるツール活用にとどまりません。
現場の知恵・過去の叡智を活かしつつ、組織や部門間の壁を乗り越えて「ありたい未来から逆算する発想」――ラテラルシンキングによる技術経営の地平を切り拓く第一歩となります。
今後の日本製造業が世界と伍していくためには、まさにこの“未来起点”の変革が不可欠です。研究開発・バイヤー・サプライヤー、そして経営層・現場リーダーが一体になり、「未来から逆算した事業利益」の実現に挑戦していきましょう。
この記事が、ものづくりの未来を担うバイヤーの皆様や、サプライヤーとして新たな付加価値提供を目指す現場の皆様にとって、一歩先の実践へのヒントとなれば幸いです。
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