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見える化は一画面から始める現場テレビボードの作り方

目次
はじめに
現場の「見える化」が叫ばれて久しいですが、実際には紙の帳票や口頭伝達による情報共有が今なお幅を利かせている工場現場は珍しくありません。
長年、製造現場を歩いてきた私が感じるのは、見える化=高度なITシステムや高額な投資と捉えがちな現実と、それをうまく現場に根付かせる難しさです。
今回は、「現場テレビボード」を使って、“見える化”の第一歩を一画面から始めるコツや導入事例、陥りやすい罠、そして成功のポイントについて、現場目線で深堀りしていきます。
なぜ今、見える化が必要なのか?
問題発見→原因究明→対策徹底 その壁
多くの現場では「問題がなかなか掴めない」、「起きた不良の原因が現場でわからない」、「改善策が形骸化」という悪循環が繰り返されています。
その根底には「情報が見えていない」ことが横たわっています。
ラインの稼働状況、生産進捗、歩留まり、不良件数などの情報が、その場で誰にも理解できる形で共有されていれば、現場の誰もが問題意識を持ち、改善に取り組む気運が生まれます。
昭和型管理から令和型現場コミュニケーションへ
昭和から続く帳票による管理や、人頼み、暗黙知によるコミュニケーションは、属人化の温床となりませんか?
しかも各世代間の情報感度格差は拡大し、現場と管理層、ベテランと若手、正社員と派遣などの間に情報の壁ができやすいのです。
これを越える一手が自分たちの現場独自で取り組む「見える化」なのです。
「現場テレビボード」って何?
「現場テレビボード」とは、いわば現場用の“情報掲示板”を、液晶モニターやタッチパネルで代用したもの。
要は、ライン脇や現場事務所など、皆が目に付きやすい場所に、リアルタイムで必要な情報を一画面表示する仕組みです。
大手でも中小でも、「まずは一画面」に情報を絞るのが成功のカギです。
なぜ一画面が大事なのか?
人が受け取れる情報量には限界があります。
複数クリックが必要なシステムや、複数ボードに分かれた見える化では、本質的な“現場浸透”はしません。
大切なのは、今この瞬間「何をみんなに伝えるか」を一画面に集約し“現場コミュニケーションのハブ”とすることです。
見える化一画面に何を表示したら効果的か?
現場の課題に合わせた“選択と集中”
「いっぱい情報がある方が安心」というのは錯覚です。
一画面に詰め込むと、読み解けずに却ってスルーされてしまいます。
現場の皆が必ず見て欲しい“最重要指標KPI”を明確にし、選択と集中で項目を絞ります。
例えばこんな一画面KPI
– 生産計画と現在の進捗率
– 本日の不良件数と不良順位
– アンドン(稼働・停止・異常・アラーム)
– 稼働率
– 安全・無災害日数
– 今日のひとこと・会社方針
これらを大きな数字、わかりやすいグラフや色調で表示し、現場で一瞬で“今の状況”がつかめることが大切です。
現場テレビボードの導入ステップ
1. 目的・表示内容の明確化
まずは「なぜやるのか」「何を伝えたいのか」をプロジェクトメンバー(現場作業者、管理者、品質、保全など)と膝を突き合わせて徹底議論します。
次にKPIの選定です。
既存の管理表や日報等に振り回されず、“何が本当に現場に伝わっていないか”を現場でヒアリングします。
2. テレビボードの設置場所の工夫
視線が集まりやすい作業エリア、通路脇、休憩所前など、情報が自然に目に入る場所を選びます。
「わざわざ見に行く」仕組みはNGです。
3. 運営ルールの作成と運用メンバー選定
表示内容の更新頻度、誰が入力・管理を担当するか、どのタイミングでアップデートするか、社内ルールを明確にします。
属人化を避けるため、定期的なミーティングや教育もセットにします。
4. 実際のツール選定と運用
PC用の大画面ディスプレイをHDMIでそのまま接続する“お手軽派”、市販の電子掲示板サービスを活用する“IT活用派”、Excel+PowerPoint画面を投影する“ローコスト派”など、自社の規模やITリテラシーに応じて様々な運用例があります。
大切なのは「一瞬で伝わるか」です。
失敗しやすい落とし穴・課題
「システム化=見える化」と勘違い
高機能なシステム導入やIOTセンサー導入が見える化だと誤認し、現場従業員の“使いこなせず形骸化”が多発します。
現場テレビボードは「現場主体」となること、「見る人が主役」であることが不可欠です。
情報過多・逆に見ない化
項目を増やしてしまい、結局誰もちゃんと見ない、読解できない情報掲示板になっていませんか?
一画面だけに、ムダを省いてKPIを絞り込む。
この“必要最小限”へのシンプル化が根付かないと失敗します。
運用責任が不明瞭で属人化
「担当者が休みの日は更新されていない」「現場の誰も主人公になれず放置される」といった属人トラブルは致命的です。
更新ルールを明文化し、あらかじめマニュアル化・多能工化しておきましょう。
テレビボード見える化がもたらした現場変革事例
現場が“見える場”を持つ力
・A社(自動車部品):日ごとにラインの進捗・品質情報と異常発生件数を表示。
不良ゼロ運動を仕掛ける。
現場リーダーからの改善提案が倍増。
・B社(金属加工):以前は班長が日々手書きしていたホワイトボードをテレビ表示にし、一画面で班毎の生産数、不良数、カイゼン活動進捗を共有。
休憩時間には小集団でテレビボードを囲み「昨日はここの段取りで…」と現場改善の議論が活発化。
・C社(サプライヤー 比較的小規模):一画面で主要バイヤー毎の納期遵守率・品質KPIを表示。
「次の納期遅れがどこで起こりそうか」と皆でリアルタイム把握、対策も現場主導に。
コミュニケーションと巻き込み力の向上
テレビボード前に集まってKPIを確認することで、ベテランと若手、社員と派遣、現場と事務方、営業と生産など、縦横の壁を越えた“今、現場がどこで苦しんでいるか、頑張っているか”の体感値が会社風土として根付き始めます。
見える化を現場浸透させるラテラル思考的アプローチ
現場の一歩先を読む“空気の見える化”
数字や指標だけでなく、「今日印象に残ったヒヤリ事例」「社長の一言」「今月の目標」「新人の気付きを共有」といった、データには現れにくい“空気感”も一画面の片隅に置いてみてください。
これが現場に柔らかさやワンチーム意識を創り出します。
スマホやタブレット連携のカスタマイズにも着眼
高額なIOT導入は難しい企業でも、既存のスマートフォンやタブレットを現場ボードと連動させるサービスやアプリ(Googleスライドや安価なSaaS系)をアレンジして活用してみてはどうでしょう。
「朝のラジオ体操前にKPIをみんなで確認」「昼休憩時のチームカンファレンスの前のひと押し情報」として小さく始めるのがコツです。
サプライヤー・バイヤーの立場で活用する見える化
サプライヤーなら“バイヤーへの透明性”を高めるツールに
顧客バイヤーが工場監査や定例報告会議でKPIを確認したがる現実、皆さんも経験ありませんか?
自社の一画面ボードをダッシュボードとして活用し、納期信頼性・品質実力・改善活動の“動的な証拠”を、現場のディスカッションの起点にできます。
これは価格競争に終始しない、新たな信頼構築の一翼になるのです。
バイヤー視点でのチェック・管理にも応用
購買担当、バイヤー側も、一画面で納期や品質データが可視化されていれば、調達先の現場力や改善への本気度をリアルに把握できます。
形式的な報告書よりも臨場感のある“現場現物現認”で、深いパートナーシップ確立にもつながります。
まとめ〜「一画面」だからこそ変革が始まる
多機能、高額、高度なシステムではなく、まずは実際の現場の“みんなが見る・気づく・動く”ための一画面テレビボードから始めてみませんか。
“今この瞬間の現場がどうなっているか”を語れるきっかけさえつくれれば、コミュニケーションが生まれ、改善が連鎖し、現場が変化していきます。
昭和の管理手法の良さも、最新のITツールも、すべては「人が動くための見える化」につながったとき本当の価値となります。
まずは、小さく現場で一歩踏み出す勇気と工夫が、「見える化の新たな地平線」を切り拓く鍵なのです。
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