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OEM商品化プロジェクトの進め方と失敗を防ぐ管理方法

目次
はじめに:OEM商品化プロジェクトの現場的意義
製造業の現場では、日々多くのOEM(Original Equipment Manufacturer)商品化プロジェクトが動いています。
競争力維持や市場拡大、新規取引先の開拓など、OEMの重要性は年々高まっています。
しかし、プロジェクトを進める中で「もっと効率よくできないか」「失敗を減らせないか」という悩みは絶えません。
現場には昭和時代から続くアナログな商習慣や、“とりあえずやってみる”で針路が曖昧になる空気も根強く残っています。
この記事では、長年現場を歩み続けた立場から、OEM商品化プロジェクトの進め方と、失敗を防ぐリアルな管理手法を解説します。
バイヤー、サプライヤー、及びこれから製造業を志す方へ、役立つヒントをお届けします。
OEM商品化の基礎知識と業界動向
OEMとは何か?その現場的な意味合い
OEMとは、お客様(発注側)のブランドで商品を生産する仕組みです。
発注者を「バイヤー」、生産者を「サプライヤー」とも呼びます。
バイヤーは企画や販売チャネル、プロモーション力を持っており、自社生産リスクや初期設備コストを抑えたいと考えています。
サプライヤーは既存の設備やノウハウを生かし、ライン稼働率や収益安定化を狙います。
OEM取引の実態は、単なる“委託生産”の枠を超え、両者の強みを組み合わせる戦略的パートナーシップに進化しています。
なぜ今、OEMが選ばれるのか?
現代のものづくりは、市場環境の変化や顧客ニーズの多様化に素早く応えることが求められています。
新商品を自社で全て設計・生産するのは、時間もコストもかかります。
また、人的リソースや在庫リスクも大きいのが現状です。
そこでOEMが注目されています。
特に中小規模メーカーや異業種参入企業では、OEMを活用することでスピード感と柔軟性を両立させつつ、量産・品質管理の知見を活かすことができるのです。
むしろ“持たざる経営”やDX推進を掲げる動きの中、OEMパートナーの選定やスキル発揮が競争力のキーになっています。
昭和的な商習慣が残る現場のリアル
一方、多くの製造現場では、今もアナログな商談文化や慣習が根強く残っています。
FAXや電話中心のやり取り、口頭発注、場当たり的な管理が横行する現場も珍しくありません。
書類の不備、担当者の勘や経験頼み、意思決定の曖昧さがトラブル要因になりやすいのです。
表面上はDX化・自動化が進んでいても、現場では「慣れ親しんだやり方こそ安心」「突発対応は腕の見せどころ」といった昭和マインドも健在です。
こうした風土を踏まえつつ、着実にプロジェクトを成功へ導くためのステップを見ていきましょう。
OEM商品化のプロジェクト進行ステップ
1. バイヤー・サプライヤー間の信頼関係構築
全てのスタート地点は、“お互いの立場と事情を理解すること”です。
バイヤーはなぜOEMを選び、自社のどこに強み・ニーズがあるのか。
サプライヤーはどの程度まで提案・生産対応が可能か。
リスクや弱点も早めにオープンにし、「黙って美点のみ語る」だけの商談から脱却しましょう。
現場訪問やWeb会議、社員間の相互交流など、リアルな距離感を大切にすることが、後々の誤解やトラブル防止につながります。
2. 商品企画・仕様決定フェーズの要点
商品コンセプトやターゲット顧客、意匠・デザイン、サイズやロット、必要機能など、要件をできる限り可視化します。
この際、イメージだけで流さず、サンプル品や図面、Q&Aリスト、RFP(提案依頼書)化を推進しましょう。
現場は「分かったフリ」が一番の敵です。
また、仕様変更や曖昧な合意が続くと、後工程で大きな手戻りやコスト増につながります。
POC(試作検証)やベンチマーク品との比較も積極的に取り入れます。
3. コスト・納期管理の仕組み化
OEM商品の肝はコスト競争力と確実な納期遵守です。
見積り時点から、“単なる部品原価+工賃”ではなく、物流費・管理費・金型償却・品質コストなども見積もりに盛り込みます。
できれば「コストブレイクダウンシート」と「リードタイムチャート」をエクセルなどで共通運用し、多少の手間でも“見える化”を徹底しましょう。
納期についても、“○月下旬”などの曖昧な表現は排し、「工場出荷日=バイヤー到着日」の定義を明確にすべきです。
複数拠点調達や海外生産の場合、国際物流リスクや関税、国内輸送の実態まで油断してはいけません。
4. 品質・生産管理の徹底
OEM商品で最もシビアに問われるのが品質です。
“いつもの自社基準”ではなく、バイヤーの求める品質レベルを細かく打ち合わせ、合意文書やサンプルで明文化しましょう。
品質規格書やQC工程表、外観・機能検査のチェックリストなどを用意し、双方で突き合わせを行います。
工程内検査や工程能力指数(Cp,Cpk)の確認、トレーサビリティ(追跡性)の担保も重要です。
現場任せにせず、「逸脱検知→即報告→是正」というルールを事前に決めておくことで、リカバリー力が段違いに高まります。
5. コミュニケーション・プロジェクト管理
プロジェクト進行中、最も陥りやすいのが“伝言ゲーム”です。
営業、技術、現場、生産管理、品質管理…社内のタテ割りや「横串」が刺さっていなければ情報はすぐに途切れます。
定例会議(Web/対面)の設定、週次レポート、議事録&ToDoリスト化、チャットツール活用で進捗管理をシステム化しましょう。
ここが昭和現場脱却の一番のポイントです。
同時に、万が一トラブルが起きた場合の連絡体制、意思決定ルートを図式・リストで共有しておきます。
失敗事例から学ぶ、OEM管理の落とし穴と回避策
よくある失敗パターンとその要因
OEMプロジェクトでよくある失敗には以下のようなパターンがあります。
・伝達ミス、もしくは仕様曖昧化によるコスト・納期・品質の手戻り
・バイヤーとサプライヤー間の認識ズレ(「これくらい分かるだろう」思考)
・品質不良による全数返品→生産計画崩壊
・外注管理・部品調達の見通しが甘く、生産着手が遅れる
・責任のなすりつけ合い、曖昧な合意により、問題解決が長期化
これらは、「見える化」と「仕組み化」、そして「現場同士のリアルな連携」が弱いことに起因しています。
管理面から失敗を防ぐ5つのチェックポイント
1. 要件定義書・図面・仕様書の“引き渡し・承認プロセス”を確立し、都度双方押印やデータ管理を行うこと
2. 変更管理フローを明文化し、変更発生時の決裁ルート、コスト・納期インパクトの見える化を徹底すること
3. 工程内管理・品質監査に第三者目線を入れ、事前の見逃し・馴れ合い防止を図ること
4. 「前例踏襲」「経験値頼り」から脱却したチェックリスト運用で、思い込みを排除すること
5. トラブル時ほどトップが表に出て、“チーム対チーム”で誠実対応する文化の醸成
昭和マインドの「長いものに巻かれろ」精神は時に短絡的な付和雷同や忖度を生みます。
これを克服するには、データや共通言語、心理的安全性を担保したチーム運営が不可欠です。
バイヤー・サプライヤーの双方から見る理想のプロジェクト像
バイヤー目線では、「自社の価値提案を最大化でき、リードタイムや品質トラブルがないパートナー」を強く求めています。
一方、サプライヤー側では「手離れが良く、仕様・計画変更など無理難題を押し付けない発注者」と円滑な関係を望んでいます。
双方が“自分本位”ではなく、「相手にとって何がベストか」を考え譲歩し合える関係性が理想形です。
本質的なWin-Winの姿を模索し、単なる“スポット取引”にとどまらず、次のプロジェクトや共同開発へと発展していくことが、持続成長の秘訣といえます。
まとめ:現場の知恵×仕組みで新たな地平線へ
OEM商品化プロジェクトは、古き良き現場の知恵と、デジタル時代に即した仕組みを融合させてこそ真価を発揮します。
アナログ現場の良さ(顔の見える安心感、職人意識、迅速な柔軟対応)はそのままに、可視化とシステム化で抜け漏れを埋め、リスクヘッジ力を高めていくこと。
昭和のやり方から脱却し、“現場×現場”の知恵と熱意を活かしたプロジェクト運営を推進しましょう。
製造業に関わる全ての方へ、OEM商品化の成功が、産業発展と現場の成長につながることを心より願っています。
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