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材料ロスのKPI化で板取りと棒材取りの改善を価格化する方法

目次
はじめに:材料ロス問題と現場の現実
製造業の現場では、材料ロスの問題は昔から深刻な課題です。
板材や棒材といった原材料を効率よく使えないことで、年間数百万円〜数千万円規模のコスト増が生じている現実があります。
さらに、購買部門は日々コストダウンを迫られ、生産現場は過去のやり方に固執しがちなため、板取りや棒材切断の最適化は後回しになりがちです。
こうした状況を打破し、昭和的なアナログ現場から一歩抜け出すために、材料ロスを「KPI」として定量的に管理し、「板取り」と「棒材取り」の改善を“価格化”して価値を見える化する手法を解説します。
材料ロスのKPI化とは何か?
材料ロスのKPI化とは、板材や棒材などの原材料を製品化する際に発生する無駄な部分(スクラップや端材)を定量的(数値的)に把握し、改善の指標とすることです。
ポイントは、ロス量をただ記録するだけでなく、それを「損失額」に換算して全社で共有する体制を作ることです。
これにより、購買部門と生産部門だけでなく、経営層も巻き込んだ最適化が実現しやすくなります。
なぜKPI化が必要なのか?
多くの現場では、材料ロスは「仕方ない」「毎回同じ」など、曖昧な認識で処理されがちです。
しかし、ロスをKPI管理することで、具体的な目標設定・現状把握・原因分析・改善活動がサイクルとして回るようになります。
さらに、ロスを金額ベースで可視化すれば、現場の誰もが“自分ごと”として取り組みやすくなります。
板取り・棒材取りの現場改善を価格化する仕組み
ここからは、材料ロスの「価格化」—すなわち失われた原材料コストを金額に換算し、その改善効果も金額で示す—ための現場目線の手法を解説します。
板取りのKPI化と価格換算
板材(鋼板・アルミ板・樹脂板など)は、切断レイアウト(板取り)次第でロス率が大きく変わります。
KPI策定の流れは以下の通りです。
1. 材料投入総量と製品取り数を算出(設計と実績データを取得)
2. 実際の残材(端材・スクラップ)の重量・面積を定期測定
3. 材料価格と掛け合わせて、ロス金額を月毎に可視化
ここで重要なのは、材料在庫の過大や仕掛り在庫との関係もモニタリングすることです。
残材活用やリサイクルの売却収入なども合わせ、純粋な損失分としてのKPIをひと目で分かるようにします。
例えば、従来は板取り効率75%だったものを改善し、80%に引き上げることで、「●●万円の削減効果」とアピールできます。
棒材取りのKPI化と価格換算
棒材やパイプ材の切断(切出し)の現場では、「歩留まり率」をKPIとします。
棒材長さごとのカットパターンから、残材となる切断端や端材を集計します。
1. 使用した棒材の総重量(または長さ)、カット本数を集計
2. 実際に廃棄された端材量を記録
3. 棒材値段から逆算し、はい廃端材コストを算出
設計部門—生産部門—購買部門が情報を共有し、「最適カットパターン」の検討や“端材のリユース先”を開拓することで無駄を低減できます。
たとえば、「5m棒材から250mmカットを●個作る」場合には、最適な本数や長さ、発生する端材コストのシナリオを複数シミュレーションし、「最もコストが低い組み合わせ」を選択します。
改善効果も数字で提示すると上層部や他現場へアピールしやすくなります。
昭和流アナログ現場が陥る“やらない理由”を突破する
材料ロス改善を妨げているのは、実は「昔からこうだった」「現場負担が増えるから」というアナログな思考です。
KPI化・価格化を進めるうえでよくある現場の声と、その突破方法を解説します。
「手間がかかる」「測る余裕がない」への対策
現場スタッフの負担を最小限に抑えつつ、データを自動収集する工夫が重要です。
・端材やスクラップを重量計でまとめて測定(都度記録は不要)
・CADやBOM(部品表)データを活用し板取りパターンを自動で算出
・バーコードやタブレットを利用して最小限の入力で済ませる
“現場のやる気”を引き出すには、省力化と「効果の見える化」をセットで提示します。
「過去の数値がない」場合の立ち上げ手順
データがゼロの場合は、いきなり精密な数値化にこだわりません。
最初は“おおよその推計値”でも良いので、今月のロス量・ロス金額を集計し、“前月比”や“昨年同月比”といった変化に注目します。
少しでも改善すれば「現場でこれだけのコスト削減を生み出した」と認められる風土を作りましょう。
KPI化・価格化がもたらす現場の変革ストーリー
部門の壁を越えた改善活動の連鎖
ロスKPIの数字が経営層・購買・生産・設計の全員に見える状態になると、“責任の明確化”と“自発的な改善”が進みます。
現場から「こんなカットパターンなら端材が減る」「B材の設計で材料コストが下がる」などのアイデアが自然発生します。
KPIのランキング表や掲示板に実名で載せたり、改善優秀者にインセンティブを出すことで、“やらされ感”から“自らやる”文化へ転換できます。
仕入先(サプライヤー)とバイヤーの連携強化
材料ロス削減は、単に現場だけでなく、仕入先とのコミュニケーションにも直結します。
例えば、「このサイズで直接納入してもらえばロス率が下がる」「特注長さで手配可能か」など、根拠のあるデータをもとに価格交渉・仕様調整ができます。
サプライヤーに対しても「御社の材料でどれくらいロス率が変わり、結果いくら安くなる」と具体的な提案が可能となります。
持続可能性(サステナビリティ)への波及効果
材料ロスが低減すれば、工場における産業廃棄物も減り、企業としてのサステナビリティ推進にも貢献します。
CSR活動や環境マネジメントへの波及にも繋がり、企業間競争力・社会的評価の向上にも好循環を生みます。
これからのバイヤー・現場担当者が身につけたい視点
材料ロスのKPI化・価格化は、単なるコスト削減手段にとどまりません。
バイヤーや技術・現場担当者が身につけるべき新しい着眼点を紹介します。
全体最適と現場最適のバランス感覚
例えば、「端材をゼロにするために小ロット発注を繰り返す」と、物流コストや在庫圧縮が逆に効率を下げる場合もあります。
材料コスト、物流費、現場作業性など“トータルコスト”を意識した判断力が求められます。
データドリブン発想の習得
従来の“勘と経験”だけではなく、データを元に提案し、成果を数字で証明する力が業界標準となりつつあります。
ベンチマーク企業のKPI、最新の板取り・切断シミュレーションツールなど、積極的な情報収集も重要です。
まとめ:材料ロスのKPI化・価格化こそ工場競争力の鍵
材料ロスのKPI化・価格化は、昭和的な「なんとなく勘任せ」の現場を脱却し、全体最適化を進める強力な武器となります。
板取りや棒材取りの現場で生まれる日々の“無駄”を、筋の通った“見える数字”とし、その改善効果も明確な価値として全社で共有すること。
これこそが、これからの製造現場・調達・購買・バイヤー・サプライヤーが目指すべき方向性だと私は確信します。
現場の力を最大化し、日本のものづくりに新しい地平線を開きましょう。
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