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プラスチック押出成形に係る自動車関連企業との技術提携方法

目次
はじめに:プラスチック押出成形の可能性と自動車業界の変化
プラスチック押出成形は、製造業の中でも特に広く利用されている基礎加工技術です。
押出成形によって生産される製品は、パイプやシート、異形材など多岐にわたり、自動車業界でも軽量化・コスト削減・量産性の観点から非常に重要な役割を果たしています。
昭和から続くアナログな現場でも、近年の産業構造の変化や自動車の電動化・環境対応など、従来とは異なる技術革新の波が押し寄せています。
本記事では、プラスチック押出成形を手がける企業が自動車関連企業と技術提携するための実践的な方法、現場目線で押さえておくべき最新動向、そして提携を成功に導くための戦略について深掘りします。
プラスチック押出成形の基本と自動車用途の動向
押出成形とは何か
押出成形は、加熱して軟化させた樹脂を金型(ダイ)から一定断面の形状で連続的に押し出す成形方法です。
材料は主に熱可塑性樹脂が使われ、代表例としてポリプロピレン、ポリエチレン、ABS樹脂、エンプラ合材などがあります。
この手法はパイプ・チューブ、各種トリム、コネクタ、ガスケット、ワイヤーカバー、インシュレーターなど、自動車のあらゆる箇所に活用されています。
自動車業界が求める“変化”
かつては金属部品が主力だった自動車業界も、燃費向上や軽量化、カーボンニュートラル対応の声に後押しされ、樹脂部品への移行・複雑な機能一体化が加速しています。
また、CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)の拡大により、従来なかった部品が次々と生まれ、可変構造・小ロット多品種・短納期対応、高付加価値要求が高まっています。
加えて、品質標準(IATF16949)、環境対応(ISO14001、カーボンフットプリント計測)、グローバル調達方針、安全基準など、押出成形メーカーにも高いレベルの対応が求められるようになりました。
技術提携を成功させるための心構えと準備
なぜ、“技術提携”が必要なのか?
単純な受注下請けから脱却し、自社の強みを活かした高付加価値パートナーを目指すために、技術提携は欠かせません。
新材料化・ハイブリッド材・難形成形・モジュール化など、自社単独では難しいテーマも、自動車メーカーやティア1メーカーと一緒に課題解決型で研究開発を進めることで、生き残りだけでなく新たな事業チャンスも創出できるのです。
昭和的商慣習が根強く残る壁を乗り越える
日本の製造業には、いまだ「発注者=強者、下請け=従者」「御用聞き姿勢」「暗黙の了解」など、アナログ的な商習慣が息づいています。
自動車関連企業とフラットな協業を実現するには、
– QCD(品質・コスト・納期)だけでなく、技術・開発力・データ活用力・コミュニケーション力
– 部分最適から全体最適へフォーカスを変える
– 「これまでどおり」にしがみつかず自社の業務・工程そのものをアップデートする
こうしたマインドと現場改善活動が不可欠です。
社内体制と技術データの準備
提携時には、「経験と勘」だけでなく、客観的なデータと仕組み化された技術が必要です。
たとえば以下のような準備が欠かせません。
– 技術標準書、管理図、各種工程管理帳票のデジタル化・整備
– IATF16949取得有無や品質監査の自己診断
– 再現性のある条件出し(圧力・温度・樹脂の流動分析等)
– 製品トレースやリコール時の要件を満たす履歴管理・ロット追跡
– 社内教育(資格化・階層別リーダー育成)
これらをきちんと整えておくことで、提携交渉や監査時にもスムーズに対応できます。
自動車関連企業から“選ばれる”押出成形企業の条件
1. 品質・安定生産力
量産ラインにおいて微小な品質不良やロット変動が許されない自動車部品。
SPC(統計的工程管理)、プレス成形との複合一体化、設備保全含む日常管理、設備トラブル時のBCP(事業継続計画)などが問われます。
2. 新材料への適応と技術力
バイオプラスチック、リサイクル材、発泡材など、「難しい」を武器に変える提案力・問題解決力を持つ技術屋集団こそが、選ばれる時代になっています。
顧客の開発チームと早い段階から材料選定・形状最適化に入り込み、共同設計を通じてコストダウンやブランド差別化に寄与できることが重要です。
3. 情報開示力・データ活用力
従来型の「あとは現場にお任せ」では、監査・トレーサビリティ要件に対応できません。
IoTセンサー、MES(製造実行システム)、AIによる歩留まり分析など、保有データを見える化し、顧客へリアルタイムで提供したり、共同で改善PDCAを回せることが評価されます。
4. 持続可能なパートナーシップ構築
一時的なコスト交渉や下請け構造から脱却し、長期的な「共創ビジネスパートナー」として相互の発展を目指す姿勢が求められます。
材料メーカー・加工業者・OEMとの水平連携、業界団体への積極参加、オープンイノベーション活動など、外部ネットワーク活用も大きな武器となるでしょう。
技術提携を始めるためのアプローチ方法
1. マーケットリサーチとターゲティング
まずはどの自動車サプライチェーンのどの層(OEM/ティア1/ティア2)が自社押出技術を本当に必要としているかを冷静に見極めます。
下記のような視点でリサーチを実施しましょう。
– 新規開発案件・EV特化部品など新しい潮流の有無
– 既存製品のVA/VE提案の余地
– 海外拠点展開やグローバル共同開発の事例
失敗しがちな「とりあえず商談」「一方的な売り込み」ではなく、ニーズの仮説を持ったアプローチが重要です。
2. 提案型営業・技術プロモーション
サンプル提案だけでは差別化できません。
自社の押出成形技術を使った過去の課題解決事例、QCD改善成果、環境メリットを定量的にまとめたホワイトペーパーや比較データシートを作成しましょう。
CADデータ共有、CAEシミュレーションによる流動・剛性・経年変化解析を活用すれば、顧客の設計変更意志決定も早くなります。
現場同士のエンジニア同士が早期フェイズから打ち合わせすることで、信頼関係も強固となります。
3. オープンイノベーション・産学連携も有効
自動車OEMや大手ティア1は、近年はサプライヤーの公募型コンペ、共創ワークショップ、展示会・技術見本市への出展、スタートアップ支援など、門戸を大きく開いています。
中小押出成形メーカーでも、技術大学・研究機関の共同研究、コンサル連携などを積極的に活用することで、開発テーマへのコンタクトチャンスを増やせます。
現場での具体的な“勝ち筋”:提携を成功に導くポイント
1. 「現場力」の見える化と標準化
現場の改善活動を口頭伝承でなく体系的に標準化し、ナレッジを「紙」から「データ」へ。
そのうえで、工程ごとに生産条件のバラつきや要因分析、工程内でのトレーサビリティ管理などを客観的な指標で提示することが信頼獲得に効果的です。
たとえば、
– ヒヤリハットや不具合対応をKPI管理
– 5S・カイゼン活動を写真・動画で公開
– データログから「未然防止」に取り組む
これらは昔ながらの職人技だけに頼る風土からの大きな脱却点です。
2. 経営層と現場層の“距離感”をなくす
昭和型組織では、技術提携の話が経営層と現場で大きな温度差を生みがちです。
トップダウンだけでなく、現場主導でボトムアップ型の改善提案・チャレンジを仕掛けられる空気作りがカギになります。
例えば、現場改善提案の社内表彰制度、若手技術者向けのR&D勉強会の開催、他社工場見学の推進など、社内文化を一歩ずつ改革しましょう。
3. 標準化プラス「個別最適」の両立
大量生産=標準化ではありますが、現在の自動車部品市場は少量多品種・個別要件対応の時代です。
工場の自動化やロボティクス導入と併せて、「標準化でスピード確保」「個別でカスタマイズも柔軟対応」という両立体制を築けるかが、これからの“勝ち筋”となります。
時に自社生産ラインをモジュール分割し、セット替え・段取り替えを合理化するなど、「変化対応力」も競争力の源泉です。
今後の展望とアクションプラン
プラスチック押出成形現場で培った技術・ノウハウには、今だからこそ価値が高まっています。
自動車関連企業も、不確実性が高い時代を“共創”で乗り切るパートナーを求めています。
これまでの「下請け」から「共創パートナー」への意識変革と、デジタル化・現場力の融合が提携成功のカギになるでしょう。
自社の強みを客観視し、「あの企業と一緒に開発したい」と言われる存在になるため、以下のアクションを検討してください。
– デジタルデータ・品質標準の整備
– 技術提案書・プロモーション資料の刷新
– 社内体制(教育/人材育成/経営層の意識改革)
– 積極的な外部ネットワーク参画、技術交流
– 新規マーケット、コンソーシアムへの参加
現場目線の改善と、時代の変化に柔軟に対応する技術経営。
どちらも疎かにしないたたき上げの姿勢が、厳しい自動車業界との技術提携を成功に導く最大のポイントです。
まとめ
プラスチック押出成形業界が自動車関連企業との技術提携で成功するには、単なる下請け意識から脱却し、「共創パートナー」精神で臨むべき時代となっています。
品質・技術力・現場力の見える化と、情報開示・データ活用。
そして社内外ネットワークを駆使した双方にメリットのある提携戦略が、持続的な成長のカギを握ります。
本記事が、新たな技術提携への突破口となり、製造業現場の皆さまがこれからの時代を切り開く一助となれば幸いです。
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