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国際物流でのリードタイム長期化に対応する計画立案方法

目次
はじめに:リードタイム長期化が製造業にもたらすインパクト
国際物流におけるリードタイムの長期化は、今や多くの製造業にとって深刻な課題となっています。
グローバル化が進み、部品や原料の調達は世界規模となりました。
その一方、地政学リスクやパンデミック、港湾混雑、コンテナ不足など外的要因の影響で、従来は数週間で済んだ輸送が、今では倍以上の納期を要することも珍しくありません。
本記事では、現場の管理職経験から得た実践的な知見と、昭和的アナログ業界が持つ根強い動向も踏まえて、リードタイム長期化に備えるための計画立案手法を紹介します。
サプライヤー、バイヤー、その志望者、調達購買現場の方それぞれの立場で生かせる情報となっています。
なぜ今リードタイムが長期化しているのか
グローバルサプライチェーンの変化
製造業の国際分業化が進み、東南アジアや中国など距離が遠い取引先との取引が増えました。
この傾向は価格競争の激化、円安・原材料高騰への対応策としてもさらに強まっています。
その結果、海上輸送や航空便の利用が常態化し、リードタイムは輸送状況に大きく左右されやすくなりました。
外的要因による物流の不安定化
近年は新型コロナウイルスによる港湾閉鎖や労働力不足、ロシア・ウクライナ戦争による航路制限、円安による運賃高騰など、多方面からの外的要因が複雑に絡み合っています。
これらは短期で解消される兆しがなく、製造業者は「リードタイムが常に変動するもの」として対応せざるを得ない状況に置かれています。
昭和時代と比較した業界風土の違い
日本の製造業では、昭和時代の「納期=当たり前」「在庫は悪」といった精神論的、アナログ的風土が根強く残っています。
しかし、情勢が激変した現代では、柔軟に変化へ対応できる仕組み作りが必要不可欠となっています。
現場が直面するリードタイム長期化の課題
計画立案の不安定化とバッファ在庫の課題
リードタイムが不確実になれば、調達購買部門や生産管理部門は当然、混乱に直面します。
予想外の納期遅延は生産計画の大幅修正や顧客への納期遅延にも直結します。
そこで一時的に在庫を増やす動きが定石となりますが、これには保管コスト増やキャッシュフロー悪化、品質劣化リスクなど新たな問題が生まれます。
バイヤーとサプライヤー、現場と管理部門のすれ違い
現場では「資材が来ない」ことで混乱、管理層や経営層からは「なぜ納期を守れないのか」とプレッシャー。
一方、サプライヤーも「バイヤーの考えや動向が見えない」「突然の発注変動に対応しきれない」と悩みます。
調達担当者は両者の板挟みとなり、精神的な負荷も大きくなってきています。
リードタイム長期化に強い計画立案のアプローチ
1.リスク可視化と例外対応フローの構築
従来は、過去の実績に基づく「固定リードタイム管理」が主流でした。
しかし今後は、発注から納入までの各段階で想定しうるリスクを洗い出し、それぞれに対応策を明文化することが重要です。
たとえば、
– 海上輸送の遅延
– 現地通関での滞留
– サプライヤー工場の稼働停止
など、実際に起こりうる現象ごとにアクションプランを事前に用意しておくといざという時に有効です。
特に、現場のオペレーターや購買担当者が、例外発生時の判断を自走できるようマニュアル化・教育を進めていくことが、柔軟性のある組織づくりには欠かせません。
2.需要予測精度の徹底強化と「計画の二重化」
需要予測はAIやビッグデータ活用が進みつつありますが、製造業の現場ではまだまだ勘や経験に頼っているケースも多いです。
今後は「精度をとことん追求」する一方、「複数の厳しめシナリオ(プランB、プランC)」も常に立てておくことが必須となります。
平時のメイン計画(プランA)と、リスク顕在化時のバックアップ計画(プランB、C)を並行して持ち、状況変化に対し速やかに切り替えられる体制が必要です。
3.サプライヤーとの情報共有とコラボレーション強化
調達購買側が現場のリスクや需要予測情報を、サプライヤーとリアルタイムで共有することが、リードタイム圧縮や遅延リスク低減に最も効果的です。
昭和的な「発注一辺倒」「相手任せ」のビジネススタイルから一歩進み、サプライヤーも巻き込んだ情報連携、共通課題の解決が不可欠です。
たとえば
– 月次納品から週次納品、日次納品への細分化交渉
– 共通のITシステムで在庫・納期情報を共有
– 定期的な進捗レビュー会議の開催
など、「協働」というキーワードを強く意識しましょう。
4.在庫戦略の再定義と多拠点分散
「在庫は悪」という昭和的感覚に縛られず、BCP(事業継続計画)観点から適正在庫の再定義が必要です。
特に、1拠点への過剰集中を避け、多拠点・多国での分散保管や、現地調達化の推進をすることで、輸送リスクの分散効果が得られます。
今ある在庫を単なる「ムダ」と捉えず、「保険料」と見做す意識転換も必要です。
もちろん、長期在庫化による品質低下への予防策も並行して検討しましょう。
現場目線で考える実践的な施策
現場リーダー・管理職が持つべき視点
現場では日々の変化や例外発生に即応するスピード感が命です。
そのためには現場リーダー自身が
– サプライヤー、バイヤー両面の事情を理解
– 各ラインのボトルネックや即効的在庫・工程調整術
– 標準作業へのしなやかな割り切りとイレギュラー発生時のリーダーシップ
を磨く必要があります。
「困った時は調達任せ」「生産待ち」ではなく、自分ごと化して現場イノベーターとしての役割を意識することが最重要です。
IT/デジタル活用の第一歩
最新のITツール活用は大企業でこそ主流ですが、まだまだ多くの工場ではアナログな手作業や紙ベース管理が目立ちます。
しかし、小さな一歩からでも
– 納期遅延情報をチャットや掲示板で社内共有
– EXCEL集計でなくオンライン管理・可視化に切替
– 在庫や進捗データの見える化
から始めるだけでも、意思決定のスピードと精度が高まります。
最初から大規模な投資でなくとも、身の丈に合った「デジタル第一歩」を踏み出しましょう。
バイヤー志望者やサプライヤーに伝えたいこと
新時代バイヤーに求められる資質
調達購買は単なる価格交渉役から、サプライチェーン全体を俯瞰しリスクを先読みできる戦略家へと役割が変わりつつあります。
特に海外サプライヤーとは「現場目線での信頼構築」と「セルフマネジメント力」が必須です。
英語力・ITリテラシーだけでなく、現場感覚とコミットメントが問われます。
サプライヤーがバイヤー心理を知る意義
一方、サプライヤー側も「なぜバイヤーが直前発注するのか」「なぜ短納期・分割納品を求めるのか」といった本質を知ることで、提案力が高まります。
自らも計画側に立つ意識を持ち、能動的な情報発信やソリューション提案をすることで、差別化を図ることができます。
まとめ
国際物流でのリードタイム長期化は、製造業にとって不可逆的な課題となっています。
昭和の成功体験やアナログ主義に固執せず、現場・計画・サプライヤーが一体となった柔軟な計画立案と、IT活用・情報連携によるリスクヘッジが不可欠です。
今こそ、「アナログの現場力」と「デジタルの情報力」、「計画の力」と「現場の突破力」を掛け合わせて、製造業の新たな地平線を切り拓きましょう。
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