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OEM専業から脱却して自社ブランドを立ち上げるための製品企画と市場分析の進め方

目次
はじめに:OEM専業時代から抜け出すために必要な発想転換
製造業は長年にわたり、日本経済の根幹を支えてきました。
中でもOEM(Original Equipment Manufacturer)専業メーカーは、優れた技術力と生産ノウハウで国内外のブランドに製品を供給し、大きな役割を果たしてきました。
しかし現在、その構造には大きな変化の波が押し寄せています。
原材料価格の高騰、人手不足、受託価格の下落、発注元からのコストダウン要請など、OEM企業にとって厳しい経営環境が続いています。
更に近年は、中国・東南アジアメーカーとの価格競争や、コロナ禍による顧客需要の急変など、従来手法だけでは生き残りが難しいケースも増えています。
このような背景から、多くのOEM専業メーカーが「自社ブランド化」、すなわち独自の商品企画とマーケティングによる新市場開拓を模索しています。
本記事では、製造現場で培った経験に基づき、OEM専業から自社ブランドへの転換を図る上で必須となる製品企画と市場分析の進め方について、具体的かつ実践的に解説します。
OEM専業の限界と自社ブランド化の必要性
OEMのメリットと現実的な課題
OEMの最大のメリットは、受注生産型のため営業コストや開発負担を抑えられる点にあります。
しかし近年は顧客からの価格交渉が厳しさを増し、長期的には利益率が縮小傾向です。
さらに取引先依存度が高くなることで、1社の発注減や方針転換で売上が大きく揺らぐリスクが避けられません。
加えて、日本の中小メーカーは多品種少量生産が得意な反面、自社で顧客開拓力や商品開発力を磨く機会が乏しく、「下請け体質」からの脱却が難しいとの声もよく耳にします。
自社ブランドの立ち上げがもたらす新たな可能性
自社ブランド事業に取り組むことは、リスク分散や利益率向上といった経営的メリットだけではありません。
メーカーとしての技術力・ノウハウを最大限に活かし、市場の声をダイレクトに反映できる製品づくりや、自社で価格主導権を持てることは大きな魅力です。
また、独自性の高いブランドが顧客に認められれば、OEM事業にも好影響を及ぼし、新たなビジネスチャンスの創出につながる可能性があります。
製品企画を成功させるためのアプローチ
現場発想と市場発想の融合
OEM専業のメーカーが自社ブランドを立ち上げる際、最初に陥りやすいのが「現場で作れるもの=売れる商品」という誤解です。
これまで蓄積した技術や設備をベースに、社内で「何が作れるか」から企画を始めがちですが、顧客のニーズや市場の課題が置き去りにされると、売れる商品にはなりません。
したがって、自社の強み・経験に加えて、「どんな不満・不便・未充足ニーズが市場にあるか」という視点を徹底的に掘り下げる必要があります。
現場発想と市場発想、この2つを掛け合わせて初めて、ヒット商品の芽が生まれます。
現場力を活かしたアイデア発掘法
現場の現実を知る製造業ならではの強みは、自社の技術や工程の得意・不得意を熟知していることです。
例えば、
– 内部で工程短縮や省力化ができる「隠れ技術」を、他社製品にはない特長として訴求する
– 長年の生産トラブルや品質問題から導き出された「壊れにくさ」「安全性」を前面に打ち出す
– 熟練工だけが気づく、ある“ちょっとした工夫”をユーザーにもたらすことで価値創造につなげる
といった着眼点が有効です。
こうした技術や現場の知見こそ、自社でオリジナル商品化したときに大きな差別化要因になります。
市場分析のポイント:ターゲット設定とバイヤー視点の重要性
“誰のための何を”を徹底的に絞り込む
昭和時代の大量生産・大量販売から、現代は多品種少量・個別最適化へと市場構造が大きくシフトしました。
ターゲットを「できるだけ幅広く」と考えるのはNGです。
むしろ、具体的なペルソナ(架空のユーザー像)を設定し、「彼・彼女がなぜ今、何に困っているのか?」を深掘りしましょう。
たとえば、
・現場作業者の手間を軽減したい技術系バイヤー
・設備投資のコストを削減したい購買担当者
・メンテナンス工数を省きたい現場管理者
など、実際に購入決定権を持つ“人”の立場、動機、判断基準まで細かく洗い出します。
バイヤー(購買担当)の思考回路を理解する
OEMメーカーとして調達部門、バイヤーと長年接してきて実感するのは、「スペック」ではなく「納得感」による購入意思決定が増えていることです。
サプライヤーとしては、「この価格に見合うだけの価値がある」と思わせる説得材料、すなわちコスト以外の“選ばれる理由”を明確に打ち出すことが肝心です。
また、製品の「どこを評価されると受注につながるか」を観察し続けることも大切です。
– 実証データ(メンテ周期、耐久性など)
– 実績(誰が採用しているか、どの業界で成果が出ているか)
– サポート体制(納品後トラブル時の迅速対応)
こうしたバイヤー目線のポイントを第三者的に評価し、製品企画に活かすことが求められます。
競合他社・既存製品の徹底調査
既に市場に出回っている製品の調査は、自社商品の「売りポイント」や「市場の隙間」を見つけるうえで不可欠です。
具体的には、
・競合品のスペック比較だけでなく、カスタマーレビュー・現場の口コミまでリサーチ
・価格だけではなく、「どんな悩みに応えているか」「どこが不十分か」を明確に一覧化
・できるなら実物を現場で使い検証する
現場での検証まで踏み込むことで、単なる理想論では終わらない“ホンモノ”の商品企画が練り上げられます。
商品コンセプトの磨き方と企画の社内浸透
優位性を一言で表すストーリー作り
商品企画の肝は「その製品がどんな価値で市場を席巻できるのか」を明確に言語化することです。
技術軸だけに寄らず、“ストーリー”化することで、社員一人一人の意識やマーケティング施策に一貫性が生まれます。
具体的には、
– 誰のための商品なのか
– どんなシーンで役立つのか
– どんなユニークさがあるのか
を、誰でも分かる言葉で語れる状態を目指します。
えぐるように絞ったメッセージを用意し、社内外で繰り返し発信することが、新しい自社ブランド成功の第一歩です。
現場・営業・開発を巻き込むプロセスが成否を分ける
商品企画段階から、現場や営業を巻き込んでフィードバックをもらうことが極めて重要です。
実際の工場現場では、「現場と開発で温度差があり、なかなか量産に至らない」「営業担当が納得せず、提案活動に力が入らない」などの壁が多く存在します。
早期から横断的なチームを組成し、お互いの気づき・意見を反映させることで、現実的かつ競争力ある製品開発が実現します。
市場導入段階での留意点と持続的な商品力強化
テストマーケティングと小さな成功体験の蓄積
一度企画した商品をいきなり大展開するのはリスクが高いです。
まずは特定の工場・業界・市場でテストマーケティングを行い、
– 実際のユーザーの使用感
– 想定外の問題や不満点
– 競合品との差異
などを徹底的に洗い出します。
ここで改善サイクルを高速に回し、「小さな成功体験」を社内外に積み上げていくことが、最終的なブランドの大成功につながります。
デジタルシフトと“昭和体質”からの脱却
国内製造業にはいまだにFAX・電話・アナログな営業推進が根強く残っています。
しかし新たなブランドの商品を認知拡大・販売促進するには、デジタルマーケティングやWeb展示会、SNS発信といった「新しい営業様式」へのシフトも避けては通れません。
現場に蓄積された人脈や紙の帳票に依存しすぎない仕組みづくりを、若手メンバーとともに推進していくことが、業界としての持続的な競争力強化になります。
まとめ:製造業の現場発想×新市場目線で未来を拓く
OEM専業から自社ブランドへの転換は容易な道ではありません。
ですが、これまで工場現場で培った知見や技術こそが、新しい価値を生み出す最大の資源です。
・“現場の強み”を活かした商品アイデアの創出
・徹底した市場・バイヤー目線で差別化ポイントを磨く
・社内一丸となりストーリーを持った商品企画を推進
・時代の変化に対応したデジタル営業やマーケティング活用
この循環を回し続けることで、製造業メーカーは「作る」から「価値を届ける」ブランドへと進化できます。
この記事が、次世代の工場長・バイヤーを目指す皆さま、サプライヤーとしてステップアップしたい皆さまの行動・発想のきっかけとなることを願います。
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