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なぜなぜ分析実践のポイントと本質的な問題解決への活かし方

目次
なぜなぜ分析とは何か
なぜなぜ分析は、製造業の現場だけでなく、さまざまな業種に浸透している問題解決手法です。
しかし、その起源や本質的な意義を深く理解している方は意外に少ないと感じます。
本来のなぜなぜ分析(Why-Why Analysis)は、発生した問題や不具合について「なぜそれが起こったのか?」を繰り返し問いかけることで、現象の背後に隠れている本質的な原因にたどり着こうとするものです。
トヨタ生産方式にも根強く取り入れられ、5回繰り返すことが目安とされています。
しかし、単純に「なぜ?」を繰り返すだけでは、真の目的を果たせません。
製造業の現場でなぜなぜ分析が必要とされる背景
複雑性と“臭いものに蓋”の文化
製造業の現場は、多くの機械や人が関わり合い、思わぬトラブルも日常茶飯事です。
特に原材料の受入れ、工程内の段取り替え、検査、出荷まで、無数の工程がシームレスに連動するだけに、問題が生じた場合、「なぜ?」の掘り下げが弱いまま対症療法で済ませてしまうことが後を絶ちません。
昭和の時代に根付いた「失敗を隠す・黙ってやりすごす」風土や、「上司の顔色をうかがうだけ」という管理文化がなぜなぜ分析の力を弱めている現状があります。
デジタル化で変わる問題構造
近年はIoTやAI、工場の自動化が推進される一方、不良やミスの原因がより複雑、かつ人間の認知で気づきにくくなっています。
その分、現場で「そもそもの問題を見抜く力」や「納得感のある要因の分解」がこれまで以上に求められるようになっているのです。
なぜなぜ分析のよくある失敗パターン
形だけ“なぜ”を繰り返す
「5回なぜを言え、5Whyだ」といった指示が上から降ってきて、とにかく5回“なぜ”を繰り返す形式作業になりがちです。
結果として、
・なぜ?→人手不足でした
・なぜ?→忙しかったから
・なぜ?→人が足りないから
のような「堂々巡り」や「表層的な原因探し」で終わってしまい、本質的な対策にたどり着かないケースが非常に多いです。
単一原因で考えすぎる
現場はどうしても早く原因を突き止めて手当てしたいものですが、ほとんどのトラブルは複数の要因が絡み合っています。
自分や仲間を守るため、「設備の不具合が原因だ」「外注先の部品が悪かった」と、簡単に原因を一つに絞ってしまいがちです。
本質的な問題解決にはこれが最大の落とし穴です。
実践的になぜなぜ分析を進めるコツ
現場目線と観察力を重視する
まず、現象を机上の空論や書面だけで判断せず、「本当に何が起きたのか」を現場に足を運び五感で観察することが大前提です。
たとえば、「ライン停止が頻発した」という現象があった場合、現場の温度、騒音、作業者の動き、工具の置き方、設備の消耗、材料ロットの状況、さらには当日の体調や人間関係にまで目を配ります。
机上で“シナリオ”を作るのではなく、「現場で何が起きていたのか」を生々しく掘り下げることが大事です。
“なぜ”の深堀りは複数人で行う
一人の見方や偏見で掘り下げても、本質的な原因には到達しません。
必ず多部門や、当事者+第三者を交えてディスカッションし、“なぜ”の枝分かれや別方向の視点を加えます。
例えば調達部門なら「なぜそのサプライヤーを選んだのか」「なぜその仕様や納期になったのか」「なぜ発注変更の相談が遅れたのか」と違った立場の観点をミックスすべきです。
なぜなぜを「現象→本質→構造」と掘り進める
1回目、2回目は往々にして目に見える現象レベルの“なぜ”になります。
3回目以降は「なぜ、それを是正できてこなかったのか?」「なぜ、そのミスが繰り返される文化だったか?」と、本質や組織の構造面に向かうことが重要です。
例えば「部品の発注ミスが発生した」→「なぜ?チェックが漏れた」→「なぜ?確認フローが曖昧」「なぜ?設計側と調達側の役割分担が不明確」と掘り下げ、組織の連携構造自体が課題だった、という仕上げ方が理想です。
物事を健全に疑い“タテマエ”や“暗黙知”に切り込む
製造現場には「昔からそうだった」「うちのやり方だ」「黙っておけば分かるはず」というタテマエや暗黙知が強固に根付いています。
「誰が悪い」ではなく、「どうしてそうなっているか、どこに非合理が根ざしているか」を恐れず追求しましょう。
この点こそが、真のなぜなぜ分析の価値です。
再発防止策=“仕組み”に変える
本質的原因に到達したら、単なる個人の注意や再教育に留まらず、作業標準や管理方法、工程設計そのものの改善、「構造として再発できない仕組み」にまで落とし込むことが基本です。
たとえば書類のミス防止策なら「Wチェック担当の割り当て方式見直し」「自動記録ツールの導入」まで仕組みを変える、がゴールです。
アナログ業界でも“なぜなぜ思考”は効く
「そうは言っても、うちの業界は現場が昭和のままで…」と諦める声も多々あります。
しかし、なぜなぜ分析はむしろ現場の紙や口伝、慣習で回している職場ほど効果を発揮します。
手書き伝票でミス連発→なぜ電子化しない?→なぜ上司が嫌がる?→なぜお客様の承認が必要?と、時代遅れの当たり前を問い直すきっかけになります。
アナログな現場こそ、“変えられない空気”や“温存された複雑さ”にこそ、なぜなぜ分析が刺さるのです。
バイヤー・サプライヤー関係のなぜなぜ分析応用例
バイヤー目線での本質的なトラブル解決
購買部門では、「なぜ納期遅延が頻発するのか」「なぜコストダウンが限界なのか」など、表層的な“お願い・叱責”で終わっては意味がありません。
たとえば納期遅延なら、
・なぜサプライヤーは納期遵守できなかった?
・なぜ生産ラインのキャパシティが逼迫した?
・なぜ複数メーカーから部品を集めた設計になっている?
・なぜマルチソーシングのメリットを活かせていない?
と自社、取引先、設計・生産など“サプライチェーン全体”の構造まで掘り下げることがポイントです。
サプライヤー目線でバイヤーの“なぜ”を想像する
サプライヤーの立場で「なぜバイヤーは追加資料を求める?」「なぜ発注仕様が曖昧なままなのか?」と自社内でなぜなぜ分析を行い、先回りして改善策を提案できれば、差別化されたパートナーになれます。
バイヤーが本当に知りたい・解決したいのは「自分たちの顧客である最終ユーザーの満足度」や「自社内の再発防止」など、より大きな目的であることを理解し、そのための“本質的な対策”を相手と議論できる準備が大切です。
なぜなぜ分析を組織文化に根付かせるには
現場リーダーが手本を示す
一般社員だけでは“空回り”することがあります。
工場長や課長など現場責任者自ら、日常的になぜなぜ分析の姿勢や言葉づかいを示すことで「問題を前向きに掘り下げる文化」を浸透させることができます。
「責任追及」ではなく「学びと進化」の雰囲気作り
なぜなぜ分析は、「誰が悪いか」を追及する場ではありません。
あくまで「より良い方法」「本質的な再発防止」「全員が楽になる仕組み作り」を目的に進めましょう。
日々の朝礼や報告会議でも、ミスや問題の表層だけで終わらせず、「じゃあなぜ?」「どうすれば仕組みで防げそうか?」を対話形式で取り入れることが重要です。
まとめ:なぜなぜ分析は現場の未来を変える武器
なぜなぜ分析は、単なる“なぜ?”の連打でありません。
本質的な問題解決力を高め、組織や現場の「人・設備・プロセス・仕組み」すべてを進化させる力です。
デジタル化、グローバル化が進み現場が常に変化と複雑さにさらされる現代こそ、“なぜなぜ思考”が大きな武器となります。
昭和型の古い暗黙知やアナログ文化を破り、未来に向けて強い現場・企業を築くうえで、ぜひ一人ひとりが現場目線でなぜなぜ分析を実践し、小さな気づきを本質的な改善につなげていきましょう。
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