- お役立ち記事
- 輸出取引で不可欠なSDS(安全データシート)の準備方法
輸出取引で不可欠なSDS(安全データシート)の準備方法

目次
SDS(安全データシート)とは何か
SDS(Safety Data Sheet:安全データシート)は、化学物質がもつ危険有害性を正しく理解し、安全に取り扱うための情報をまとめた文書です。
日本の製造業では「MSDS」と呼ばれていた時期もありますが、国際的な基準(GHS: 化学品の分類および表示に関する世界調和システム)導入以降、SDSに統一されつつあります。
輸出取引においては、送り先の国や顧客に対し、製品や原材料の化学的リスクを明確に伝える義務があります。
そのため、SDSは製造現場のみならず、調達購買、生産管理、品質保証、物流、さらには営業部門にとっても、不可欠な書類となっています。
特にサプライヤーの立場からは、得意先であるバイヤーの依頼に迅速かつ正確に対応する力が、信頼構築のカギとなります。
なぜSDSは輸出取引で重要なのか
SDSがなぜ日本国内だけでなく、輸出取引で特に重視されるのでしょうか。
その背景には、各国で厳化が進む化学物質管理規制とコンプライアンス対応が挙げられます。
各国の法規制とSDSの位置づけ
欧州連合のREACH規則や米国のOSHA、アジアでは中国のGB標準等、国や地域ごとで化学物質に関する法律が細分化されており、それぞれSDSの提出やラベル表示が義務付けられています。
輸出先が求めるSDSの書式や言語、化学物質の分類基準には大きな違いがある場合もあります。
そのため、国際物流に携わるサプライヤーやバイヤーは、常に最新の規制動向をキャッチアップし、求められる規準でSDSを作成・送付できることが、商談をスムーズに進める鍵となるのです。
商取引の信頼を左右するSDSの質
取引先によっては「SDSがない」「記載内容が不十分」「遅延して提出された」などを理由に、調達先の選定から外されることも珍しくありません。
また、SDSの精度が低いと、現地での通関や納品後の事故発生時に企業としての責任が問われます。
このように、SDSは書類としての役割を超え、企業間の信頼、法令遵守、ビジネスの継続性を左右する存在です。
調達購買や生産管理者、現場リーダーが自らSDSの重要性を認識し、能動的に対応できる体制が不可欠です。
輸出取引におけるSDS準備の実務ステップ
実際にSDSを用意するには、どのような流れで進めればよいのでしょうか。
現場目線で基本の流れを解説します。
1. 対象となる化学品の特定
まず自社製品・原材料のうち、どの製品がSDS提出の対象かをリストアップします。
化学品そのものはもちろん、樹脂・塗料・接着剤・洗浄剤・潤滑油など、素材や副資材も対象となり得ます。
「全社でどれがSDS作成/管理品目なのか?」を網羅する内部リスト化が第一歩です。
2. 最新規制の確認
次に、輸出先国のSDS関連法規、言語要件、フォーマット等を調査します。
例えば欧州ならREACH規則・CLP規則に、アメリカならOSHAに、一部南米やアジアでは独自基準に従う必要があります。
バイヤー企業が独自フォーマットを指定してくる例もあるため、商社や現地パートナーと情報共有を密に行うべきです。
3. 情報の収集と設計
SDSには、製品名、化学組成、危険有害性の要約(絵表示[ピクトグラム]等含む)、安全対策、漏出時・災害時の対応、廃棄方法、法的規制情報等の記載が求められます。
原材料ベンダーや化学担当部署から成分情報や物性値を収集し、自社責任において正確性・網羅性を担保できる仕組みが重要です。
4. 社内外のチェック体制構築
SDS作成には化学知識が不可欠です。
自社内で作成が難しい場合は、調達部門と技術部門が連携、外部の専門コンサルタントやSDS作成システムの活用も視野に入れましょう。
作成後は法務担当や顧客の要求事項との突合、第三者校正など多重チェックが欠かせません。
5. 継続的なメンテナンス
規制法令や原材料情報が更新されれば、SDSも速やかに見直す必要があります。
納品や輸出が1回限りでなく、継続取引の場合は「定期点検サイクル」を組み、確実な更新・再提出フローを備えましょう。
現場で起こりがちなSDS作成の落とし穴
日本の大手製造業現場では、「SDS作成は化学担当者の専属業務」と軽視されがちですが、それではグローバル基準には対応しきれません。
現場運用でよく起きる失敗例を知っておきましょう。
書式や言語のミスマッチ
「日本語版SDSしか用意していなかった」「最新のGHS規格に則っていなかった」など、国際基準に則していないSDSは、そのままでは受理されません。
納期直前にバイヤー側から「再提出」を求められると、クレームや商談停滞、最悪の場合受注キャンセルのリスクも生じます。
原材料サプライヤーへの依存度が高い
商社や原材料メーカーに「SDSをお任せ」して、自社内では内容精査や二次加工後のリスク評価を怠るケースです。
加工プロセスでの物性変化や新たなリスクへ、自分たちできちんと責任をもたなければ、現場対応力は向上しません。
情報の縦割り・サイロ化現象
古い体質の工場では、購買・生産・営業・技術が分断され「SDSのことは自分の仕事ではない」と丸投げしがちです。
ですがバイヤーサイドから見れば、調達や物流にも先回りしたSDS提出と安全管理体制の構築こそ、調達先選定の大きなポイントになっています。
バイヤー視点でのSDS提出のポイント
ここでバイヤー(調達担当者)の立場でサプライヤーに求められるポイントをお伝えします。
これを意識することで、サプライヤーの皆さんはより選ばれるパートナーとなれるはずです。
迅速な対応力(レスポンスが早い)
バイヤーからの「SDS要請」にすぐ反応し、内容確認や不足時の再提出もしっかりフォローできる企業は、非常に高く評価されます。
納期に追われる現場に寄り添う段取り力が、長期的な信頼につながります。
異国語・複数言語対応の充実
主要な貿易先(英語・中国語・韓国語・独語など)はもとより、近年は中東や東南アジアなどローカル言語での提出が増えています。
自動翻訳や専門サービス、各国基準への精通といった「柔軟性」が選定評価に直結します。
リスク要素への“自主開示”
事故や規制違反のリスクとなり得る成分・プロセス変化がある場合は、事前に積極的に開示・相談するマインドが買われます。
「隠す・遅らせる」より「開示・相談」で差別化しましょう。
製造業の現場こそ“SDSリテラシー”の高さが競争力
調達、生産、品質、技術、営業……製造業の現場は分業が伝統的ですが、今やSDSは部門を横断して全員が理解し、対応力を持つことがグローバル競争の前提条件となりました。
昭和期の“アナログな現場力”が強かった時代は、「匠の技術」や「現地現物の柔軟対応」で差別化できました。
ですが現在は、化学品リスクや法令遵守、グローバルスタンダードに適応できる“正しい知識と仕組み”を持った企業こそが選ばれる時代です。
サプライヤーもバイヤーも、旧来の「丸投げ・アウトソーシング任せ」から一歩進み、現場・管理職・経営層が一丸となって“攻めのSDS準備力”を構築しましょう。
それこそが、世界で戦える日本の製造業の底力となります。
まとめ:SDSは単なる書類ではなく“信頼の証”
輸出取引においてSDS(安全データシート)の適切な準備・提出は、単なるコンプライアンス対応ではありません。
それは製品品質と安全への真摯な姿勢、法令遵守の徹底、ひいては企業間の信頼を示す“現場の証”です。
アナログとデジタル、現場力と体制力が融合したSDS運用を目指して、一人ひとりが“自分ごと”としてSDSを学び、グローバルな商流の中でリーダーシップを発揮しましょう。
それこそが、これからの製造業を牽引する力になるはずです。
ノウハウ集ダウンロード
製造業の課題解決に役立つ、充実した資料集を今すぐダウンロード!
実用的なガイドや、製造業に特化した最新のノウハウを豊富にご用意しています。
あなたのビジネスを次のステージへ引き上げるための情報がここにあります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが重要だと分かっていても、
「何から手を付けるべきか分からない」「現場で止まってしまう」
そんな声を多く伺います。
貴社の調達・受発注・原価構造を整理し、
どこに改善余地があるのか、どこから着手すべきかを
一緒に整理するご相談を承っています。
まずは現状のお悩みをお聞かせください。