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OEMアウターにおける糸と針の選定で縫製トラブルを防ぐ方法

目次
はじめに:OEMアウターと縫製トラブルの現実
OEMによるアウター製造は、国内外で求められている安定した品質とコスト削減を両立させるための重要なプロセスです。
しかし実際の現場では“縫製トラブル”が頻発しているのも事実です。
その多くは、糸と針の選定ミスから発生しています。
「検査工程で大量の糸切れ不良が出てしまった……」「納品後、引き裂きや縫い伸びトラブルでクレームが入ってしまった……」
こういった問題は生産現場のみならず、バイヤーやサプライヤー双方への大きなストレスとなります。
本記事では20年以上の製造業経験者として、現場視点と最新動向の両面から、糸と針の選定で縫製トラブルを未然に防ぐ具体的な方法を解説します。
OEMアウターの基本と糸・針の重要性を再認識する
OEMアウターが直面する現場のリアル
OEMアウターは企画と生産の担当が異なることが多い分、仕様書や型紙に記載された通りに生産しても「どうも仕上がりが違う」と現場が感じることがあります。
特にアウターは複雑な縫製が求められるうえ、生地の種類も中綿・ダウン・合繊・ウール・レザーなど多種多様です。
これは感覚や経験だけでは対応しきれず、各素材ごとに適切な糸・針をきちんと選定する“目利き”が求められます。
ここが昭和的な「経験と勘」だけに頼る現場ではトラブルの温床となりやすいポイントなのです。
糸の仕様がトラブルに直結する理由
糸の太さや種類、撚り、強度は仕上がりの見た目や耐久性だけでなく、縫製ラインそのものの安定稼働にも直結します。
「この仕様書通りなら大丈夫」と安易に既製品糸を使うと、思わぬ縫製不良に発展するケースが少なくありません。
糸が生地より強いと生地切れ、弱いと簡単にほつれや糸切れが発生します。
また色や光沢感、ミシンとの相性など、見落としがちな要素も現場トラブルには直接つながります。
針選定の奥深さと見逃しがちな落とし穴
針の選定についても生地や糸に合わせて「番手」や「針先」、「形状」を使い分ける必要があります。
たとえば、針先が鋭すぎれば生地を傷めてしまい、逆に鈍ければ厚物が縫えず糸切れのリスクも高まります。
「とりあえず総合送りではこれが鉄板」と思い込むのは昭和的な悪習で、多品種生産や新素材への対応では、パラメーターを調整して最適解を探る必要があります。
現場実践:糸と針の選定で“昭和”から脱却する方法
サンプル段階の実践的テストを徹底する
サンプル品を作る段階で必ず複数種類の糸と針を試してください。
一見、マニュアルに従って選んでも、生地ロットや縫製環境で結果が大きく異なるからです。
例えばダウン用の薄手ナイロンに一般的なポリエステル糸と標準針を使うと、針穴が目立ったり耐久性不足が生じることがよくあります。
一歩踏み込んでナイロンコア糸や超薄手用の微細針、ボールポイント針などを数パターン実験。
さらに洗濯・引張り強度試験もサンプル段階で必ず実施することで大きなトラブルを事前に排除できます。
バイヤー・OEM発注者は「自社基準」にとらわれない
OEM案件では「うちの基準」「この工場の慣例」で思考停止しないことが重要です。
同じスペックでも中国とベトナム、国内で手配するミシンや副資材の標準が微妙に異なります。
バイヤーや設計担当者こそ生産現場と密に連携し「現地で最善な糸・針が何か」を柔軟に決めていく目線が、時代遅れのトラブルを防ぐポイントです。
現場見学でミシンや検査工程までしっかり確認し、固定観念をアップデートしましょう。
サプライヤー側は“根拠のある提案”を徹底する
サプライヤーは発注者から求められた通りの糸・針をそのまま採用しがちです。
しかし経験上「一見同じ仕様でも、使用環境やロット差で微妙な違いが出やすい」のがアウター分野。
“量産でこれまで問題なかった”より、“今回の生地ロット・副資材にはこの組合せが最適”という具体的データに基づく提案が信頼獲得のカギです。
社内でのテスト結果や不良品統計を蓄積し、お客様の要求と現場状況を両立するバッファリング力を持ちましょう。
よくある糸・針選定の失敗例と回避策
1. 糸が細すぎて縫製時に切れる
多針での高速縫製や厚物生地への対応時に、細糸を指定すると糸切れが多発します。
見た目のために細糸を維持したい場合、糸の材質や撚り方向にこだわって「高強度仕様」を選ぶことが対策となります。
2. 針番手が合わず生地を破いてしまう
分厚いウールや防水透湿素材などに細い針を使ってしまい、パンクや破れが発生。
針が太すぎても、ステッチ跡が目立ち美観を損なうこともあるため、必ず事前に縫い見本を複数パターン作成し物性と見た目の双方をチェックします。
3. 糸と針の組み合わせがミスマッチ
特殊コート糸や撚り方向の異なる糸を標準針で縫製すると、滑りが悪く縫い目が飛ぶ、目とび(スキップステッチ)など予測不能な不良に発展します。
メーカーや専門商社と連携し、「糸・針・生地」の三位一体で選定した経験則(ナレッジ)を社内共有しておくのが回避策となります。
自動化・デジタル化への道:縫製現場のパラダイムシフト
縫製現場の自動化が進む中で必要な新しい視点
縫製業界でも生産効率化と品質安定を目指し、デジタル制御ミシンや生産管理システムの導入が進んでいます。
AIによる最適設定や画像解析による縫製不良検査の普及が今後さらに拡大します。
しかし、いくら自動化が進んでも、糸や針といった基本資材の選定が間違っていれば根本的な品質問題は解決できません。
「デジタル」+「現場の知恵(ラテラルシンキング)」の両輪で、検査データや統計手法を活用しつつ、人間ならではの現場微調整力を育てることが重要です。
昭和的思考から一歩踏み出すための現場改革
デジタル時代には「ベテランしかわからない」「言伝えだけのノウハウ」を脱却し、選定ログや現場トラブル例、解決事例を標準化する仕組みが不可欠です。
教育マニュアルやデータベース化、デジタルツールの併用によって、知の共有が“属人技”から“現場力”へ進化します。
OEMバイヤー、サプライヤー双方で「原因から考える」「最善の手立てを提案する」というラテラルシンキング力が差別化要素となります。
まとめ:全員参加で縫製トラブルを未然に防ぐ
OEMアウターの糸と針選定は、一見単純なように見えて実は高度な現場知と最新トレンドの融合が求められます。
昭和的な「とりあえず従来通り」から脱却し、バイヤー・サプライヤー・生産現場が三位一体で選定プロセスを進化させることが、高品質・低トラブルのOEMアウターを実現する最短ルートです。
今日から“サンプル段階の徹底検証”“根拠のある現場提案”を始めましょう。
製造業従事者も、これからバイヤーを目指す方も、サプライヤーの皆様も、現場で役立つ知恵と心構えをアップデートし、より強いものづくり現場を育てていきましょう。