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食品接触・化粧品容器のOEMで外せないFDA/LFGB/REACHの進め方

目次
はじめに:食品・化粧品容器OEMビジネスの転換点
食品や化粧品容器のOEM(受託製造)は、「安全かつ高品質」が求められる中、グローバル展開や多様化する消費者ニーズに対応するための進化が加速しています。
その中で必須となっているのが、各国の規制――特にアメリカのFDA(食品医薬品局)、EUのLFGB(ドイツ食品・消費財法)、REACH(化学物質登録・評価・認可及び制限規則)への的確な対応です。
今回は、国内外の大手製造現場や購買部門の実務経験を基に、OEMにおけるこれら3つの規制対応を実践的に解説します。
昭和的な「アナログ発想から脱却できない」業界体質が、国際競争力を阻む原因にもなっています。
この記事を通じて、〈現場で即役立つ実行ポイントとラテラルな視点〉を共有します。
なぜOEM容器に規制対応が求められるのか
グローバル市場と非関税障壁
国内市場の成熟や人口減少により、多くのメーカーはグローバル展開へと舵を切っています。
しかし、食品や化粧品が直接触れる「容器」は、各国の安全規制が複雑に絡んでおり、これをクリアしなければ「販売すらできない」という厳しい現実があります。
これまで日本国内で当たり前だった材質や製造プロセスが、海外では許可されない――これは非関税障壁として、日本企業が国際展開する上で避けて通れない課題です。
規制順守はバイヤー選定の最重要条件
製造委託先やサプライヤーを選定する際、OEMの発注担当者(バイヤー)は今や「規制順守能力」を第一にチェックします。
逆に言えば、どんなにコスト競争力や納期品質が優れていても、FDAやLFGB、REACH規制をクリアできなければ「不戦敗」となるのです。
FDA・LFGB・REACHとは何か?現場担当者の立場で解説
FDA(米国食品医薬品局)認証の基本
FDAは米国で販売される食品や飲料、化粧品に関わる全ての製品(容器含む)に適用される安全基準です。
容器の場合は「食品に触れる全ての材質・成分」がリスト化され、FCC(Food Contact Substance)として認められている必要があります。
例えば、プラスチックならどんな添加剤をどれだけ使えるのか、重金属の溶出量は?など、項目ごとに詳細な規定があります。
また、米国向け輸出時には、Lotごとの管理、トレーサビリティ、定期的な抜き取り検査など「運用・記録」にまで要求が及びます。
LFGB(ドイツ食品・消費財法)認証の特徴
LFGBはEU圏、特に品質基準が最も厳しいドイツ市場向けに対応が不可欠な規制です。
特徴は「第三者認証機関での分析試験」が必須であり、塑料・ゴム・コーティング・着色剤など用途別に試験項目が規定されています。
表面的な「自主宣言」だけでは通用せず、認証合格を示すマーク(例えばTÜVやSGSなど発行の証明書)がバイヤー交渉のパスポートとなります。
LFGB対応ができているかどうかで、EU域内の大手バイヤーからリストアップされるか否かが決まるため、現場としても「最初の壁」となります。
REACH(化学物質規制:欧州)とは
REACHは化学物質の登録・評価・認可・制限を規定するEUの巨大規制です。
ハイライトは、「全工程把握と報告責任」です。材料メーカーから成型・印刷・梱包に至るまで、使われている全物質がREACHのSVHC(高懸念物質)リストに該当しないか、また該当する場合は輸出時に相手国へ通知することが義務付けられています。
「外注先任せ」「わからないから黙認」の昭和的な調達手法は通じません。
サプライチェーン全体の可視化、データベース化、サプライヤー教育など、業界全体の底力が問われる制度です。
現場で使える!3大規制対応の実践ステップ
1.“巻き込み型”プロジェクト体制を作る
OEM容器の規制対応は調達・品質・開発(設計)部門だけでなく、営業や生産、経営層も密接に連携しなければ成立しません。
古い体質では「購買が証明書だけ取り寄せて済ます」や「現場に負担を押しつけて終わり」が未だ見受けられます。
海外案件では、
・生産条件の微細な設定ミスによる“現地再検査”
・証明書の不備による“通関遅延や差戻し”
・取引先への“納品遅れ”が利益損失に直結します。
そこでおすすめするのが、〈巻き込み型〉プロジェクトチームの編成です。
サプライチェーン全体を見渡せる上流設計会議、現場管理・品質管理の「横串コミュニケーション」を常時実施し、不明点やNG事案の早期洗い出し・解決を目指しましょう。
2.サプライヤーとの“協働的パートナーシップ”の構築
規制対応は自社だけで完結しません。
特に化学品や添加剤の仕様開示、管理体制の整備は素材メーカーや二次外注業者の協力が不可欠です。
現場で重要なのは「信頼できるサプライヤー探し」と、「サプライヤー教育(どう調べるか・どう記録管理するか))」です。
ISO9001やFSSC22000等の認証取得を条件にするのも一つですが、「書類上OK」でも実態が伴わないことは珍しくありません。
現場監査(オンサイト監査)の開催、社内教育会の開催、長い目でサプライヤーと共に知識・管理技術を高めていくラテラルな関係構築が理想です。
3.“証明書管理システム”の標準化・デジタル化
証明書・検査成績書の“出し入れ”が煩雑化しがちな調達現場では、「誰が・いつ・どの工程で・どの証明書を取得したか」を即座にわかる情報共有基盤が不可欠です。
今でもエクセル、紙資料、Eメール依存のアナログ管理を続けている会社が多く、トラブル時に「誰も本当のデータを把握できない」ケースが後を絶ちません。
最近は、中小企業向けでもクラウドベースの証明書管理ツールやPLM(製品ライフサイクル管理)システムの導入が進んでいます。
個別案件に応じた「カスタムチェックリスト」「更新アラート」を組み込み、生産現場・購買担当者・品質担当がリアルタイムで情報共有できる仕組み化を進めましょう。
バイヤーが望む「規制対応力」とは?
“価格交渉+規制対応力”で選ばれる時代
すでに大手バイヤーやグローバルブランドでは、「価格や納期」と同等以上に「規制対応力」がサプライヤー選定の基準となっています。
営業現場では、単に「証明書が提出できます・検査できます」では不十分です。
・現地法の改正更新への迅速な対応ができるか
・なぜその試験方法・証明書なのか、根拠説明ができるか
・不備があった時にどこまでリカバリーが可能か
――これらを現場の経験を示しながら具体的に提案できることが、最終選定で大きな差を生みます。
サプライヤー側、“事前準備”でバイヤーの信頼を勝ち取る
サプライヤーの立場としては、調達側・バイヤーが「どこに安心感を求めているか」を知った上でアプローチを変えることが重要です。
例えば、
・自社製品の全素材の成分表・各規制ごとの対応状況を「先出し」できる
・万一の不合格事例やトラブルの過去事例を率直に開示し、改善策を提示できる
・最新の法規制情報に基づいたアップデートを定期的に発信する
このような姿勢は、バイヤー側の「この会社は管理体制が本物だ/誠実にコミュニケーションできる」といった安心感につながり、選定・契約にプラスとなります。
昭和のアナログ調達から“現場発”DXへ
「横並び意識」から抜け出すべき時代
かつての日本の製造業では、法規制や認証対応も「みんなで同じやり方」「お役所仕事」的な姿勢が強くありました。
しかし海外市場に入ると、「規制は日々改正され、細かなニュアンスが国やブランドで異なる」「独自の運用体制やリカバリー策」が求められます。
自社だけでなくサプライチェーン全体の透明性を高め、独自の価値・現場力をDX(デジタル変革)で高め続けることこそが、「昭和からの進化」です。
DX導入の実践例
例えば、容器の全成分データをブロックチェーン上で管理することで、改ざんや抜け漏れを防止したり、サプライヤーポータルを活用して各社が進捗・品質状況を同時に把握する等、現場のデジタル連携にチャレンジする企業が増えています。
また、AIを活用した規制文書の自動翻訳や、世界各国の最新法規制検索ツールなども、実務負担の軽減とスピード向上に役立っています。
まとめ:食品・化粧品容器OEMで業界の地平線を拓くには
グローバル市場を見据えた食品・化粧品容器のOEMビジネスにおいては、FDA・LFGB・REACHの対応力が〈選ばれるサプライヤー〉になる最大のポイントです。
そのためには、現場発の巻き込み型プロジェクト体制、サプライヤーとの協働的パートナーシップ、証明書管理のDX化が不可欠です。
昭和的なアナログ発想や「書類さえ出せばいい」的な調達手法では新たな地平線は切り拓けません。
ラテラルシンキングを最大限活用し、「安全・安心」を世界に届ける価値こそが、日本の製造業がグローバルで生き残る原動力になるのです。
まずは、現場とバイヤーが一体となり、次世代のものづくりを共創する意識改革から始めてみませんか?
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