投稿日:2025年9月16日

日本製品輸入の物流コストを削減する共同配送スキーム活用法

はじめに:今こそ見直すべき、日本製品輸入の物流コスト

製造業を取り巻く環境は、かつてないスピードで変化しています。
海外への販路拡大が求められ、日本で生産した高品質な製品を輸出する企業が増える一方、為替変動や輸送コスト高騰が利益圧迫の大きな要因となっています。

特に日本製品を輸入する現地パートナーやバイヤーの視点に立つと、モノ自体の品質や価格以上に物流コストが障壁となるケースが目立っています。
このような状況の中で注目されているのが、複数のサプライヤーが協力して配送効率を大幅に向上させる「共同配送スキーム」です。

本記事では、現場のリアルな課題や、昭和から続くアナログな商習慣に根差した物流管理の現状を踏まえ、物流コスト削減に直結する共同配送スキームの活用法を解説します。
製造業従事者・これからバイヤーを目指す方・サプライヤーとしてバイヤーの本音を知りたい方に向けて、実践的なノウハウをお届けします。

なぜ日本製品輸入の物流コストが高止まりするのか

1. 輸送の細分化と小口混載の現実

多くの日本企業は受発注の変動に翻弄されがちで、かつサプライヤーごと・ラインごとの個別出荷が横行しています。
結果として、「1本当たり」「1C/T(ケース)」といった小ロット対応が主流となり、まとまったロットでの輸送効率化が進みません。
最終的に輸入元側でのバラ積みや仕分け作業が増加し、手間もコストも膨らむ結果となっています。

2. 日本流の“過剰品質”と物流仕様のすれ違い

日本製の輸出梱包は、モノへの傷・汚損に対して過剰ともいえる配慮がなされがちです。
外装・内装の重梱包、パレット単位のラッピングや積載方法の厳格な指定など、現地バイヤ―の要求よりも高品質な仕様になりやすい傾向があります。
しかし、その高品質が裏目に出て梱包資材費や積載効率の悪化、貨物便あたりの積込可能量減少につながっています。

3. 昭和的な紙ベースの生産・出荷管理

日本の中小製造業を中心に、出荷指示や納期管理をFAX・電話で行う企業が今なお多く残っています。
デジタルツールによる見える化が進まないまま、取引先個別の細かな要望に丸ごと対応してきた歴史が、結果的に現場主導の非効率なスケジュール・物流を生んでいます。

共同配送スキームの概要と、その現場的な利点

共同配送とは何か?

共同配送とは、輸送経路・便・コンテナを複数のサプライヤーまたは荷主で「シェア」し、効率よく貨物を運ぶ物流スキームのことです。
参加企業は自社製品だけでなく他社の商品と混載し、一括輸送することにより、積載率向上と輸送コストの按分、リードタイム短縮が図れます。

共同配送スキームの主な利点

– 輸送単価の引き下げ
コンテナ・トラックあたりの積載率がアップし、輸送台数の削減や単価のスケールメリットが得られます。
– 納品リードタイム短縮
複数出荷先分を一度に集約するため、個別出荷時より全体的な手配期間が短縮されます。
– 在庫圧縮とバイヤーへの価値提案強化
現地バイヤー側は納品頻度・リーチタイムの短縮、保管在庫圧縮の恩恵を享受しやすくなります。
– サステナビリティ対応
CO2排出量・梱包資材消費量の削減が実現でき、ESG要請にも有効です。

昭和流・アナログ商習慣がもたらす共同配送の壁と突破口

“個社対応”の信仰とリスク回避志向

日本の製造業は“得意様ごとのきめ細かな対応”が美徳とされてきました。
輸出時にも、得意先ごとの配送仕様・梱包仕様・伝票方式に個別最適で応えるスタイルが温存されています。
これが共同配送導入時の障壁となり、「梱包・検品・納品のやり方が違うなら混載できない」と思い込みがちです。

取引先同士の情報共有への心理的ハードル

「自社の製造や物流にかかわる情報が外に漏れるのでは?」という懸念も根強くあります。
特に同業他社や同分野サプライヤーと物流をシェアする場合、割り切った壁打ち・協調関係が築けるかどうかが成否を分けます。

“昭和から令和”への意識改革アプローチ

– 現地バイヤーとゴール共有
まず現地バイヤー・卸先企業と「全体最適」のメリットを合意形成し、納品回数・在庫減の恩恵を明示しましょう。
– 標準化できる部分・個社対応すべき部分の切り分け
現場ヒアリングを通じて、「混載化可能部分」と「どうしても個別対応が必要な仕様」を明確にします。
– ITツール導入による受発注・在庫・輸送管理の一元化
アナログ管理が残る場合も、部分的にSaaS型の物流管理ツールなどで情報見える化を図っていきます。

共同配送スキーム成功のために押さえるべき実務ポイント

1. 物流パートナー選定の重要性

共同配送の取り組みにおいて最も肝となるのは、現地に強い3PL(サードパーティ・ロジスティクス)事業者や、共同配送実績が豊富なフォワーダーとの連携です。
既存のサプライチェーン全体に目配りができるパートナー選びが、トラブル時の柔軟対応やコスト最適化につながります。

2. 梱包・荷姿のルール策定

バイヤー視点でのローコスト/合理的な荷姿・ラベル設定を、参加各社共通の基準として策定します。
搬送効率を考慮して「パレットは現地標準サイズ」「二次包装は省略」など、現状の日本流仕様を見直す目線も不可欠です。

3. 運行スケジュールの標準化・固定化

共同配送の恩恵を最大化するには、変則的な便スケジュールではなく、「週イチ定便」「月2回の定期便」など、出荷リズムの標準化が大切です。
これにより、生産計画や納期コミュニケーションも安定します。

4. 積載率・在庫回転のモニタリングとPDCA

現場で導入後は、必ず積載率や到着リードタイム、欠品率、在庫日数などのKPIを設定し、定期的にPDCAサイクルを回すことが重要です。
部門横断型プロジェクトチームを組織し、現場と物流部門の定期的な情報共有会を開催しましょう。

共同配送スキーム導入によるバイヤー・サプライヤー双方のマインド変革

バイヤー視点:本当に求めているものは何か

納期順守・安定供給は製品そのものと同等、あるいはそれ以上に重要視されています。
とくにアセアン以東の小売チェーンや組立現場では、過剰在庫や余剰保管スペースを嫌い、「少量・高頻度・定時納入」が高付加価値サービスです。

共同配送スキームを導入すれば「いつも欲しい量だけ、決まったタイミングで届く」という信頼向上、取引拡大のベースになります。
サプライヤーはサービスの質向上による差別化、バイヤーはTCO(総保有コスト)の削減効果を享受できるのです。

サプライヤー視点:自社発想から“川下連携”への進化

– 物流現場・バイヤー現場の「あるべき姿」に寄り添う
自社都合の納品リズム・梱包仕様をバイヤーに「押し付ける」のではなく、実際の現地作業や流通工程を現場視察し、何が最適かを一緒に考えましょう。
– 共同配送プラットフォームの活用
最近は日系物流会社を中心に、参加可否をオープンにした「共同配送マッチング」プラットフォームも普及してきました。
大手サプライヤーでなくとも、こうした外部サービスを利用すればハードルは低くなります。

まとめ:日本製品輸入の未来を切り拓くラテラルシンキングのすすめ

日本製造業は、品質や技術に圧倒的な強みを持つ一方、昭和から続く独自商習慣や紙ベースの業務フローがボトルネックとなり、「自分だけ良ければOK」という内向きな物流運営に陥りがちです。
共同配送スキームの導入は、バイヤーとサプライヤー双方に利益をもたらし、現場目線での真のコスト削減・価値創造を実現します。

ラテラルシンキング――すなわち、「今まで当たり前だったやり方」を横断的・多角的な目線で見つめ直し、しなやかに変える発想が、次世代ものづくり現場には不可欠です。

日本のものづくりが世界で持続的なプレゼンスを誇るためにも、物流コストから現場の血の通ったコミュニケーション、バイヤーとのパートナーシップ構築まで、川上から川下まで共創する姿勢を持ち続けましょう。

工場現場にも、デジタル世代にも響く「本当の課題解決力」を磨き、変化を楽しむ仲間が一人でも増えることを願っています。

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