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工程FMEAをコスト視点で読み替え改善テーマを抽出するやり方

目次
はじめに:FMEAとコスト削減の関係性
製造業の現場ではさまざまな改善活動が日々行われていますが、その多くが「品質管理」「生産効率」「原価低減」といった課題解決に直結しています。
その中でもFMEA(故障モード影響解析)は、不良予防のための代表的な手法として知られています。
しかし、現場で本当に困っているのは、「FMEAで洗い出したリスク情報を、どうやって現実的なコストダウンや改善テーマに結び付けるのか?」という点です。
そもそもFMEAは品質のための道具という印象が強く、コスト減と直接結びつけて語られることは多くありません。
しかし実は、工程FMEAを“コストの目線”で読むことで、従来の発想から一歩進んだ改善テーマを抽出することが可能です。
この記事では、昭和的なアナログ体質の強い現場でもすぐに始められる、実践的な「コスト視点での工程FMEA活用術」を解説します。
特にこれからバイヤーや生産技術職に就こうとしている若手の方、またサプライヤーとしてバイヤーの思考を理解したい方にも役立つ内容です。
FMEAの基本をあらためて整理する:バイヤー・サプライヤー視点での活用イメージ
FMEAとは?工程FMEAの役割
FMEAはFailure Mode and Effects Analysisの略で、「どんな不具合が起こるか」「それによる影響は何か」「どうすれば防げるか」を系統的に分析する品質手法です。
とくに工程FMEA(Process FMEA)は、製品の設計が終わって、いざ生産段階に進んだ時の“工程”における潜在的な不具合と、その影響、予防や是正の管理策について体系的に整理するものです。
調達や購買の現場では、FMEAの各リスクと管理策を見ながら、どこがコストや納期リスクにつながるかを吟味しています。
一方、サプライヤー(供給側)の現場では、工程FMEAを単なる提出物としてしか扱わないケースが多いですが、実はここにこそ改善と利益向上のチャンスが眠っています。
なぜコスト視点でFMEAを読む必要があるのか
現在、多くの工程FMEAは「顧客提出が目的」の書類作成に終始してしまっています。
しかし経営が本当に求めているのは、「不良ゼロ」や「工程安定化」だけでなく、最終的に“利益”が出せる工程かどうかに集約されます。
・どこで余分な手間やコストがかかっているのか?
・なぜ検査を追加せざるを得なかったのか?
・再発防止(深掘り)した結果、もっと安く安全に作れる工程をどう設計すればいいのか?
こういった本質的テーマを見える化するのが、「コスト視点でのFMEA読み替え」のゴールです。
コスト視点での工程FMEA読み替えメソッド【実践ステップ】
1. FMEAのリスク項目を「直接コスト」「間接コスト」に分類する
まず、工程FMEAがリストアップしているリスク項目や不具合、対策内容を、生産コストに直結するか否かで再整理します。
直接コスト:
・追加工、仕掛直し
・ダブルチェックや追加検査(工数増)
・歩留まり悪化、廃棄材料の増加
間接コスト:
・作業者の習熟・教育コスト
・工場内物流や段取り替えによる隠れた時間損失
・顧客クレーム対応の再発防止策としての異常対応業務
設計段階で「品質上やむを得ない」と判断した検査や手離れの悪さも、現場的にはすべてコストに直結しています。
FMEAの各リスク/管理策の項目ごとに、「実際の現場で何にどのくらいのコスト負担が生じているか」をメモ書きしていきます。
2. 「特別採算が悪い工程」「顧客クレームの履歴あり」な箇所にフォーカス
全体のFMEAリストをざっと眺めた時、「不良率が高い工程」「特別に検査が増やされている工程」など、経営数字にも影響しているはずの箇所が見えてきます。
ここが、昭和から続く“職人の目利き・現場肌感覚”を最大限活かすチャンスです。
FMEAの机上分析と合わせて、「実際にどこで余計な手間・時間・材料を食っているか」「従業員からよく改善提案が出ている工程」など現場の“ナマの声”を拾いましょう。
そこで、QC(品質管理)やTPM(生産保全)の活動記録、品質管理部門の不良・ロスコスト報告書、過去数年分のクレーム再発防止レポートなどを照合してみてください。
3. 「なぜ現場が苦しんでいるのか?」を5回問う
トヨタ生産方式で有名な「なぜなぜ5回」の手法と同じように、FMEAが書類上で分類したリスクや対策に対して「なぜこれがコスト高につながるのか?」を深掘りします。
【例】
・なぜこの検査工程が必要なのか?→ ここだけ設備精度が出ていない
・なぜそんなに歩留まりが悪いのか?→ 原材料のばらつきが多すぎる
・なぜ品質管理が多重化しているのか?→ “設備が古く更新できない”など投資が進まないため
このように、「現場の苦しみ」を軸にFMEA項目を再整理することで、「本当は根本改善すれば不要な工程」「ベテランの属人的ノウハウを新技術へ置き換える余地」などが浮かび上がってきます。
これらこそ、次プロジェクトの王道改善テーマとなります。
4. 「もし自分が原価責任者だったら?」と想定して工程FMEAを読み直す
実践的な読み替えのコツは、「もし自分が現場の原価責任者だったら…」という立ち位置でFMEAワークシートを一つ一つ眺め直すことです。
・誰が・何のために・どれだけの頻度で検査/仕掛直しをしているのか?
・材料ロスや作業遅延が“見える数字”でどのくらい発生するのか?
・無理やり工程を動かしている“都合の悪い現場のあらわ”がどこに潜んでいるか?
コスト・納期・品質の不均衡をバランスさせる立場ですべてのリスク項目に目を通すと、「一見、安く作れそうに見える工程が、実は膨大な隠れコストを孕んでいる」など驚きの気づきが現れるはずです。
現場目線のコストダウンに直結する改善テーマの発見方法
「実態とFMEAのズレ」こそ最大のコスト圧縮ネタ
多くのベテラン現場作業者は、「うちのFMEAは建前ばかり」「現場の実態には合っていない」と感じていることでしょう。
まさにそこに、真のコストダウンテーマが埋まっています。
【チェックポイント】
・書類には「検査工程」とだけ書かれているが、実際は手順が複雑で工数が10倍かかっている
・「異常時のみ処置」となっているが、実際は日常的に発生して漫然と手当している
・管理策に「ベテラン作業員のダブルチェック」とあるが、若手への継承もされず事故リスクが増大
このような“FMEAの穴”を基点にして、「どうすれば現場で本当にコストが下がるか」を追究しましょう。
「アナログ×デジタル」両面からのコスト革新アプローチ
昭和的なアナログ産業にこそ、最近のIoTや自動化技術で劇的なコスト変動が期待できます。
例えば下記のような視点で、現場ヒアリングとFMEA分析を組み合わせてみてください。
・工程間の“有休設備時間”をIoTで見える化して稼働率向上⇒ 設備コストの圧縮
・作業手順ごとの動画記録をAI解析し、非効率な動作やムダ取りを推進⇒ 人時コストの見直し
・歩留まり悪化が材料起因なら、発注先やロット管理の見直し・取引条件の再交渉も有効
こうしたアプローチは、アナログ現場でこそ最初はハードルが高く感じられますが、「人時原価×歩留まり×品質保証」の三位一体でテーマ設定をすれば、投資対効果が社内稟議にも通りやすくなります。
FMEAで見えた“要注意ゾーン”をバイヤー/サプライヤーで共有する意義
FMEAから抽出したコスト高リスク・再発の危険信号は、バイヤーとサプライヤーが“信頼ベース”で情報共有することが効果的です。
特に、
・発注側は「この工程の歩留まり悪化=仕入コスト上昇=最終製品の原価上昇」につながる
・受注側も「ここが安定すれば手戻りや顧客クレームが激減し、自社利益も上がる」
といった共通メリットを認識できます。
そのうえで、両者が「一時的な安値」「単なるリスク回避」のためだけでなく、「長期的な利益確保」「現場従業員の労働負荷低減」を視野にFMEAの再整理や改善会議を行えば、誰もが納得できるコストダウン活動へ進化します。
さいごに:FMEAの“新しい読み方”で現場発想のコスト削減を実現しよう
工程FMEAは、“顧客向け提出書類”で終わってしまいがちなものです。
しかし、「コストの目線」を持ってFMEAを読み換え、現場の実態と突き合わせることで、昭和から続くアナログ産業においても、斬新かつ実効性の高い改善テーマが次々と発見できます。
今後は、「書類を作るだけ」のFMEAから、「利益につながる働き方・考え方を生み出す」ツールへと進化させていくべきです。
バイヤー・調達担当、現場改善を担う方、サプライヤーのすべての皆さまに、コスト視点でのFMEA活用で“新たな地平線”を切り拓くヒントをぜひ実践していただきたいと考えています。
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